最終章:宇宙決戦編

第29話 決戦の始まり

 宇宙、ヒナタ達の世界ことヨロズハラにも宇宙はある。


 虚空を切り裂き開いた穴から、ゆっくりと巨大な銀の球体が現れる。


 ブラックロジックの旗艦である小惑星サイズの球体、デジスター。


 「次元ゲート開通、到着したよコピーマザー♪」


 電子基板に似た緑色で、定期的に白い光のラインが走る床に黒い壁の部屋。


 デジスターの中枢であるコアルーム。


 一体のオペレーターアンドロイドが、自分お周囲に多数のデジタルスクリーンを浮かべて操作し作業をしていた。


 白い外殻に黄色い瞳のオペレーターアンドロイドが報告する。


 「了解、周囲の隕石を収集し素材を生成。 侵略兵器の生産から開始する」


 オペレーターの言葉に答えたのは、部屋の中心の白い柱。


 ブラックロジックの首領、デジマザーのコピー体だ。


 コピーマザーの言葉に応じるように、室内に無数の青いデジタルスクリーンが浮かびプログラムが作業を開始する。


 同時にデジスターの外では、白い人型のアンドロイドが操縦する小型円盤の群れが飛び出して周囲の隕石を円盤内に取り込んではデジスターに戻ると言う作業を行う。


 ブラックロジック側は宇宙空間に陣取り、決戦への用意を始めていた。


 一方、狙われる側の青き命の星ヨロズハラ。


 現世に戻って来たヒナタ達が、東の寄合所に集まっていた。


 「ふう、ようやくオウカに帰って来られたぜ♪」

 「夏休みの宿題も片づけませんとね♪」

 「海水浴とか行きたいでござるな、普通の旅がしたいでござる♪」

 「パイセン達はお疲れ様でした、お土産は郵送でいただきました♪」

 「僕も、ありがとうございました♪」


 サクラとチャトラも交えて若手五人で車座になり、羊羹をお茶うけに語り合う。


 「しっかし、ヘルファイアパイセンが都炎上させたとか驚きました♪」

 「いや、その呼び方は待って盛り過ぎてるからな!」


 サクラにより、間違ってはいないが不名誉なあだ名を付けられたヒナタ。


 「いやあ、ヒナタ殿の暴走はヘルファイアでござった」

 「地獄の業火でしたわ」

 「先輩、おっかない人だったんですね?」

 「チャトラ君も勘弁してくれ」


 天を仰ぐヒナタ、己の行いを悔む。


 「もしかして、三位一体の時に暴走すればもっととんでもない事が?」

 「ツルコ様、それは最後の手段ですわ!」

 「暴走を必殺技に使おうとかするなよお前ら?」

 「でも、先輩たちのパワーアップはありがたいです♪」

 「サクラちゃん達、限界集落ならぬ限界ご当地ヒーロー集団ですからねえ」

 「取り敢えず今の出て来てる敵を乗り切れば、人員も増えるはず?」


 ヒナタが希望的観測を述べる。


 「だと良いんですけど、他の害来者も火事場泥棒に来られるのがめんどいです」

 「うん先輩達が異ない時に、ブラックロジック以外の怪人達がまた出て来て」


 サクラとチャトラが溜息をつく、ヒナタ達が修行していた時に他の世界からも怪人が現れたのでサクラ達が退治したと聞かされた。


 「ううむ、害来者は色んな輩がおるようでござるな?」


 ツルコが眉を顰める。


 「アンドロイド軍団だけに気を取られては足元が崩されますわね」

 「間隙を突かれるって面倒だな」


 チヨコは頭を捻り、ヒナタは苦虫を噛み潰したような顔になる。


 ヨロズハラへ悪人を送り込む、悪の仲介屋がいるとは想像もできなかった。


 「若手達よ集っておるな、行儀は問わぬので耳を貸しておくれ」


 突如、本殿の中に銀髪狐耳の美しい女神キニ―が顕現する。


 ヒナタ達はキニ―の方へと顔を向けて話を聞く。


 「神々の話し合いの結果、ヒナタ達には彼の機械人間達に専任させる」

 「謹んで拝命させていただきます」

 「承知いたしたでござる♪」

 「お任せ下さいませ♪」

 

