第24話 霊地を守れ
「あんたら、無茶すんなってゆうたでしょ!」
「面目ございませんの!」
「つい、ブチ切れてしまいました」
キュウト市外にある西の第一寄合所の居間、ヒナタとチヨコはタイコさんから暴走した事でのお説教を受けていた。
「御所は霊地の中でも、戦やら陰謀やらで亡くなった方の怨念が染み込んでるんよ? そんな場所であんたらが暴走したら、折角お祀りして鎮まった怨霊が暴走して呪術メルトダウンよ?」
タイコさんの説教にヒナタ達は猛省した。
「まあ、西の二人が結界張ってたから鎮めのお神楽で済んだけど勘弁して~な」
タイコさんが溜息を吐きながら呆れて説教を終える。
ツジギリロイドを倒すのに、暴走によるオーバーキルをしたヒナタ。
事件後、やり過ぎの罰として御所の中にある舞台で神々への鎮めの舞と神を笑わせ喜ばせる狂言と言う名のコントを奉納したのであった。
「しかし、敵を生け捕りにできたのはお手柄でござる♪」
ツルコがヒナタを褒める。
「敵の生け捕りとは珍しいな?」
トラゾウが興味を示す。
「流石ヒナちゃん、頭ええな~♪」
「ヒナタ様が賢いのは当然ですの♪」
アユミとチヨコが語る。
「あんたら、ヒナタ君の事好きすぎやろ?」
タイコさんは呆れた。
「まあ、逃げる体もないし尋問しよう」
ヒナタが日本で言う、スマホ型の変身アイテムを取り出し操作する。
画面から牢屋に入れられた、メカ少女のホログラフが浮き上がった。
「出せ~! お家帰りたい~! お菓子食べた~い~っ!」
縞々の囚人服姿のツジギリロイドの魂が、牢屋内で鉄格子を掴んでわめいていた。
「子供か、こいつ?」
「子供さんやね~?」
「殺人機械に子供の魂を組み込むとは外道ですわ!」
「ん、お菓子? ほれ、飴ちゃん食べる?」
「差し入れだ、食え」
タイコさんがホログラフに飴を近づけると飴が異空間へと転移した。
牢屋内でバリバリ飴を噛み砕くツジギリロイド、もっと寄こせと言う目をする。
「もっと欲しければお前の持っている情報を、全部寄こせ」
「え~? ど~しよっかな~♪」
「この世界ではお前にロボ権も人権もない」
冷たい口調で言い、ツジギリロイドを睨むヒナタ。
「ひ、びええ~~ん! このお兄ちゃん恐いよ~っ!」
「この世界を荒らし、何より俺の愛するチヨコを侮辱した貴様に容赦はしない」
「世界よりチヨコ殿の方が上でござった!」
「うん、やっぱりヤバいなヒナちゃん」
「チヨちゃん、ずるいわ~!」
「東の子って、皆こうなん?」
ツジギリロイドは泣き出し、仲間達からは呆れられたりするヒナタ。
「まあまあ、ヒナタ様♪ ここは私にお任せ下さいませ♪」
「ほえ? 何お姉ちゃん、お耳と尻尾がタヌタヌ?」
「ええ、タヌタヌお姉さんですポン♪ あなたのお名前なんですポン♪」
チヨコが優しく歌うように、子供番組のお姉さんのように振舞う。
「なるほど、硬軟織り交ぜての尋問ってわけやね」
「良い警官と悪い警官だな」
「チヨちゃん、あざといわ~」
「アユミ殿も大概でござるよ?」
「あれもチヨコの忍びの技だ」
ヒナタ達は隣の和室で式神を使い、映像で尋問の様子をうかがう。
「私、ツジギリアンドロイドのキリちゃん♪」
「あなたのお家は、何処ですポン?」
「並行世界サイバーアース♪ 世界破壊結社ブラックロジックの子で~す♪」
「何しにこちらに来たんだポン♪」
「他世界侵略で戦力増強、サイバージャスティスをやっつける為♪」
「何が狙いでしたでポン♪」
「こっちのヒーロー倒して、バリヤーポイント破壊でゲート接続♪」
チヨコに乗せられて、情報を吐き出すキリ。
異世界の悪の組織の所属で、故郷のヒーローを倒す為にいくつもの他所の世界を征服して戦力の強化を狙う尖兵だと語る。
「見て見て~♪ これがキリちゃん達の侵攻予定マップ~♪」
「うわ~い♪ キリちゃんは、凄い子ですポン♪」
