第四章:霊地巡察編

第22話 そうだ、キュウト行こう!

 「いや~、皆超凄かったよ~♪」

 「皆、大儀でした♪」


 東の寄合所のある神社、ダッキー稲荷の本殿の中に集まった一同。


 銀髪狐ギャルなダッキーとその母のキニーが、ヒナタ達五人を労う。


 神であるキニーも人の姿を取っている、娘同様に銀髪の狐耳と尻尾の色白美人だ。


 神官装束や巫女装束のヒナタ達は、正座の状態からキニーに伏して礼をする。


 「お褒めいただき光栄でござる♪」

 「他の皆様との交流もできて楽しかったですわ♪」

 「来年は、福男になります!」

 「ヒナパイセン、まだ根に持ってますね」

 「チヨコ先輩は確かに、ずるかったと思います」



 ヒナタはリベンジを誓った、愛と勝負への想いは別腹。


 「まあ、ヒナタ殿は残念であったな。 それはさておき、西へ出かけて貰いたい」


 キニーがヒナタ達に告げる。


 「自分達もっすか?」

 「僕達は、地元の祭りがあるから免除みたいだね」


 チャトラがサクラに告げる。


 「お土産よろっす、パイセン達♪」


 サクラがヒナタ達にお土産を要求する。


 「西と言うと、どこでしょうか?」

 「国内でも古い霊地がある地域ですわね?」

 「うむ、キュウの都が有名でござるな♪」

 「そう言えば、ツルちゃんってお姫様だけど何処かの神社に所属してたか?」


 ヒナタがふと思い出す、寄合所のこの研修は表向きは神職の研修だ。


 「拙者は天君イエヨシ公をお祀りする東天宮とうてんぐうの所属でござる♪」

 「ヒナタ様、すっとぼけですわ! 桜東での王家ゆかりのお社ですわ!」

 「いやいや、拙者も確認していただくまで忘れており申した♪」

 「いや、力もらった当人が忘れてるって?」


 ツルコの言葉にずっこける一同。


 「流石はツルパイセン、ボケもロイヤルクラスっす」

 「ともかく、先輩達はお気をつけて」


 サクラとチャクラが先に気を取り直してヒナタ達に告げる。


 「入れ替わりに西からはリンドウ、ヨシノ、シカメの三名がオウカに参ります」

 「だからこっちは心配なっし~♪」


 キニ―とダッキー親子が笑顔で告げる。


 「アユミ様がおられるのですわね」

 「いや、家の従姉妹を嫌わんでくれよ?」

 「ヒナタ様に勝ちを譲らなかった罰でしょうか?」

 「友達との旅、楽しみでござる♪」

 「ツルちゃんは、遊び気分かよ?」


 ヒナタとチヨコ、それぞれ気が重くなる旅の始まりであった。


 翌日、ヒナタ達はオウカ駅のホームで合流した。


 ヒナタは赤いパーカーに黒のパラシュートパンツ。


 チヨコは黄色いワンピース。


 ツルコは上下白いジャージとバラバラであった。


 「ヒナタ殿、巫女装束でなくても良かったのでござるか?」

 「ああ、現地で着替えれば良い神官に巫女装束で公共交通機関は使えないって」

 「場に合わせた装いをすれば良いのですわ♪」



 荷物は先方に送り済みとはいえ、トンデモ珍道中であった。


 やって来た魔導新幹線の中央車両に乗り、指定席に座る。


 ヒナタとチヨコが向かい合いの窓側、ツルコはチヨコの隣の通路席。


 「この車両、俺ら以外のお客さんがいないな?」

 「拙者、何も手回しておらんでござるよ?」

 「私の福女効果ですわ♪」

 「マジかよ、とんでもねえな?」


 他の車両はそこそこの乗客がいたのに、ヒナタ達のいる車両だけは貸し切り状態。


 「車内販売も、良いタイミングで来てくれたでござる♪」

 「ささ、ヒナタ様とツルコ様に服のおすそ分けですわ♪」

 「ありがたいな、頑張った甲斐があったぜ♪」

 「来年も頑張りましょうぞ♪」


 美味しい弁当にみかん、車窓を流れて行く風光明媚な景色。


 「ああ、フジン山が見える♪」

 「フジンはアサヒ一の山でござるな♪」

 「フジン山には、イエヨシ公もお祀りしているのでござる♪」


 西と東の間に建つ富む神の山、フジン山を見て感慨にふける三人。


 車窓からフジン山を拝む三人。


 フジン山を過ぎれば、東西の中間の都市ナガワに止まる。


