第28話 完成、三位一体具足
「ヒナタちゃん、起きて♪ ふぁさふぁさ~♪」
「……ぷはっ! え、ラーバード様? ここは神世?」
「俺もいるぜ、ヒナタ♪」
「キンチョウ様も?」
ヒナタが目を覚ますと、目の前にはデフォルメされた火の鳥と狸がいた。
周りを見回すと赤い柱に白壁で八畳間位の和室。
自分が寝かされていたのは白い布団、服は神官装束に着替えさせられていた。
軽く状況を整理するヒナタ、自分の所にラーバードがいるのはわかる。
だが、キンチョウはチヨコに付いていなくて良いのだろうか?
チヨコの事が遺伝子レベルで心配なヒナタであった。
「そうよ~♪ 寝てる間に体ごと連れて来させてもらったわ♪」
「チヨコは心配いらねえぞ、安心しろ♪」
「女子部屋にオスは入れさせられないわ、氷鶴ちゃんが見てくれてるの♪」
ラーバードの言葉にヒナタは安心した。
「この部屋は安全よ、テルコ様のお宮にある超回復効果のあるゲストルーム♪」
ラーバードが笑顔で上体を起こしたヒナタの周りを飛び回る。
「あ、あざっす。 筋肉痛が消えてるな♪」
「神のお布団の効果よ、時間の流れは現世と違うから気にしないで♪」
「お前らには、ちょっと神世で修行してもらいてえんだ♪」
「おっす、そう言う事ならがんばりまっすっ!」
霊獣達の言葉を聞いて大体わかったと、ヒナタは立ち上がった。
「ヒナタ様~♪ お目覚めですか~♪」
「ヒナタ殿、失礼いたす♪」
「ヒナタさん、お目覚めですね?」
障子戸が開き、チヨコとツルコそして鶴の霊獣の氷鶴が現れた。
「ああ、俺が最後みたいだな♪」
「ヒナタ様、うれしそうですわね?」
「チヨコがいるからだ♪」
「はい、私も嬉しいです♪」
「うむ、お二人は平常運行でござるな♪」
普段通りのヒナタとチヨコを見て、ツルコは微笑むのであった。
三人が部屋を出て板張りの廊下を渡り、テルコが待つ広間へと進む。
「ヒナタ、チヨコにツルコ姫、皆揃いましたね♪ 礼など不要です」
広間で待っていたテルコが、平伏しようとするヒナタ達を止める。
「神馬一体に至ってから最近の働き、見事です♪」
「ありがとうございます」
テルコの言葉に代表してヒナタが礼を言う。
「あなた達には、その上の段階の
「何と言うか、合体ロボットとかヒーローの合体とかみたいですね?」
「絆の力で一つになる、でござるな♪」
「五体合体とかもできそうですわね?」
テルコの言葉にそれぞれが呟く。
「皆の言う事は間違ってません、神馬一体も過去の戦いで地球と言う異界からこの世界の救援に来てくれた英雄達から学んだものです♪」
テルコがこの世界と地球との縁を語る、
「俺達の世界と似た所ですよね? メリーって奴も言ってましたが」
「壮大な話ですの」
「祖父から聞いた事がありもうす、地球から来た戦士と共闘した事があると♪」
ツルコがそう言えばと語り出せば、テルコが微笑む。
「異界からこの世界を救いに来てくれた英雄達を、
「つまり、俺達は天兵がもたらした英雄の技を修めるのがミッションですね♪」
「なるほど、三位一体が必要な戦いが迫っているのですわね?」
「おお、色々と燃えて来たでござる♪」
チヨコがテルコの言葉から推測すれば、テルコが頷く。
「そうだよな、必要があるから与えられたり呼び出されたんだ」
ヒナタも納得する。
「お二方、ならば成し遂げて見せましょうぞ♪」
ツルコがヒナタ達に微笑む。
「ああ、もちろんだ。 サクラちゃんやチャトラ君も、もしかして?」
ヒナタがツルコに答えつつ、後輩達の事を思い浮かべる。
「はい、彼らも神馬一体を修行中ですので追ってあなた達の力となるでしょう♪」
「頼もしい後輩達ですの♪」
「先輩として、範を示さねばでござるな♪」
「ああ、俺達も始めようぜ♪」
