第5話 登録と打ち合わせ
ギルドへの報告を終えた二人が話しかけてきた。
「どう?仕事は見つかりそう?」
「はい、水魔法の適性があったのでサポーターをやって欲しいって言われてます」
そう言うと二人は嬉しそうな顔になった。
「本当!サポーターやろ!一緒に依頼受けよう!」
「ま、待ってください、まだ魔法を使った事が無いのでちゃんとできるか分からないですよ」
リリの勢いに押されながらまだ決定ではない事を伝える。
水魔法は需要があるみたいだしもっと楽な仕事があるならそちらに行きたい、だから簡単にやるとは言えない。
「一度僕達のサポーターをやってみてから続けるか決めたら良いんじゃないか?」
「それいいね!採用!ね、そうしよ!」
「わ、分かりました、とりあえずそれで行きましょう」
そんなやり取りを口を半分開けながら聞いていた職員のお姉さんが質問してきた。
「えっと、お二人とお知り合いなんですか?」
「はい、今日知り合ったばかりですが」
「お二人は『2級ハンター』ですよ!そんな方から勧誘される未経験サポーターって、普通じゃあり得ません!」
「『2級ハンター』ってなんですか?」
「えぇ!?知らなかったんですか!?」
職員のお姉さんの話によると、ハンターには1級~5級のランクがあり、ランクを上げるにはそれなりの実績とギルドが指定した魔物の討伐が必要らしい。
ハンターの中でも2級以上はほんの一握りしかおらず、この街の2級ハンターはエミル達ともう一組だけなんだとか。
「はぇ~、じゃあ二人は強いんですね」
「そうだよ〜、見直した?」
「エミルさん達は二人だけのパーティーで2級ハンターまであがった逸材ですよ!」
「まぁまぁそのぐらいで、今日のところは宿に戻ろうか」
「ちょっと待って下さい、サポーターをするならハンター登録をする必要があります、この書類を記入してください」
お姉さんから渡された書類を記入する、書く項目は名前と年齢、魔法適性のシンプルなもので、下の方に戦闘時の立ち位置という項目がある。
前衛、後衛、サポーターと3つの項目がありサポーターに○をする。
「最後にここに血を一滴垂らしてください」
お姉さんに差し出された小さな針でビビりながら親指を刺して血を一滴垂らす。
痛い、サポーターなんて受けなければよかった。
お姉さんが差し出してきた絆創膏のようなものを傷口に貼りながら少し待っていると一枚のカードを手渡された。
「これで登録は完了です、再発行にはお金がかかりますので失くさないように気をつけてくださいね」
こうして登録を終えギルドを出ると空はオレンジに染まりだしていた。
「宿に着いたら少し打ち合わせしようか」
「何の打合せですか?」
「一緒に行くクエストについてかな、アオバは初めてだから色々教えながらね」
しばらく歩くと二人が拠点にしている宿『春の落葉樹』が見えてきた。
外観からしてなかなかランクの高そうな宿だった。
一旦三人でエミルの借りている部屋に集まって話をする。
アオバは相変わらずリリの股の間に座らされている。
「さて、先にギルドカードを見ても良いかな?」
ギルドカードを手渡すとエミルは驚いた表情をする。
「18歳なの!?」
「えぇ!?本当!?」
「何でそんなに驚いてるんですか?」
エミルは少しバツの悪そうな顔をする。
「いや、もっと小さい子だと思ってたから…」
「そっか、18歳かぁ♪」
リリは何故か嬉しそうに笑っている。
「お二人は何歳なんですか?」
「二人とも20歳だよ」
20歳で高いランクのハンターってことは二人は恐らく天才なんだろう。
そう考えているとエミルからカードを返された。
「適性は水だけか、珍しいね、適性が一つしかない人はその分消費魔力が少なく済むって聞くからサポーターに向いてるかもね」
「そうなんですか?」
「僕も昔会った人から聞いただけだから詳しくはないけどね」
適性が一つしかないのにもメリットはあるようだ。
まぁこの体にそれが当てはまるかどうかは分からないけど。
「それでクエストなんだけど『ホーサノ』討伐にしようと思っている、理由は二つ、近場であることと危険が少ないからだ」
「『ホーサノ』…」
「アオバは荷物の運搬と討伐して解体した素材の洗浄、後方の警戒が主な仕事だ、今回は近場だから良いけど遠出するときは拠点の設営なんかもやってもらうことになる」
「戦闘には参加しなくても良いんですね?」
「あぁ、サポーターってのは道中他のメンバーが無駄な体力や魔力を使わないようにする仕事だからね、戦闘は他のメンバーの仕事さ」
戦闘に参加しないのは良い、二人も強いみたいだから危険は無さそうだ。
「クエストを受けるのは明後日だ、明日は休みにするからアオバの装備を整えてから街の観光でもしようか」
「すみません何から何まで、お金は必ず返します」
「気にしなくていいよ!今日は明日に備えてもう寝よう!」
先程からずっとニコニコしているリリをエミルは訝しげな目で見ていた。
「アオバ、何か嫌なことされたらこの部屋に逃げてきて良いからね」
「?はい、ありがとうございます?」
こうしてエミルの部屋を出て隣のリリの部屋へと入った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます