第12話唆す赤と堕ちる光
《皇視点》
僕らは勇者パーティ。
だから最初にダンジョンに入り探索をして、既に低級とはいえモンスターを倒していた。
そこにやつが現れた。
「ねぇ、そこのあなた。
勇者を知らないかしら?」
美しい。その言葉は彼女の為に。
そう思うほどの完成された美。
それを彩る鮮やかな赤色のドレス。
僕が目を奪われていると、
「貴様は誰だ! なぜ勇者を探す!」
騎士が彼女ににじり寄る。
しかし、彼女のすぐ傍についた瞬間騎士の男が膝を着いた。
そして剣を女に捧げる。
女はそれを受け取りその剣で騎士の男の首を跳ねる。
「……?!」
一瞬で現実に戻される。
警戒をしていたつもりだった。
しかし騎士が殺されたことで甘かったことを痛感するが、既に遅かった。
「ふふ、貴方が勇者なのね……
ほらいらっしゃい? こっちよ……」
女が僕の目の前まで来ていた。
そして僕の額に掌を当てると悲しそうな顔を浮かべ僕に抱きついた。
「貴方は好きな子を盗られたのね……」
女の声が頭に直接入ってくるかのような感覚に陥る。
「可哀想に。アイツのせいよ。私達と復讐をしない?」
そして……彼女の甘い言葉に……
「しっかりして!皇!」
夏海の言葉で俺は意識を取り戻した。
「そうだ……! お前なんかに操られてたまるか!」
「残念……なら力づくでいかせてもらうわ」
奴はどこからとも無く鞭を取りだし俺達に振るう。
水の大精霊を呼び出した夏海がシールドを張る。
しかし大精霊ごと一瞬で消し飛ばされた。
「くっ……! 私の力がまだ足りない!」
賢者の由美が炎の槍を投げつける。
しかしそれも全てかき消された。
翔馬が斬り掛かる。
だがそれすらも鞭の一振で吹き飛ばされる。
「あははは! 勇者のパーティもこんなものなのかしら?! さっきの威勢はどこに行ったのかしら?!」
女が笑い、僕達は何も出来ず敗北した。
翔馬は首と胴体が泣き別れ。
夏海は頼りの精霊もやられ、絵馬と由美は震えて動けなくなっている。
そして僕は……
「藤咲葵、彼女が欲しいでしょ?
私達に付きなさい。そうしたら全て貴方の望むままよ」
ボクハ……
《主人公視点》
「それにしても、よく間に合ったな、ヒナノ」
「い、いえ! 私は途中で動けなくなってたんですけど……アレクさん達がたまたまいて」
「そうなのか、ありがとう! みんな」
「いや、俺は聖女様が望まれたのでしたまでだ。
感謝は聖女様にしろ」
「そうなのか? ありがとう葵」
「い、いいよ! お礼なんて!
トウマの私の仲じゃん!」
「でもお前がいないと俺は死んでいた。
だからありがとう」
「えへへ……」
どうやらアレクがきていたのは葵が何かしらで俺達を探していたおかげらしい。
「む? 葵殿のあの反応、もしや!」
「まさか聖女殿……あの者を」
「しーっ! 本人は気づいてないみたいですし内緒ですよ!」
「ん? なんか言ったか?」
「な、なんでもないですよ! ね? アレクさん!」
「あ、あぁ! なんにもないぞ!」
「……? そうか」
俺達はあの後ゴブリンの耳を回収し、自分が倒した分だけ貰い、他はアレクに押し付けた。
そして王都に帰ってくると門のところでアレクさんが門の兵士に呼ばれた。
至急聖女を連れて帰還するようにとの事らしい。
「ごめんね、冬馬。
また会いに来るから!」
「おう、また遊ぼうな」
アレクと葵が帰ったあとヒナノと俺でギルドに行こうとしたんだが……
「あのぉ……拙者どうすれば……」
オタクだ
「知らねえよ! 第一お前仲間どうしたんだよ!」
「いやそれが拙者も分からないんでござるよ〜。
梅田殿と一緒に美紀殿を探しに行ったんでござるが……」
「前川を? それで?」
「それでもクソもないでござるよ! そっからまだ会えてないでござるよ……」
「そうか、頑張れよ」
「行きましょうトウマさん」
「待つでござるよ! そもそも拙者助けに来たんだからちょっとくらい優しくしてくれてもいいんじゃないでござるか?!」
「そう言われると……まあ」
「なので拙者はヒナノたんと一緒にいたいでござる!」
「よし、帰ろうヒナノ」
「そうですね」
「嘘でござるよ〜! 置いてかないで欲しいでござる!」
「はぁ、ギルドまでだ。ギルドまでだからな!」
「それでいいでござる!」
「はぁ、なんでこんなやつと……」
「まあまあ、オタクさんは助けに来てくれましたし……」
「そうでござる!拙者頑張ったでござるよ!」
「……ま、そこは感謝してるよ」
「男のデレに需要は無いでござるよ?」
「なんだお前! 二度と感謝するか!」
「まあまあ……」
とりあえず、この世界に来てまだ2日目なはずなんだけど……色々起こりすぎて前の世界より周りと仲良くなれてる気がした。
《ハルカゼェェエエ工!!》
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