第23話 辻斬りアンドロイドを斬れ!

 「姫がいるとはいえ、俺達もよくあっさり御所へ来れたな?」

 「私らみたいな胡散臭いの職質物なのに、ほんまに驚きやね?」


 正装が必要な場所なので、神官装束と巫女装束を着たトラゾウとアユミが呟く。


 砂利道の御所の通路、ヒナタ達は御所内にある内部と周囲の警備を担当する近衛警察軍の警察署に向かっていた。


 「何、拙者の友を省こうとする者は、ここにはおらぬでござる♪」

 「いや、見て来た資料からして近衛警察軍と寄合所は繋がってる」


 ツルコの言葉にヒナタが口を挟む。


 「でなければ、流石に姫と言えども止めに入りますわ」


 チヨコもヒナタの言葉に続く。


 「確かに、連絡した際にお仲間の皆様と警察署へと言われ申した」

 「いや、ツルちゃんはお家でのお姫様教育も受けような?」

 「うう、ヒナタ殿! それは嫌でござる!」

 「お家から逃げてはなりませぬよ、ツルコ様♪」


 ツルコの言葉にヒナタとチヨコがツッコむ、王家の後を継がなくても儀式やら仕組みやらの知識とかは持っていて欲しい。


 古風で広大な敷地面積のある御所の中にあるビル。近衛警察軍キュウト署。


 ヒナタ達が通された会議室。


 黒い制服を着たガタイの良い短髪で彫りの深い顔の中年男性が、頭を下げた。


 「姫やお仲間の皆様のお手を煩わせる事となり、申し訳ございません!」

 「構わぬでござるよ、ミナコシ署長♪ 害来者が相手とあらば責められぬ」

 「我らにも力があれば、悔しいです!」


 悔しがる署長、彼もこの世界では腕利きなのだ面子を潰されて業腹なのはわかる。


 「良い、始末は上である拙者と仲間達が付けようぞ♪」

 「姫様、皆様、宜しくお願いいたします!」

 

 署長がヒナタ達にも頭を下げた。


 「はい、俺達でツルコ姫を支えて事件を終わらせます!」

 「良い目だなあ少年、進学先は近衛警察軍大学に来ないか♪」


 力強く答えたヒナタに、ミナコシ署長が微笑む。


 「これこれ、纏獣者は王家に仕える者にあらずでござるよ♪」


 ツルコが署長を窘めて皆で笑い合う、これは連帯感を作る儀式。


 「犯行時刻は決まって二十時頃、犯人の特徴はこのようなアニメから出て来たみたいなふざけた格好の怪人です」


 署長が犯人の映像をプリントした物をヒナタ達へと見せる。


 「……これは、悪趣味ですの」

 「盛り過ぎやね~♪」

 「アンドロイドか、リンドウが好きそうな奴だな?」

 「セーラー服と袴がモチーフでござろうか? 刀も玩具みたいでござる」

 「異世界人、ぶっとんでるな」


 見せられた敵の姿、上半身は青セーラー服で下半身は白い袴型。


 ヘッドパーツは、ピンクのツインテールの美少女アンドロイド。


 武器は腰に差した黄色いプラスチックでできた、玩具の刀風のガジェット。


 こんなふざけた敵に負けたと言うのは、確かに屈辱だろうとヒナタは感じた。


 署長と打ち合わせを終えて警察署を出たヒナタ達。


 打ち合わせ通りに見回りに出ようと御所の正門を出た所で、敵が出た。


 「あ~~っ♪ センサーに反応アリアリ~~ッ♪ ヒーロー、発見っ♪」


 ハイテンションな美少女ボイスを発したターゲットの辻斬りアンドロイド。


 「出やがったな! 行くぜ皆、霊獣武装っ!」

 「おう♪ ついて行くぜ、ヒナちゃん♪」

 「ヒナタ様に続きます!」

 「私も付いてく~っ♪」

 「流石ヒナタ殿、良い血気でござる♪」

 「わ~~い、ヒーローがいっぱ~い♪」


 変身した纏獣者達、ヒナタが真っ先に抜刀して突っ込む!


 「……戦闘モード移行。 ツジギリロイド、ファイト!」


 スイッチが入ったアンドロイド、ツジギリロイドがヒナタの一撃を左腕で受ける。


 前からヒナタが囮となり、左右はアユミとチヨコが後ろからはトラゾウ。


 そして、上空からツルコの剣がツジギリロイドへと襲い掛かる!


