第19話 超人パワフル蹴鞠
「申し訳ござらん、相手が一枚上手でござった」
「いや、ツルパイセンはお疲れ様っす!」
「そうですよ、あれはベストバウトです!」
「ツルちゃんだからできた、あの結果だよ♪」
「何も恥じる事はございませんわ、ツルコ様♪」
控室へと戻って来たツルコをヒナタ達は出迎える。
「次の機会があれば、今度は勝ちを取りたいでござる♪」
ツルコはトヨコに対して、いつかのリベンジを誓った。
「……皆、ごめんね?」
「お疲れ様、ヨシノちゃん♪」
「おう、お疲れ♪」
「頑張って来た人を責めるような輩は、纏獣者にはいません」
「よくやったな、ヨシノ」
「……ありがとう、皆♪」
ヨシノを迎えたチーム西の仲間達も、負けた彼女を責めなかった。
「ばんざ~い♪ ばんざ~い♪」
「トヨコさん、凄いです~♪」
「やったな、トヨコ♪」
「流石は南一の剣士ね♪」
「皆さん、ありがとうございます♪」
一位を勝ち取ったチーム南は、思いきり喜んだ。
「次の種目も。この勢いに乗って行きましょう♪」
「「オ~♪」」
チーム南は輪になり、コーラを入れたグラスで乾杯した。
三位だったチーム北の控室。
「お疲れ様だな、ユキ♪」
トモコがユキを労う。
「うん、何とか意地は見せられた」
「ユキさん、お疲れ様でした♪」
チエもユキを労う。
「次は蹴鞠ですかね? 誰が選ばれるか?」
サオリは、パンフレットとにらめっこをしていた。
「四種目目の競技はズバリ、蹴鞠で~す♪」
各チームの控室の備え付けてある大型モニターから映像が流れる。
「東は自分っすか、ナリ女のエースストライカーの出番っすね♪」
東の代表となったサクラが控室でドヤ顔を決める。
「蹴鞠ですか、絶対に不覚が取れない競技ですね」
西の控室では、選手に選ばれたシカメが緊張する。
シカメの実家の神社こそ、アサヒ列島における蹴鞠発祥の地。
「ふっふっふ♪ ボールも敵も蹴るのは得意だよ~♪」
東と同じく南の控室でも、得意げに笑うのは猫娘のマヤ。
「頑張りなさいよ、応援してるからね♪」
「マヤさんなら、行けます♪」
「ウチナン魂見せてこい♪」
「ご武運を♪」
仲間達がマヤを応援する。
最後は北の控室、選ばれたのは羊娘のサオリであった。
「私、弓の方が得意なんですが? まあ、動けないわけじゃないので頑張ります」
「蹴鞠なら、私が出たかった」
ユキが選ばれなかった事を悔しがる、ユキは剣もできるが節会の競技の中で彼女が得意なのは蹴鞠の方であった。
「う~ん、何と言うか得意じゃないのに選ばれるってのが多いな?」
トモコが選抜基準に疑問を覚えて呟く。
「得意な競技で負けちゃった私が言うのもあんだけど、悪意はないと思うよ」
コマがトモコに答える。
「私は、やや勝手が違った程度でしたね? サオリさんは頑張って下さい♪」
チエも感想を呟きつつ、サオリを応援する。
選手達はそれぞれの控室から出て行き、闘技場へと集まった。
「それでは皆さん、変形した闘技場をご覧下さい♪」
兎が選手達に向けて叫ぶ、闘技場に現れたのは二面のコート。
「ルールは簡単、足と尻尾だけを使いボールを蹴ってゴールへ入れる♪」
兎が足で蹴る真似や尻で突く真似をする。
尻尾もありなのは、尻尾のある霊獣の力を持つ者達向けの特別ルール。
「先に二点を先取したチームの勝ちです、それでは霊獣武装をお願いします♪」
「「霊獣武装っ!」」
兎の合図で選手達が変身してそれぞれのコートへと向かった。
第一コートでの試合は、ピンク色のイルカを模した装甲を纏ったサクラと白い羊を模した装甲を纏ったサオリの対決。
「ヘイヘイ、角は禁止っすよ~♪」
「煽りは無意味です、あなた牛乳飲んでます?」
「ムキ―ッ! どんだけ、ミルクスキーっすか!」
言い合いながら、最初は虚空から現れたボール蹴って一回はラリーを行う二人。
サオリがボールを高く蹴り上げる、これがボールの奪い合いと勝負のスタート。
毛玉が浮くように飛んだサオリと、イルカの如くジャンプしたサクラが蹴り合う。
地球で言うフットサルとバスケとバトルが混ざった、エクストリームな蹴鞠。
「先手必勝、ドルフィンキックっす!」
「させない、メ~~~~~ッ♪」
ボールの取り合いに勝ったサクラが廻し蹴りでボールを蹴る。
対するサオリは、着地をしてから超音波の振動でボールを逸らしにかかる。
「甘いっす、イルカも音波は出せるっすよ♪ キュ~~~ッ♪」
蹴った姿勢で空中に留まっていたサクラ。
音波には音波。
サクラも対抗して仮面の額から超音波を出した結果、ボールは地面に落下した。
