第18話 燃えよ剣戟!

 「流石はヒナタ様ですわ、ささスポーツドリンクを♪」

 「おめでとうでござる♪」

 「おめでとうございます、連続一位ですよ♪」

 「ヒナパイセン流石っす♪」

 「ありがとう、疲れた」

 「では、私がお世話いたしますからお休みくださいませ♪」

 

 控室に戻って来たヒナタ、熱烈な祝辞を受ける。


 奥の方でチヨコが敷いた布団に寝転がり、彼女に見守られながら仮眠を取る。


 「チヨパイセン、めっちゃ尽くすタイプっすね?」

 「お二人の絆の強さは、計り知れないものがあるでござる」

 「ヒナタ先輩、良いなあ♪」

 「チャトラ君やツルパイセンは、いないんすか?」

 「残念ながら探索中でござる、己の婿は己で掴むでござる♪」

 「僕は、募集中ですっ!」

 「自分も、探し中っす♪」


 ヒナタとチヨコの様子を見ながら語るサクラ達、青春であった。



 「面目ない、遊びが過ぎた」


 チーム西の控え室ではリンドウが仲間達に詫びていた。


 「いや、お前あれはないだろ?」


 呆れるトラゾウ。


 「まあ、二位ならまだ目はあるから♪ 気分を変えて行きましょう♪」


 ヨシノは気分を転換する。


 「リンドウさんは、拗らせるのは中二病だけにして下さいね?」


 呆れるシカメ。


中学生に諭される、高校生のリンドウであった。


 「いや~、流石はヒナちゃん♪ 従姉妹として鼻が高いわ~♪」


 アユミはヒナタの活躍を喜んでいた。


 「……く、おのれヒナちゃん!」


 リンドウが悔しがる。


 「いやいや、ヒナちゃんの所為じゃねえだろ?」


 トラゾウがリンドウにツッコむ。


 「そうですよ、悪いのはヒナちゃんではなくリンドウさんです」


 シカメものっかる。


 「アユちゃん、ヒナちゃんってどんな男子?」

 「ヒナちゃん? めっちゃ、神様に好かれる良い子なんよ♪」


 ヨシノにヒナタの事を尋ねられて答えるアユミ。


 親戚で交流があり、チヨコも含めて一緒に修行もした事があるのでヒナタの得意な属性や魔法について教える。


 アユミによって、チーム西の面々にヒナちゃん呼びされているヒナタであった。


 「悔し~~っ!」

 「ほらほら、お菓子食べて元気出して~♪」

 「プリンもありますよ~♪」


 チーム南の控え膣では、悔しがるセンリをマヤとステラが宥めていた。


 「う~ん、ちょっと優勝は厳しいかな?」

 「いえ、まだ剣術も相撲も他の競技もありますから♪」

 「トヨコのそう言う、ポジティブな所は良いね♪」


 タマミとトヨコの二人は、次はどうしようかと語らう。


 「……うううっ! ごめん、みんな~~~っ!」


 チーム北の控室でコマは正座で反省していた。


 「腹空かして失速とか、しっかりしろよ!」


 がっしりした体型に茶髪のお団子頭のトモコがコマに苛立つ。


 「全力出し切っちゃったんだね、コマちゃん」


 プラチナブロンドのショートボブ眼鏡っ子で、羊娘のサオリは苦笑い。


 「他のチームも落としてる所は落としてる、ここから上げて行こう♪」


 さらさらとした長い黒髪をなびかせて、頭頂部に鹿の角を生やした美少女のユキが拳を握って気合を入れつつ微笑む。


 「そうですよ、鮭が何度も川を上るように頑張りましょう♪」


 ピンク色のおかっぱ頭のチエも前向きに発言する。


 「そうだな、私が女子相撲で勝てばまだ目もあるはず!」


 トモコも胸の前で手を合わせて気合を入れる。


 「じゃあ、牛乳を飲んで景気を付けよう♪」


 いつの間にか反省を終えたコマが、人数分のグラスに牛乳を入れて仲間達に配る。


 チーム北は全員で牛乳を一気飲みして、気合いを入れた。


 各チームが控室でそれぞれ過ごす中で三種目目の競技、剣術の選手が発表される。 


 「さて、第三の種目は剣術です♪ 東西と南北で戦い勝った組が決勝で一二を争い負けた同士で勝負して三位四位が決まります♪」


 兎が試合の形式を説明すれば、客席から歓声が上がる。


 「いざ、尋常に勝負でござる♪」

 「……桜八流おうはちりゅうヨシノ、参ります」


 白い鶴の装甲を纏ったツルコが二刀を構える、ピンクの狐の装甲のヨシノは一刀。


 「根元流こんげんりゅう、トヨコ! いざ参る!」

 「南の暴れ牛、厄介ね? 短刀術、ユキ!」


 南北の対決は、赤い牛の装甲を纏い大太刀を大上段に構えるトヨコ。


 白い鹿の装甲を纏い、短刀の二刀流でトヨコと相対するユキ。


 闘技場が変形し中央で分けるように、試合のフィールドが仕切られた。


 「先手必勝、羽ばたきの構え! 鶴翼一閃っ!」


 大の字のように両腕を広げて突進するツルコ、ヨシノの眼前で二刀を振り下ろす!