サクラやチャトラの様子も知り、先輩として負けてられないと奮起するヒナタ。
テルコの社を辞したヒナタ達は厩舎へ向かうと、放牧場に三人の神馬が出ていた。
「準備万端でござる♪」
「おっしゃ、行くぜ二人共♪」
「はい、お任せ下さい♪」
三人は霊獣武装を行い変身し、各自の愛馬に跨った。
「話を聞いた限り、合体ロボの世界でござるな♪」
「ここは一つ、当たって砕けろですわ♪」
「いや、良いのかそれ?」
ヒナタ達は、愛馬を走らせ距離を取ると神馬一体で具足形態に変化する。
「行くぞ、三位一体っ!」
ヒナタが音頭を取り、空中で逆立ちし両手でチヨコの両腕を掴み一体化。
チヨコを掴んだ部分が赤いジョイントを持つ黄色の両足となり開脚したヒナタの両足が新たな腕となる。
そこにツルコが、背後から嘴でヒナタを貫くようにぶつかり一体化。
最後にヒナタが頭を出して、完成。
赤き火の鳥の兜を被りし人の頭部。
赤き胴と両腕、胴体の胸部を飾るは白き鳥の頭。
背に白い翼、両足は黄色。
人と獣が混ざった、三十メートル程の巨大な鋼の武者が誕生した。
「凄いアクロバティックな事をしたが、内部で俺ら三人は轡を並べてるな」
「ヒナタ様がセンターだとこのような形態でしょうか?」
「変形とかできそうでござるな♪」
コックピットに当たる空間は、広かった。
ヒナタ達三人は、通常の変身をした姿で愛馬に跨り横並び状態になっていた。
外の様子は、空間内に浮かぶ巨大な球体がモニターのように映し出してくれた。
「この姿、
「達筆な筆文字が、球体モニターに表示されてるよ」
「格好良いのですが、いかなからくりなのでしょうか?」
出来たはいいが、理窟はわからないヒナタ達。
「ではでは、次は拙者がセンターになるでござる♪」
ツルコが広大な空間を駆け出したので、彼女の左右を追うヒナタ達。
中で変化が起これば外も変わる、一度合体すれば変形時は分離しないようだ。
白い胴体は、背中に天使の如く翼を生やし頭部は鳥の羽飾りの付いた兜。
両腕は肩にブースータ―が付いた黄色く巨大な剛腕。
二本の両足は、真紅で蟹の足の如く鋭利な爪先。
抜けば魂散る氷河の刃、
「拙者、何だか宇宙すら切れそうでござる」
「斬るなよ? フリじゃないからな?」
「慢心と乱心はいけませんわ!」
ツルコにツッコむヒナタとチヨコ。
「色々と思う所はありますが、では最後は私がセンターを♪」
「うむ、難しい事は投げ出してチヨコ殿に賛成でござる」
「なって見せるだけじゃなく、動きも試そうな?」
「やはり、試し切りは大事でござるな♪」
「剣客姫は、大人しくしてて!」
高揚感に酔ったツルコにツッコみつつ、三番目の変形を試みるヒナタ達。
最後の変形は、人の頭と胴と手足を持つ戦車型であった。
狸耳の兜を被った黄色い武者の胴体、太く巨大んな真紅の両腕。
白いキャタピラの下半身は、両膝の部分から砲塔が突き出た人間戦車であった。
「私、乗り物は好きですが中でも戦車と列車が好きなんですの♪」
「意外なご趣味でござるな?」
「ひとまず分かった事、具足の形態は俺達の思い入れの形が影響してる」
ヒナタが一通り変形を試して、告げる。
「好きこそ物の上手なれ、想いの強さに通じる気がするでござる」
「自分が注力できる物で戦う、士気が上がりますわ♪」
ひとまず、合体と変身を解いて厩舎脇の休憩小屋に集って話し合う三人。
「問題なのは、燃費でござるな?」
「私達も神馬ちゃん達も、三位一体具足の後はお腹が空きますの」
「ああ、戦場で一々飯を食っていられないからな。 どう、解決するかだよ」
新たな力を得たヒナタ達は、どう運用するかを話し合うのであった。
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