 ヒナタ達に死角はなかった、だが相手はべらぼうであった。


 ツジギリロイドのツインテールが横に浮き上がり、青いビームをチヨコ達へ発射。


 背後を狙ったトラゾウへは、片足を後ろへ蹴り上げて牽制し包囲に隙間を作る。


 上空から刀を突き立てて来たツルコへは、頭頂部から銃口が開き実弾を発射した。


 「うおっと!」

 「うそ~ん!」

 「何のこれしき!」

 「甘いですわ!」

 

 ツルコ達はそれぞれが相手の反撃を回避。


 「うおおお、火力全開だっ!」


 前から攻めているヒナタが、刀身を燃え上がらせて真っ向から押し切るべく挑む。


 「……対象のヒーロー数値上昇、剣戟モードへ移行」

 「何を言ってるんだこいつ? 危ねっ!」

 「避けられちった~っ♪ いざ、勝負~~っ♪」


 ツジギリロイドが腰の刀を右手で抜き横薙ぎ、ヒナタはバックステップで避ける。


 「ヒナタ様への好意を確認、絶対に許しません!」

 「いや、チヨコ殿の沸点そこでござるか!」


 空中から現場を俯瞰しながらツルコがツッコむ。


 ツジギリロイドに嫉妬したチヨコが苦無の二刀流で疾風を纏い襲い掛かる。


 「あかん、チヨちゃんがぷっつんしても~た!」

 「俺としたことが忘れていた、結界展開!」


 トラゾウとアユミが慌てて周囲に結界を展開する。


 「え~っ! このタヌタヌ、何か全然可愛くな~いっ!」


 ヒナタから襲って来たチヨコに向き合い、防御に回るツジギリロイド。


 だが彼女は気づいていなかった、とんでもない地雷を踏んだことに。


 「な、ヒナタ殿が燃えたっ!」

 「あかん、ヒナちゃんが怒った~~~っ!」

 「いや、こいつらマジかよ!」


 援護のタイミングを計っていたツルコ、結界を展開したトラゾウとアユミも驚く。


 「チヨコを侮辱するな~~~~っ!」


 ヒナタの咆哮が轟き、トラゾウの結界を突き破る程の火柱が上がる。


 「ふえ? 何あれ~~っ!」

 「ヒナタ様っ!」


 鍔迫り合いをしていたチヨコとツジギリロイドが驚愕し、互いに距離を取る。


 ヒナタの全身から炎が噴き出し、歩く度に地面が溶けて足跡からも火柱が上がる。


 歩く焦熱地獄と化したヒナタに戦慄するツジギリロイド。


 「あ、あわわっわっ!」

 「貴様だけは絶対に許さん! 一切容赦する気はないっ!」


 ヒナタの叫びと共にツジギリロイドの足元の周りに炎の話が描かれる。


 「熱っ! 嘘っ! 私ロボなのに、熱いっ!」


 ツジギリロイドの体から警告音がブーブーなり出す。


 ツジギリロイドへと迫るヒナタの背から六枚の真紅の金属の翼が生え、翼から出た炎が繋がり輪となる。


 神と言うより。明王などの仏像じみた憤怒の形相のヒナタが刀を大上段に構える。


 「日光浄化剣、吸魂絶刀きゅうこんぜっとうっ!」


 ヒナタの振り下ろした一刀は、ツジギリロイドの体を溶かしながら両断した。


 斬られたツジギリロイドから青く輝く光の玉が飛び出し、ヒナタへと吸い込まれると彼は変身を解いた。


 「よし、これにて一件落着だな」

 「ヒナタ殿、ヤバい御仁でござるな」

 「ヒナちゃん、恐いわ~っ!」

 「いや、ドン引きしたぞヒナちゃん!」

 「ヒナタ様の愛の重さ、素晴らしいですの♪」


 チヨコ以外の仲間達が、こいつヤバ委はと言いながら変身を解いて近づく。


 「ヒナタ殿、お心は鎮まったでござるか?」

 「いや、人をヤバい奴みたいに言うなよ!」

 「いや、ヤバイ奴だってヒナちゃんよう?」

 

 トラゾウにツッコまれたヒナタ。


 「でも、倒してしまったら敵の情報とかどないしよ?」


 アユミが水の魔法で、ツジギリロイドの残骸を冷やしながら呟く。


 「それに関しちゃ問題ない、奴の魂は捕まえたから」


 ヒナタがスマホ型神器の画面をスワイプすると、牢屋に閉じ込められたツジギリロイドがそこにいた。


 「うえええん、出して~っ! 助けて~~っ!」


 泣き叫ぶツジギリロイド。


 「流石はヒナタ様ですわ♪」


 チヨコがヒナタに抱き着く、こうして都を騒がせた辻斬り事件は幕を閉じた。

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