2-5|転入試験②
模擬戦は攻防が続いていた。イリスは剣の連撃によりあと少しのところまでミアを追い詰めるが、魔法により距離を取られてしまう。ミアは果敢に攻めかかるが、イリスの絶え間ない剣撃により攻撃を当てることができないでいた。
それを外で見ているオーウェンが口を開いた。
「二人ともなかなかやりますね。ミアはどのくらい剣を学んでいるんですか?」
「そうですね、私のそばで働くようになってからなので、半年くらいでしょうか。」
「二人ともまだ本格的に魔法を使っていませんから、ここからどうなるか
「ええ。そちらのイリスもよくやっています。とても五日間で仕上げたとは思いません。」
「そうでしょう?指導教官が良かったんでしょうね?」
そう言ってオーウェンはくつくつと笑う。デボラ校長はそれをジトっとした目で見る。
二人がそんな話をしているうちに、イリスとミアの模擬戦は佳境に入る。ミアが剣を体の横に突き立て、半身になって魔法を発動する。
「身体強化っ!」
その刹那、ミアが一瞬にしてイリスに肉薄して剣を上段から振り下ろした。イリスは何とか防御の姿勢をとったが、いままでよりも重たくなったミアの攻撃により、後ろに少し吹き飛ばされる。
「お、重いっっ!!」
ミアはイリスにできたスキを見逃さず、もう一度イリスに肉薄し、中段から横
「やぁぁぁああっ!」
「っ!風壁っ!身体強化!」
イリスはミアに先ほどまでやられていたように、自分の周りに数秒の間強風を
ミアは、イリスが作り出した想像以上に強い強風に耐え切れずに、バランスを崩して一瞬宙を舞う。ミアは歯噛みしながらイリスの位置を確認しようと顔をあげると、イリスはそこにはいなかった。イリスがいた場所には、踏み込みでできたとみられるくぼみができており、地面が少しめくれている。
ミアは目線を左右に振ってイリスを確認しようとするが存在が確認できない。
外野で見ているオーウェンとデボラは、上を見ていた。
ミアが異変に気が付いた時、イリスの声は頭上から聞こえてきた。ミアが慌てて上を向いて防御の姿勢をとる。イリスはそれを見てにやりと笑うと、魔法を詠唱する。
「『炎よ、彼の者を閉じ込めよ。』」イリスが左手を前に突き出す。「火焔牢っっ!!」
たちまちミアの周りに円形をした炎の牢が出現した。ミアは、ごうッ、と音を立てて燃え始めた炎を見て、逃げ道を失ったことを一瞬で理解した。頭上からの攻撃を防がなければわたしの負けだ、と。
「私は、負けない!やぁぁあああッッ!!」
イリスの叫び声が剣の振り下ろしとともに大きくなる。ミアは剣身で頭上からの振り下ろし攻撃を死に物狂いで受け止める。しかし、ミアは身体強化をしているとはいえ、魔力量で勝っているイリスの身体強化には及ばない。地面に徐々に亀裂が入り、踏ん張るミアの足が陥没していく。
ミアは頑張った。しかし、剣が折れるほうが早かった。バキッ、という音を立てて、ミアの木剣が中ほどで折れてしまった。そのままの勢いでイリスの剣がミアの顔に迫る。
ミアが目をつぶって、後ろに倒れようとする。その瞬間、オーウェンが間に割って入った。
「そこまで。両者とも、剣を収めなさい。」
デボラ校長から終了の合図がかかる。
イリスの剣は身体強化したオーウェンの剣によって止められ、ミアは地面に尻もちをつくように倒れた。最初の取り決め通り、ミアに当たりそうだった致死性の攻撃はオーウェンの剣によって、寸前で止められていたのである。
「イリス、良い戦いっぷりだったね。よく頑張ったと思うよ。」
オーウェンがイリスの攻撃を受け止めながらねぎらいの言葉をかける。
イリスは、身体強化を解いて地面に着地すると、達成感のある顔で感謝の言葉を述べる。
「ありがとう、オーウェン。あなたの指導が無かったら、こんなに戦えていなかったわ。」
「お礼は入学できてからにしてくれ。まあでも、ありがとうな!」
オーウェンは少し照れくさそうにして応えた。
ミアの手を取って起こしながらデボラ校長がイリスに告げる。
「これから審議に入ります。イリスは校長室の隣の応接室で待っていていただけますか。」
「わかりました。良い結果をお聞きできるのを楽しみにしています。」
イリスは真面目な顔でデボラ校長に返答する。
「ミア、オーウェン。あなたたちはこれから校長室に来て下さい。一緒に審議をします。オーウェンはイリスを応接室に案内したらすぐに校長室に来なさい。」
「かしこまりました。」
「はい、了解しました。」
これで転入試験である模擬戦が終わった。オーウェンは、イリスを校長室の隣にある応接室へ案内した後、校長の言うとおりにすぐに校長室へ向かった。
オーウェンと別れた後のイリスは、どこか落ち着かない様子で部屋の中を行ったり来たりしながら試験結果を待っていた。
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