第2話 第一異星人
濃い緑と土の匂い、頬を撫でる風、草原を風が駆け抜け葉っぱの擦れる音。
目を開け、上半身だけを起こしてあたりを見渡す。
近くにある土が平らに固められた道とその奥の森以外は一面草原が広がっていた。
次に体を確認する、服装は見慣れない感じだが民族衣装のような不思議な模様が描かれているワンピースのような上下一体型の服だ。
鏡がないので顔は分からないが体の見た目は元の体のまんまだ。
だが、胸の中心、肺の真ん中辺りに殆ど目立たないが小さな膨らみがあり、触ってみると硬かった。
恐らくこの星の環境に必要な臓器が中にあり、それを骨が覆って守っているのだろう。
知らんけど。
「ふぁ~あ」
あくびを一つしたあと再び横になりこれからどうするのか少し考える。
街道らしき道をどちらの方向に進むのか、無事に街に着いたとしてこの星のお金なんて持っていない、そもそも貨幣の概念があるのかすら分からない、言葉も恐らく通じないだろう、魔物や野生の動物に襲われたらどう対処するのか、食料も問題だ。
「問題が山積みだ…」
街を目指すのであれば明るい内に行動するべきだということは頭では分かっている。
だがこのポカポカした陽気と気持ちの良い風が眠気を誘う。
動きたくない、少しだけ目を閉じる、後5分経ったら、そうやってダラダラしてるうちに意識は落ちていった。
―――――
街道をスプレンの街に向けてノシム車に乗ってガタガタと進む二人。
「やっぱりこの距離とはいえノシム車借りるの効率悪いよね」
「仕方ないでしょサポーター見つからなかったんだから、この量の素材担いで帰る方がキツくない?」
「そうだけどさ〜、報酬の4割ノシム車代で消えたら文句も言いたくなるよ」
「まぁね~、ん?」
街道の脇の草原で人が倒れているのが見えた。
「どうしたの?」
「あそこ、人が倒れてないか?」
「ほんとだ、とりあえず行ってみよ」
ノシムに鞭を入れ加速させる。
倒れている人の近くで停めると二人はそちらに向かった。
「女の子だね、14歳ぐらいか、息はしてるから眠っているのか?黒い髪なんてこの辺では見ないから遠くから来たのかな?服はなんか古臭いけど」
「かわいい!何この娘!迷子かな?」
「とりあえず起こして話を聞いてみよう」
―――――
優しく肩を揺すられ目を覚ます。
ゆっくりと目を開けると目の前にイケメンがいた。
灰色の髪に中性的な顔立ち、目つきは若干鋭く見えるが全体的な雰囲気は優しそうだ。
『君、大丈夫かい?こんなところで寝ていたら危ないよ』
聞き慣れない言語だ。
だが意味がわかる、どうやら心配してくれているらしい。
管理者が体を作ったときにこちらの言語を理解できるようにしてくれていたようだ。
なかなか気が利く。
「あ~、大丈夫です、ありがとうございます」
「君はこの辺の人じゃないよね?どこから来たの?」
どう答えるか考える。
別の星から来たなんて信じてもらえないだろう。
かといって下手に嘘をついてもバレたときに面倒くさいことになる。
それなら別の星から来たという点だけ伏せて正直に日本から来たとでも言おうか。
そんなことを考えていると、いきなり後ろから抱きつかれた。
「へぇぁ!?」
「まずはお名前聞きたいなー?なんていうの?」
「えっと、青波です」
「アオバちゃん!かわいい名前!私はリリ・ミンス!よろしく!」
反射的に名乗ってしまうとリリと名乗る女性は一段とテンションがあがった。
振り返って顔を確認すると満面の笑みを浮かべた美女がいた。
パステルカラーの薄く緑がかった長い髪を一つに束ねたポニーテール、目尻の下がった大きなクリッとした目、抱きつかれた時から薄々感じてはいたが非常にスタイルが良い。
そんな美女に何故こんなに気に入られてるのだろうか?
「リリがごめんね、僕はエミル・ポルネクよろしく、良かったら一緒に街に行かないか?道中話を聞かせてくれると嬉しいんだが」
「はい、こちらこそよろしくおねがいします」
まさに渡りに船、拒む理由は一つもない。
二人に連れられて少し離れた位置に停めてある馬車のような乗り物の所に移動する。
近くで見てみると前の方に繋がれた動物は馬ではなかった。
『ノシム』というらしい、全体的な形状は牛に似てなくもないが頭に丸みを帯びた短い角が一本だけ生えており、体毛が長く、足も太く、全体のサイズも牛より一回り大きい。
目は半分以上体毛で隠れているのだが大丈夫なのだろうか?
ノシムを横目にそんな事を考えながら荷台に乗り込んだ。
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