 キニ―の決定に頷くヒナタ達。


 「サクラやチャトラ、そなた等はこれまで通りこの地を狙う不届き者を任せる」

 「かしこまりでっす♪」

 「かしこまりました」


 サクラ達もキニ―の言葉を受け入れる。


 キニ―から今後の方針を聞いて解散したヒナタ達。


 「やっと、我が家に帰って来れたぜ」

 「本当ですわね、ヒナタ様との夏のデートなど予定が崩れましたわ!」

 「仕方ないよ、秋は遊ぼう♪」


 久しぶりに、本拠地であるノボリべ神社へと帰宅したヒナタ達。


 「二人共、良く帰って来たな♪」

 「お、色々やらかしたみたいだな坊ちゃん♪」


 参道では、ヒナタの父のタカミチとチヨコの父のマツタロウが二人を待っていた。


 ノボリべ家の居間でヒナタ達は父親に、これまでの戦いの話をする。


 「そうか、くれぐれも気を付けるんだぞ?」

 「坊ちゃんと、チヨなら心配はいらねえよ♪」

 「地元の事は、父さんと師匠のお二人にお願いします」

 「戦いに勝っても、帰る家がないと困りますの」

 「任されたよ。 まあ、こちらの事は任せておきなさい♪」

 「ああ、俺も力があれば暴れたいんだが二人とも思い切り暴れて来な♪」

 「お父様、元気すぎですわ!」

 「流石は師匠だ」


 マツタロウに対してチヨコは呆れ、ヒナタは感心する。


 先代であるタカミチ達から後ろは任せろと背中を押してもらう二人。


 久方ぶりに実家での休息を得られたのであった。


 ブラックロジックとの戦いはヒナタ達に任せられたとはいえ、ヒナタ達は宿題や家の仕事はせねばならない。


 翌日の早朝。


 ヒナタとチヨコは二人で神社の境内の掃除をしていると、ものすごい勢いで参道を駆け上がって来るツルコと遭遇した。 


 「お二人共、呑気に掃除をしている場合ではござらん!」

 「如何為されましたのツルコ様、まだ朝ご飯も前ですのに?」

 「まさか、敵襲か?」

 「食事は大事でござるが、出陣でござる!」


 ツルコに急かされ、霊獣武装で変身するヒナタ達。


 「敵はフジン山にあり! 三位一体でござる!」

 「わかった、行くぜチヨコ!」

 「敵はいつもいきなりですわね、参りましょう!」


 三人は、三位一体具足・貫薙の姿になり空へと飛び立った。


 「空に黒い穴が開いてますの!」

 「そして、ワラワラと敵兵が降って来て合体した?」

 「大きさはこちらと同じくらい、相手に取て不足無しでござる!」

 「ちょ、ツルちゃんが暴走しやがったっ!」


 眼下に樹海が広がるフジン山麓。


 異形の戦乙女である貫薙かんなぎと空中で退治するのは、両腕に緑色に光るブレードを生やした白い巨大ロボ。


 「敵も二刀とは面白い、いざ尋常に勝負っ!」

 「ツルコ様、私達も息を合わせますわ!」

 「ぶっ放すぜっ!」


 敵のロボが突っ込んで来る。


 対する貫薙も、両腕から巨大な氷の刀を生み出し突進っ!


 ぶつかり合う二体の刃が鍔ぜり合う。


 だが、ヒナタが担当する貫薙の両足が火を噴き、相手を押し返した!


 「ヒナタ殿、かたじけないでござる♪」

 「おっし、ツルちゃん押し切れっ!」

 「トヨコ様との修行の成果をお見せくださいませ♪」

 「心得たっ♪ せりゃあああっ!」


 相手のロボがブレードによる無数の突きを放つ、だがツルコが操る貫薙も負けじと二刀を振るい相手の刺突を全て打ち落として両腕を切り落とした。


 だが、生き物ならぬ機械の敵は新たに両腕を再生させて襲い来る。


 「ふむ、再生でござるか。 だが、問題なしっ!」

 「ヒナタ様、蹴り飛ばして下さいませっ!」

 「任せろっ、てりゃっ!」


 貫薙の足がヒナタの操作で、ブースターを噴射しながら相手を蹴り飛ばす。


 「この間合いでござる、必殺剣・氷室崩しっ!」


 ツルコが内部で二刀を冗談言振り上げれば、貫薙も同じく両腕を振り上が刃に霊気を纏わせて振り下ろす。


 振り下ろされた氷の刃により、相手はまず全身を氷漬けにされてから五体を微塵になるまで切り刻まれて爆散した。


 「ふう、つまらん物を切ってしまったでござるな♪」


 貫薙の内部、仮面の下でドヤ顔を決めるツルコ。


 「流石ツルコ様ですわ♪」

 「だな、それじゃあまだ敵のゲートが開いている内に突っ込むか!」

 「うむ、お二人共まだ朝餉前で申し訳ござらんが共に参ろう♪」


 ツルコの言葉にヒナタ達が頷き、貫薙を急上昇させて空に浮かぶ敵の異空間ゲートへと三人は突入した。

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