「地に足付けて勝負っすか! やってやるっす!」
「ドリブルは得意です」
「そう言う奴からボールを取るのが自分は得意っす!」
着地したサクラがサオリのドリブルを迎え撃つ。
「取ったっす♪ って、毛玉?」
「それはデコイです、先制点いただきます」
サクラが抜いたと思いきや彼女が奪ったのは、サオリが生み出した毛玉。
サオリのバイシクルキックが、サクラ側のゴールへとボールを叩き込んだ。
「キュ~~~ッ! まだ一点っす!」
先制はされたがサクラの闘志は消えてない、再びボールの取り合いが始まりサクラが確保する。
「ここからが自分のターンっす♪ 波に乗るっすよ~♪」
「……抜かれた? 足周りに水流っ!」
「波乗りシュートっす!」
「しまった、あれは妨害できない!」
サクラが水流を纏った足でボールを蹴れば、水流が高波となりボールをゴールへと運び落とし得点となった。
一対一のイーブン、次で決まる。
サクラとサオリがボール巡りコート中央でぶつかり合った結果、ボールが空中へと飛び上がる。
二人も飛び上がり空中での蹴りの応酬の中、ボールがこぼれた。
「尻尾はありならこれで決めるっす!」
サクラが尻から尾びれを出して全力でボールを蹴る、先に落下中のサオリは阻止出来ずサクラのシュートが決まりチーム東の勝利が決まった。
第二コートの試合、金色の山猫の装甲を纏ったマヤ対青い鹿の装甲のシカメ。
「……何なんですか、あのゆるい人は?」
「あはは~♪ なんくるないさ~♪」
真面目で固めな性格のシカメと、のんびり柔らかな性格のマヤ。
硬軟と相反する性格の二人の対決は、シカメがペースを崩されていた。
「君、凄い飛ぶね~♪ でも、動きが硬いさ~♪」
「その笑顔が小憎らしいです!」
力強く攻めるシカメ、軽やかにすり抜けて彼からボールを奪うマヤ。
シカメが意地で一点を入れて同点に追いつくも、マイペースに軽やかに試合運びを行うマヤに翻弄され逆転されてしまう。
決勝は、剣術の時と同じく東と南の対決となった。
「ナリハマのド根性エ~ス参上っす♪」
「うわ~、君は面白そうな子だね~♪」
「ゆるっ! ウチナンタイムっすか? ツルパイセンのリベンジっす♪」
「さ~♪ 楽しく遊ぶさ~♪」
コートで向き合うサクラとマヤ、ラリーからの先手はサクラ。
「わかるっす、ニャ~ちゃんも波使いっすね?」
「そ~だよ~♪ 私がニャ~ならそっちはキュ~だね~♪」
ドリブルで進むサクラとマヤが接近する、サクラはマヤから発せられる波の動きを感じて追いかける。
「読めたっすよ、とりゃっ♪」
「あら~~っ? 抜けなかったさ~っ!」
マヤの股抜きを回避したサクラ、するっと抜けてバシッとボールを蹴り上げて先制点を取る。
「ドヤっす♪」
「うん、流石だね~♪ なら、これは読めるかな~♪」
「うおっ! 流れが変わったっす!」
先制点を取りドヤ顔してる間に、ペースを変えたマヤにボールを取られたサクラ。
「油断したっす! ちぇりゃ~~っ!」
「あはは~っ♪ やっぱり君は楽しい人さ~♪」
「ド根性で止めるっす!」
水流を生み出して追いかけ回り込むサクラ。
「ちなみに私、光も出せるよ~♪」
声はゆるいが、勢いは強い光線を発射するマヤ。
「危なっ! ビームぶっぱっすか?」
「はい、シュ~~ト♪」
「し、しまったっす!」
マヤが出した金色のビームを、空気の波の変化から予測して避けたサクラ。
だがその隙に、マヤにシュートを決められて同点に持ち込まれてしまう。
「諦めないっす、ラスト五秒で逆転するっすよ~♪」
相手の波に飲まれてはいけない。
気を取り直したサクラは、再びマヤとボールの取り合いを行う。
山猫とイルカの霊獣の特性を使い、足だけでなく尻尾も駆使しての取り合う二人。
ボールを取ったマヤが、足で蹴ろうとしたタイミングに合わせてサクラが動く。
「ウェーブスライディングっす♪ 勝利の波に乗るのは自分っすよ~♪」
「あが~~っ!」
水流を生み出し、波を起こしてスライディングでボールを攫うサクラ。
波の勢いでボールと共に跳び、踵落としでシュートをゴールへと叩き込んだ!
「うおっしゃ、ツルパイセンのリベンジ達成っす~♪」
サクラが得点と共に勝利を叫ぶ。
剣術の仇は蹴鞠でと、チーム東が一位を取ったのであった。
そしてある意味でもう一つのリベンジ、三位決定戦ではシカメがサオリを下しこちらも剣術でのヨシノの仇を討ったのであった。
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