第28話
やってきたのは二層の荒れ地。俺はジャージで陽詩は白のワンピース。
二人でドローンの前で深呼吸して、撮影を開始した。
ちなみに俺のドローンは故障中なので、今日の撮影は陽詩のドローンだ。
普段は球状の手のひらサイズで、撮影時にはハート型の羽が展開する最新型らしい。色が赤ってところがいかにも陽詩らしいな。
「どーも皆さん、おはこんモルゲーン! ミキヤンでーす! 今日はビッグゲストをお迎えしております! それはなんとぉ!」
「かっかっかっ! よくきたのう皆の衆! 我が名はマオマオ! 今日はミキヤンチャンネルを征服しにきたぞ!」
配信開始からまだ十分も経過していないのに再生数が三万人を突破した。
事前にSNSで告知したとはいえ、この伸びはすごいな。
”おおおお、私服マオマオたんだ!”
”ワンピースにレイピア装備って斬新”
”ジャージと白ワンピって行楽気分かよw”
”むしろ近所の散歩コース並みの緩さ”
”正式コラボキター!”
”マオマオたん! マオマオたん! 可愛いねぇ! お嫁さんになってほしいねぇ!”
”んあああああ! マオマオたんマオマオたんマオマオたん! 小さくて金髪で赤いリボンが素敵なマオマオたん! どんな匂いがするのかなぁ! クンカクンカクンカクンカスハースーハースーハー! ん-、デリシャス!”
”マオマオたんを見ていると、おじさん犯罪者になっちゃいそうだよ!”
”ここ二層? なにするの?”
わかってはいたが視聴者がすげぇ濃い。
「えー、今日はマオマオが探したいものがあるといって来ました。な、マオマオ?」
狂気に満ちたコメントが続々と投下される中、俺は陽詩に話題を振った。
すると彼女はなぜか照れくさそうに頬を掻いていた。
「なんかお主にマオマオと呼ばれるとこそばゆいのう……」
あ、馬鹿お前そんなこというと。
”なにいいいい!? まさか二人は普段から名前で呼び合う仲なのか!?”
”ちょっとまて事案だぞ!”
”これは見過ごしていいのか!?”
”斬首! 斬首!”
ほらコメントが荒れ始めた。
あとたぶん、雨水さんが見に来てるなこれ。
「ああ、いや、えっと、俺たちは……」
「狼狽えるでない皆の衆! わらわたちは前世の因縁を乗り越えたいわゆるソウルメイトじゃぞ! そりゃ名前で呼ぶくらいするわ!」
はっきりと堂々と、まるで悪びれもせずに断言する陽詩。
そんなこといったら炎上しちゃうだろ! と思ったが。
”普段から役作りに余念がないってことか”
”あ、そういうことなの?”
”たしかにそれなら納得だ”
”マオマオたんの世界観についていけるのはいまのところジャージ戦士だけだからな、貴重な人材であることには違いない”
あ、なんか大丈夫っぽそう。
「それだけではない! 過去の動画でもいっとるが、わらわはミキヤンの強さを必要としておる! そのためにもいまはミキヤンをわらわに惚れさせて我がギルドに引き込もうと画策しておるのじゃ! 今日の動画も配信にかこつけてこやつを懐柔するための攻めの一手というわけじゃな!」
そ、そこまでいっちゃっていいのか。ようは、カメラの前で口説きますっていってるようなものだぞ。
”さすがマオマオたん! 抜け目ない!”
”ジャージ戦士の強さは俺たちも良く知ってるからマオマオたんが欲しがるのもわかる!”
”ジャージ戦士が同士になるのか!”
”俺なら二秒で落ちるね”
”ううむ、俺としてはいささか微妙であるな……”
なんなんだろうこれ。陽詩がいうことだいたい好意的に受け取るじゃん、陽詩の視聴者。これが有名実況者の実力ってわけか。
「さ、ゆくぞ幹也。じゃなくてミキヤン」
「おう……」
さっそく配信者としての格の違いをみせつけられたようで気が重い。
俺は陽詩の実況に食らいつけるだろうか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます