第22話

 謎の美少年を背負って帰路につく。


 魔力の放出がとまったらエクスカリバーにも触れるようになった。あれはいったいなんだったんだろう。まるでエクスカリバーが俺を拒絶したように感じたけど。


 いまは問題なく触れるので、この子のお尻の下に敷いておんぶの補助に使っている。


「しっかし軽いなこの子」


 筋肉がないっていうより肉がないって感じだ。ちゃんと食べてるのだろうか。


 これもなにかの縁だし、こんど陽詩の高カロリー料理でもおすそ分けしよう。


「たでーまー。……ってなんだこれ」


 玄関を開けると、部屋中に料理の乗った皿が置かれていた。


 右側が妙に脂っこいものが多くハンバーグやトンカツ、唐揚げなどなどとにかくがっつりしたものばかり。


 逆に左側はヘルシーで家庭的なものが多く、肉じゃがとかベーコンのアスパラ巻きとか生春巻きなんかが置いてある。


「よーし出来たー! 激うま激辛キムチ鍋おひとり様じゃー!」

「またそんな高カロリーなものを作って!」

「やかましーい! 次は貴様じゃはよ作れ!」

「いわれなくても……ってあら?」

「む? 帰ったか幹也」


 陽詩も雫も俺に気づいた。


「帰ったかじゃねーよ。どういう状況だよこれ」

「このメスブタとどっちが幹也に褒められる料理を作れるか勝負しとったんじゃ!」

「だからって作りすぎだろ……」


 ざっとみても十人前くらいはあるぞ。


「ごめんなさい……わたしとしたことがつい熱くなってしまって……」


 我に返ったのか、雫はしょぼんと肩を落とした。


「感謝して食べるのじゃぞ! そんで食べたらわらわを褒めるのじゃ!」


 腕を組んで無駄に威張り散らす陽詩。お前は少しつつましさってものを覚えろ。


「あー、まぁ、作ってくれたことには感謝するけど……」


 いくらなんでも量が多すぎる。


 俺はわりと食べる方だがこの量はさすがに食べきれないぞ。


「ん……いい匂い……」


 背負っていた少年が目を覚ました。


「お。起きたか」

「ここは、どこですか?」

「俺の家だ。あんた、一層で倒れてたんだよ」


 謎の美少年を背中から下ろすと、彼は額を抑えてふらついた。


「おっと」


 すぐさま肩を支えてやる。


「大丈夫か?」

「あ、ありがとうございます」


 顔が赤いな。


 まだ全快というわけではないみたいだ。


「なんじゃー、女かと思ったら男ではないか」

「なに? もしかして安心したの? いがいと小心者なのね」

「ふ、ふん! だれもわらわの魅力に勝てぬことくらい承知しておるが、それでも目障りな者が少ない方がいいだけじゃ!」

「ふーん。でも幹也くんはわたしのギルドに入るのよ?」

「あー! またそうやって喧嘩を売るのじゃな! いいじゃろう買ってやる! 抜くがよい!」


 部屋の中で互いに武器を抜く陽詩と雫。ただでさえ狭い部屋なのにいまはごちゃついてるんだからやめてくれ。


「ごめんな、騒がしくて」

「あ、いえ……。そうだ。たしかボク、新しく買った剣の試し切りをしようと思ったら魔力の制御が効かなくなって……」

「エクスカリバーの使い方にはコツがあるんだ」

「エクス……カリバー? あの、あなたは?」

「その剣の前の所有者さ。もしよかったらいろいろ教えてやるよ」


 俺がそういうと、謎の美少年は目を大きく見開いた。


「アニキ……」

「……は?」


 アニキってなんだよ。


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