第10話 クエスト受注

 エミルとリリは話し合った結果、そのままアオバを受け入れるという結論になったようだ。

 アオバとしては本当の事を話しても良いのだが別の星で死んで転生してきたなんて話したところで信じるとは思えない。

 むしろ二人は『やはり本当の事を話してくれないのか』と悲しむような気さえする。

 なので今は事情があって話せないという事にした。


 「話せる時が来たら話しますね」

 「分かった、僕達もこれ以上は追求しないよ」


 本当に二人は良い人だ、いつかこの恩を返せるようになりたい。


 「明日はアオバの初クエストだ、早く寝て明日に備えようか」

 「分かりました」

 「今日も僕の部屋で寝るかい?」

 「!?アオバちゃん!今日はこっちで寝よう!大丈夫!昨日みたいなことは絶対しないから!」


 少し迷ったが昨日の事を水に流すためにもリリの部屋で寝ることにする、リリがアオバを傷つけたと思い悩んでしまったら申し訳ない。


 「そうか、また何かされたらいつでも来ていいからね」


 そう言うとエミルは自分の部屋に戻った。

 二人きりになるとリリはアオバを抱きしめた。


 「アオバちゃんありがとう!許してくれるんだね!一緒にシャワー浴びる?」

 「い、いえ、それはちょっと…」

 「ふふ、半分冗談よ!」


 半分は本気だったようだ。

 順番にシャワーを浴びて二人でベッドに入るとリリはアオバを再び抱きしめた。

 昨日のように体を撫で回したりはしないが、抱きまくらのように足を絡めている状態だ。

 お世話になっているのである程度は許容してあげようと思う。


 「アオバちゃんが嫌なら離すよ」

 「こ、このくらいなら大丈夫です…」


 体に力が入る、抱きしめられているせいだろうか体が熱い。

 リリはもうすでに目を閉じている、このまま寝るつもりのようだ。

 アオバも直ぐには寝付けなかったが日中街中を歩き回って疲れており、いつの間にか眠りについていた。

 ちなみに二人でこの体制で寝るのはスキンシップのレベルを徐々に上げるためのリリの作戦であることをアオバは知らない。


 翌朝、ノックの音で目が覚めるとリリと目が合う、寝顔を見られていたようだ、恥ずかしい。

 挨拶を交わした後リリはベッドから起き上がりドアを開けると、エミルが入ってきた。


 「おはよう、ちゃんと眠れたようだねそれじゃあ準備してギルドに向かおうか」


 昨日買ってもらったばかりの装備を身に着け宿を出る、空はまだ薄暗く朝の空気が漂っていた。

 ハンターギルドに入ると早朝だというのに結構人がおり、いくつか紙の貼られた掲示板の近くに集まっていた。


 「それじゃあちょっと待っててね」


 エミルはそう言うと掲示板の方へ歩いていき1枚の紙を剥がしてカウンターに持っていった。

 カウンターのお姉さんと少しやり取りをしてから先程剥がした紙を持ってこちらに戻ってくる。


 「それじゃあ行こうか」


 ギルドを出て街の外に向かう途中、エミルにクエストの詳細を確認する。


 「討伐対象は『ホーサノ』5体で報酬は1200リコ、追加で討伐するごとに200リコの追加報酬がもらえるって感じかな」

 「その『ホーサノ』ってどんな魔物なんですか?」

 「一言でいうなら騒音害獣さ、特にこの時期は奴らの繁殖期だからね、夜中に群れで騒がれると街の外側に住んでる人達は眠れなくなる程らしい」

 「そんなに街の近くで騒いでるんですか?」

 「正確には街の近くの森の中だね、数匹倒したら群れごと離れた場所に移動するからこの時期はこういう依頼がよく出されるんだ」

 「ホーサノは強い魔物なんですか?」

 「単体だと弱い方の魔物だけど奴らは群れで行動するからね、それに視界の悪い森の中での戦闘になるから油断できないんだ」


 初めてのクエストとなるホーサノ討伐はなかなか手強そうだがアオバとしては戦闘に参加しないので気楽なものだ。

 それどころか未知の生物と二人の魔法を使った戦闘にワクワクしていた。

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