「うん、キリちゃん凄いの~♪」
キリは自慢しながらアサヒ列島のデジタルマップを出して、侵攻を予定している地点と予定時刻と自分達の戦力と全てをチヨコに対して教えるキリ。
「それではキリちゃん、良い子はお眠の時間ですポン♪」
キリから情報を聞き終えたチヨコ。
聞く事は聞いたと、最後に子守唄による詠唱での幻術でキリを眠らせた。
「まったく、異次元からの悪の組織ってテレビだけにしといて欲しいわ」
タイコさんが呆れて溜息を吐く。
「タイコ殿は、各地の寄合所へ連絡をお願い申す!」
「はいよ、慣れとるさかい任しとき♪ こんなアホな連中、東西南北の寄合所総出できっちりお灸をすえたるわ!」
ツルコの言葉にタイコが応じる。
「悪の組織か、相手に取って不足はないな♪」
「機械なら、手加減せんでもええしね♪」
トラゾウとアユミがやる気を出す。
すっと障子戸が開き、チヨコが合流した。
ヒナタの変身アイテム、メイジフォンを持って来たチヨコがキリの魂の処遇について捕獲した当人であるヒナタに尋ねる。
「ヒナタ様、あの子はどうなさいます?」
「そうだな、テルコ様に生まれ変わらせてもらおう」
「うふふ♪ やはり、お優しいのですねヒナタ様♪」
「俺にもわからん、何かもうあれがアホな子過ぎて滅ぼす気が無くなった」
「ヒナタ殿、それはツンデレでござるな♪」
「ヒナちゃん、素直にならなあかんよ?」
「そうだぞ、男のツンデレは受けが悪いからな♪」
仲間達から総出で好き勝手言われるヒナタ、総受けである。
「知るかよ、俺は素直だ!」
ヒナタは仲間達に言い返すと、メイジフォンことメジホをチヨコから受け取る。
メジホの画面をスライドさせ、メッセージアプリをタップして起動し連絡先からご祭神であるテルコへメッセージを書いて飛ばす。
「あ、もう来たよ! 何と言うか、返事が早いなテルコ様」
「失礼、共有させて下さいませ♪ キリちゃんの転生先は、ノボリべ家ですの!」
「全く、何で我が家なんだ? まあ、ご祭神様が決めたらな仕方ねえな」
「私に、義妹ができますのね♪」
「前世みたいに、剣で暴れそうな妹ができるのか」
テルコからのメッセージによる返事は、キリの魂は自分の力で来年にノボリべ家の人間へと転生させるとあった。
ついでにヒナタの優しさを褒めていた。
翌年、テルコの宣言通りにノボリべ家にキリの魂が転生した長女ができるのはまた別のお話。
かくして、ヒナタ達が遭遇した事件から全国の纏獣者達による霊地防衛作戦が動き出した。
「それでは、短い間でしたがお世話になり申した♪」
「……何と言うか、ご迷惑をおかけしました」
「同じくですの」
「南でも暴走したらあかんよ、アホみたいなどえらい力は出し時があるんやから」
「はい、肝に銘じておきます」
「まあ、こっちはこっちでトラ君達と何とかするからヒナタ君達は気張りや♪」
翌日の事、一週間の予定であった研修の三日目で西の寄合所から南の寄合所へと再研修の名目で派遣される事となったヒナタ達。
西の寄合所を出た三人は、チヨコが術で出した空飛ぶ屋形船に乗り込んで旅立つ。
タイコさんが言うには、霊地には魔法的な相性があり闇属性が強いキュウトよりは火山のある南の方が火属性の得意なヒナタにとって得る物があるだろうとの采配だ。
「ツルちゃんは、北の方が良いんじゃねえの?」
「心配ご無用♪ 南には、節会での縁があり申すゆえに♪」
「ああ、あの方ですのね」
「ツルちゃんも、節会の事を引きずってたんだな」
「恥ずかしながら、負けっぱなしは嫌でござる♪」
「武士ですのね、ツルコ様」
「チヨコ殿、アサヒは神と武士の国ですぞ♪」
屋形船の中で語らう三人、彼らの船は南の地へと飛んで行った。
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