第27話 北の円盤退治
「南の次は、北への旅路か」
「は~るばるとハコタルへとやって来ましたわね♪」
「ホッカイ
「デカすぎて一日で回り切れない観光地だぜ」
涼しげな風が流れ、波の音がざわめく港へと降り立つ三人。
ヒナタ、チヨコ、ツルコはアサヒ列島の北の地。
ホッカイ
「ホッカイ島だけでも広くて、寄合所の支部が十か所以上あるのか?」
ヒナタがメジホの画面をスワイプする。
寄合所に所属する者達専用アプリで、拠点の位置情報を確認しながら呟いた。
「国内の纏獣者は、まことに人員の増強が急務でござるな」
ツルコが自分達も入れて百二十人は少ないとぼやく。
「ですが、闇雲に増やせば良いわけではありませんのよ? 人が増えればその分、お金も手間も仕事も増えますの」
チヨコがどこからか、算盤を取り出して弾いてみせる。
「悩ましいよな、俺達は戦い以外にも生活もあるし」
「拙者は政治の事は、兄上達にお任せいたすよ」
ヒナタの言葉をツルコは、政次は国を継ぐ兄に任せると切る。
ワイワイ言いながら、ホッカイ島をホームとする仲間との合流を目指す三人。
南での修行の成果を、北で発揮せよとの神命を受けての旅だ。
学校が夏休みでなければ、とてもやってられない難行である。
「前はアンドロイドが送り込まれて、ここ最近では敵が空飛ぶ円盤で来てるとは聞いたが宇宙人マニアの一般人対策は大丈夫かな?」
ヒナタが歩きながら呟く。
ブラックロジックが次元を超えて空飛ぶ円盤で現れ始めた事から、アサヒ列島では空前のUFOブームが起きていた。
ブーム以前からの宇宙人マニアと言うのもいて、寄合所では敵との戦闘だけでなく一般人を戦場に近づけさせない為の偽装工作などにも頭を悩ませていた。
港を出た彼らが目指すのは、市内にある霊地でもあり観光地のゴボウ城。
「魚市場、海鮮丼が美味だそうですが♪」
「ヒナタ殿、寿司が食べたいでござる」
「いや、観光は戦いの後にしろよな?」
魚市場や寿司を指さす仲間を窘めるヒナタ、金も時間ももったいない。
「お~い、そこの少年少女達~っ♪」
緑の生地のセーラー服を着たコマがヒナタ達を見つけて声をかける。
「お迎えですわ♪」
「あれは北の代表のコマ殿でござる♪」
「良し、迎えが来たなら寄り道は無しだな♪」
コマの登場に三者三様の反応をするヒナタ達にコマが近づく。
「久しぶり、案内するからついて来て♪」
コマについて行くと、上下黒革のジャケットとパンツと言う服装で馬の耳を頭に生やした精悍な体付きの青年が待っていた。
「君らが東の子達だね、俺はシュン♪ 妹が世話になった、車に乗ってくれ」
シュンの運転する白のミニバンに乗ったヒナタ達。
「お兄ちゃん、緊張してる?」
「いや、お前な? 国のお姫様乗せてるんだぞ、市役所員の俺が?」
「お気になさらず、今は纏獣者として来ておりますので♪」
「かしこまりました!」
シュンがツルコが姫だと気付くと緊張する。
彼は、格好つけて私服で来たのを後悔していた。
市街地に入り、神社の前で車が止まる。
「こちらが、寄合所の支部です。 後は、皆さん宜しくお願いいたします」
休みから公務員モードに戻ったシュンさんの車から降りたヒナタ達。
去り行く車を見届けてから境内に入れば、熊の耳を頭に生やしたトモコがいた。
「コマ、やっと来たか。 東の奴らも良く来たな♪」
「トモコ殿はお久しぶりでござる」
「お久しぶりですの♪」
「ああ、今回は宜しく♪」
「挨拶は良いよ、社務所で会議だ」
トモコに促され社務所に入ると広めの和室に通される。
「いらっしゃい、東の皆さん宜しくね♪」
巫女姿で細身の美人な熊耳の女性がヒナタ達に挨拶する。
彼女がこの支部の長で、トモコの姉のタラコさんと言うらしい。
「私とコマ、東の五人で今夜ゴボウ城に向かうんだよな姉ちゃん?」
「ええ、女の子みたいなロボットを退治したと思ったら円盤が出てね」
トモコの言葉にタラコさんが肯定する。
「私とトモちゃんが結界を張るから、東の皆はアタッカーをお願い♪」
「ヒナタだっけ、暴走は乗り越えたらしいが城は壊すなよ?」
「ああ、わかってる。 いや、本当にな?」
北の面々からはジト目で睨まれるヒナタ、仕方ないが辛い。
「しかし、敵の本陣を討てないのが歯がゆいでござる」