 だが、ヨシノは舞い散る桜の花弁となって姿を消した。


 「ふ♪ 化かされぬでござる♪ 抱卵の構えっ!」


 ツルコは素早く旋回し二刀を交差させて、吉野の一撃を受け止めた。


 「狸と一緒にしないでくれる? 春風の太刀っ!」


 野球のフルスイングばりの横薙ぎで刀を振るうヨシノ。


 「見事な剛の剣、されども拙者は花も嵐も踏み越えるでござる♪」


 ヨシノの一撃を受け止めたツルコ、二人の周囲の空気が一気に冷え込む。


 「……これは、足が凍った?」

 「足を止めさせていただき申した、この間合いで決めさせていただく氷室十字ひむろじゅうじ!」


 ツルコの氷の刃が十字を描き、ヨシノを斬る。


 ヨシノの装甲が弾けて武装が解けた事で、ツルコの一本勝ちとなった。


 「推して参ります、猛火呵成もうかかせいっ!」


 爆発と共に突進したトヨコ、その姿は暴れ牛。


 炎が燃え盛る大太刀を、重さなどないが如く連続で振るい打ち込む。


 「……くっ、馬鹿力ね!」


 トヨコの猛攻に、ユキは防戦一方であった。


 短刀に電撃を纏わせて受け続けるも反撃に出れないと感じたユキ。


 ならば、捌いて流そうと避けて見る。


 ユキが後ろを取ったと思いきや、トヨコが止まりフルスイングで後方へと大太刀を振るって来た!


 「猛進するだけが根元流じゃありません!」

 「ちいっ! カンナムツベッ!」


 ユキはバックステップで飛び退きつつ、電撃を纏った短刀を投擲した。


 「飛び道具でも負けてません、チェイヤーッ!」


 トヨコが大太刀を大地に立てれば、地面が燃えてえぐれ火山弾の如く飛び散る!


 飛んで来た土の塊に短刀を防がれたユキ、獲物を落としたのが彼女の運の尽き。


 追撃に来たトヨコに面を打たれてユキは敗北した。


 東西南北の勝敗が決まり、壁が左右に開く。


 「それでは、一位と二位は東南で三位と四位は西北で決していただきましょう♪」


 兎の言葉に従い、ヨシノとトヨコの位置が入れ替わる形でそれぞれが相対した所で壁が閉じて再度試合の場が仕切られる。


 「音に聞こえた南の剛剣、相手に取て不足なし♪」

 「東の秘剣、我が猛火で打ち破ります!」


 ツルコとトヨコ、生まれや育ちは違えども剣を愛する乙女同士。


 双方得物を構えて熱気と冷気を放出し、ハイテンション真っ向勝負と試合を開始。


 「負けたままじゃ終われない、そちらもでしょ?」

 「同感、三位でも北にポイントを持って帰りたい!」

 「最下位は嫌なのも同感ね!」


 ヨシノとユキも気合を入れて装甲を纏い、風の刃と雷の刃がぶつかり合う。


 ツルコとトヨコ、猛火と猛吹雪がぶつかり合えば爆発が起こる!


 互いに激しく刃をぶつけ合う二人、どちらも仮面の下で笑っていた。


 「楽しいでござる♪ 何と攻め害のある御仁か♪」

 「ええ、そちらも中々の腕前ですね♪」

 「されど、勝負は付けねばならんでござる♪」

 「この一撃で、決めて見せます!」


 猛火の一刀が振り下ろされ、吹雪の二刀が切り上げられる。


 「……お見事でござった♪」

 「ありがとうございました」


 ツルコの切り上げ打ち落としたトヨコの切り下ろしが、勝敗を分けた。


 一位はチーム南、トヨコ・ナンシュウの手に渡った。


 ヨシノとユキ、こちらも互いにトリッキーな戦い方が得意な二人。


 どちらも互いの技を出し合い避け合いで、舞い踊るように戦っていた。


 「こちらも、この一撃で決める!」

 「行きつく所は同じ!」


 疾風の如く駆け抜け横薙ぎの一閃を振るうヨシノ。


 迅雷の如く間合いを詰めるユキも胸の前で交差した短刀を振るう。


 両者、同時に交差して切り抜けるも装甲が弾けて倒れたのはヨシノであた。


 試合が終わると共に、万雷の拍手が鳴り響き選手達を讃える。


 一位はチーム南、二位はチーム東。


 三位はチーム北、四位はチーム西と言う結果で剣術の競技は幕を閉じた。

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