 「ナガワと言えば、味噌カツ弁当や鰻弁当でござる♪」

 「激しく同意ですわ♪」

 「いやお前ら、食いすぎ注意!」


 ヒナタが止めるのも聞かず、チヨコ達は駅弁を買う。


 「ヒナタ様、研修の為にも食べておかねばなりませんよ♪」

 「そうでござる、カロリーは正義でござる♪」

 「まったく、俺も付き合うよ♪」


 わいわい賑やかな移動時間も、車窓から篝火のようなキュウトタワーが見えた事で終わりを告げた。


 列車から降りた三人が改札を出ると、二人の人物が待ち構えていた。


 「ヒナちゃ~~ン♪ こっち、こっち~~♪」

 「ようヒナちゃん、待ってたぜ♪」


 おっとりとろ目で小柄なおかっぱ頭の美少女、アユミ。


 ファッションはチヨコと同じくワンピース。


 黒い丸刈り頭でガタイの良い太マッチョな少年、トラゾウ。


 何処で買ったのか知らないが、黄色い虎柄のパーカーにスウェットパンツだ。


 「ようこそ、縁の街キュウトへ♪」

 「ヒナちゃんと一緒、楽しいな~♪」


 アユミ達に先導されてヒナタ達は、駅を出る。


 「微妙な空気でござるな?」

 「人々の魔力、神々の神気、土地の霊気、様々な気が満ちてますわ」

 「オウカや東とは大違いだな、術式都市キュウト」


 場に満ちる様々な力の流れを纏めて、空気が違うと感じたヒナタ達であった。


 駅から南へバスに乗り、キュウト市を出ると空気がヒナタ達の知る物に変わる。


 バスを降りて五人がやって来たのは、街の中に佇む小規模な神社であった。


 ヒナタ達だけは、魔法で神官装束や巫女装束へと着替えてから境内へと入る。


 社務所も兼ねた一軒家にお邪魔すると、出迎えてくれたのは恰幅の良い神官装束に紫の袴を着た明るい感じのおばちゃんであった。


 「いらっしゃい♪ あんた達が東の子達やね、私はタイコって言います宜しく♪」

 「宜しくお願いします」

 「宜しくお願いいたしまする♪」

 「お世話になりますの♪」


 居間に通されてお茶を戴く、ヒナタ達。


 「タイコさんよ、ヒナちゃん達の研修って何をやらせるんだ?」

 「霊地を守ってる市内の神社に挨拶回りとか~?」


 トラゾウとアユミがそれぞれ語る。


 「研修やし、そう言うので済ませたかったんやけどね?」


 タイコが申し訳なさそうな顔をする。


 「もしかして、害来者ですの?」

 「何と、ならば拙者達が腕を振るうでござる!」

 「ああ、お世話になるなら働かせていただきます!」

 「ほう♪ やる気だな、ヒナちゃん♪」

 「流石ヒナちゃんやね~♪」


 やる気を出したヒナタ達、タイコは溜息を吐きながら告げる。


 「しゃあない、西の第一寄合所から依頼させていただきます。 依頼内容は、最近キュウト市内に出没した害来者と思われる辻斬り事件の調査と討伐です!」


 「「承りましたっ!」」


 依頼内容を聞き、引き受けたヒナタ達五人。


 「皆、無茶し過ぎんといてね? 死んだらあかんよ?」


 タイコがヒナタ達を案じながら念を押し、虚空からファイリングした資料を取り出してヒナタ達に見せる。


 「ふむ、夜の御所周辺で起きているようでござるな?」


 ツルコが眉を吊り上げる、キュウトの御所は姫である彼女にとっては別荘だ。


 「被害者はどなたも術や武芸の腕の立つ方ばかりが、峰打ちですのね?」


 チヨコが被害者について述べる、死人は出ていないらしい。


 「被害者って近衛の警察軍とかだよな、相手は侍もどきの怪人かあ?」


 ヒナタも資料を見ながら呟く。


 「犯人は害来者で決まりだろう、こっちの怪物なら国の精鋭が後れを取るわけがないからな」

 「きっと、相手にダメージカットされたんやろうね?」


 トラゾウとアユミも見解を述べる。


 「ふむ、拙者が選ばれたのはお導きでござるなこれは」


 ツルコが頷く、自分の家の周りで事件を起こされては黙ってはいられない。


 かくしてヒナタ達は、準備を行い辻斬り事件に挑む事となった。

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