「あくまで纏獣者の力は防衛の為ですの、無理攻めは行けませんわ」
「敵の次元へ行って、神々の力のリンクが切れるとかあるし地の利を活かそう」
「確かに、無闇な突撃は無しでござるな。 ヒナタ殿も、ご注意を」
「うん、言われると思ったよ」
ツルコを諭すヒナタとチヨコ、納得するツルコ。
「トモコも気を付けなさいね、コマちゃんも」
タラコが北の問題児であるトモコとコマに釘を刺す。
会議を終えた五人は市の中心にある観光地、ゴボウ城へとやって来た。
五芒星状に土地を切り堀を作った城、ゴボウ城。
星型の土地の中心にある本丸が、霊脈の要の上に建てられたパワースポット。
敵は各地のパワースポットのエネルギーを汲み上げて、自分達の世界とこの世界を繋げる穴を開けようと目論んでいるらしい。
人払いの結界をトモコとチエが展開し、ヒナタ達は城の屋根に上がり待ち受ける。
空に暗雲が立ち込め、雲の中から巨大な白い円盤が出現した。
「来ましたわ、空飛ぶ円盤ですの!」
「一機だけか? なら行くぞ!」
「ハコタル山へ落としましょうぞ!」
「いや、落とすなら海だ!」
ヒナタがツルコに告げる、ハコタル山も観光地だ。
「「神馬一体っ!」」
城の防衛はトモコ達に任せ、空を飛び神馬一体で具足を追加で纏ったヒナタ達。
ヒナタが、空飛ぶ巨大な火の玉となり円盤に突進を行う。
ツルコはチヨコをぶら下げてヒナタを追う。
円盤からビームが乱射されるもヒナタは意に介さない。
「その程度のビームなら、こいつで防ぐ!」
ヒナタは巨大な炎の翼を出してビームを吸収し、被害を防ぎ切った。
「ヒナタ殿、あれを凍らせるので投げ飛ばして下され♪」
「ヒナタ様、お力を存分に振るって下さいませ♪」
ツルコが砲身から冷凍光線を放てば、円盤が空中で凍り付く。
宇宙人の円盤の様な猴機動力は、ブラックロジックの物にはないらしい。
凍り付き、落下しそうな円盤をヒナタが両腕を巨大化させて空中でキャッチ。
「うおっしゃあ、海へ落とすぜっ!」
円盤を抱えたまま、空を飛ぶ大具足モードのヒナタ。
「ならば拙者達が、落下ポイントを作るでござる!」
「氷の巨大ミットをお作りいたしますわ♪」
ツルコ達が先行し冷気を放って空中で旋回して巨大な氷塊を作る。
作った氷塊はチヨコの具足が、アームを伸ばして海面へセット。
「二人共サンキュー♪ 上手投げだっ!」
ツルコ達が作った氷のミットへ向けて、豪快に空から上手投げで円盤を投げ落とすヒナタ。
「チヨコ殿、退避を!」
「合点ですわ♪」
ヒナタが投げ飛ばした円盤の落下を見て、空へと退避したツルコ達。
空中でヒナタと合流する。
「良し、止めと行こうぜ♪」
「ヒナタ殿、そのお姿だと元気がいいでござるな」
「熱も力もガンガン出て来て、テンション上がりっぱなしでヤバい」
「では、私に力をお授け下さいませ♪ マシン変化の術♪」
チヨコがドリルへと変化し、ヒナタの両腕と合体した。
「神馬一体、可能性の塊でござるな!」
「ツルちゃんは俺の背中を押してくれ!」
「心得た♪ 三位一体で止めでござるな♪」
ツルコがヒナタの背中に張り付き円盤の上空へと移動する。
円盤の方も氷の上に落とされても、まだ生きているようで振動を始めた。
「ツルちゃんは降下宜しく、チヨコはドリルを全力回転っ!」
ヒナタの指示に行動で応じるチヨコ達。
「止めだ円盤野郎、トライドリルストライクッ!」
ヒナタが叫び、巨大ドリルを黄金に輝かせて円盤へと急降下突撃を仕掛ける三人。
その一撃は、円盤を貫き爆散させて海の上に光の柱を立ち上げたのであった。
「……駄目だ、筋肉痛が酷い」
「……拙者も、右に同じくでござる」
「お二人共、ハッスルし過ぎですわね♪」
円盤を撃破して、北の寄合所の支部へと帰還したヒナタ達。
チヨコ以外は客間に寝かされ、浴衣姿で筋肉痛でダウンしていた。
「いや、チヨコは何で元気なの?」
「本当でござる、力に振り回されるとは我らは未熟なり」
「私は、ほとんど力を使っておりませんから♪」
ヒナタとツルコは、忍者汚いと思いつつもチヨコに世話をされるのであった。
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