第14話 メリー退場
「さ~て、魂と体のコピーは取ったから死んでも大丈夫♪」
アジトに戻ったメリーは、鏡の前で衣装チェックを行う。
私服のレザージャケットとレザーパンツではない悪の幹部っぽい服装だ。
軍の士官が着るような白い礼服、軍帽はなく顔は黒い眼元だけのバイザー。
上着の上には黒いマント、昔の組織から持って来た備品だ。
「あの組織、幹部の礼装だけは良かったのよね出世した日に逃げ出したけど♪」
逃げた理由は自分が出世した日が、ヒーロー達が本部に殴り込む前日だったから。
メリーは末期の組織に用はなかった。
「それじゃ、この世界をネタにした配信の最後は自分で戦って見たで」
はた迷惑な悪の配信者メリーが、ヒナタ達の世界に挑む。
「お二方、お待ち下され~♪」
「そこは馬に聞いてくれ」
「ツルコ様も良い姿勢ですわ♪」
「拙者も馬術は嗜んでござるよ~♪」
ツルコが白馬を操りヒナタとチヨコを追いかける。
三人が馬を走らせているのは、彼ら以外人気のない馬場。
ツルコが戦神馬の
「ふふっ♪ 白雪も拙者に懐いてくれて来ているでござる♪」
「冷気を感じますわね、白雪ちゃんから」
「多分、属性が水なんだろうな?」
「それではお二方。並び直した所で駆け出しましょうぞ♪」
「ど真ん中一直線、ぶれないなツルちゃんは外周から追いかけろ赤炎っ!」
「黄雷ちゃん、内周で決めますわ♪」
冷気を纏い地面を凍らせ、ど真ん中を走る白雪。
外周から追う赤炎の熱気が、氷を溶かして焼野に変える。
放電しながら内周を走る黄雷。
戦神馬の好きなように走らせるヒナタ達、三騎三様でコースを駆け抜ける。
馬達が満足したのか、動きがゆっくりとなりやがて止まる。
荒れ果てたコースは、ヒナタが変身して空から再生の光で照らして修復した。
「さて、一休みだな♪」
変身を解いてヒナタが仲間達の下へと降り立つ。
「お疲れさまでござる♪ では、ここの馬房をお使い下され♪」
「はい、人もお馬もご飯ですわ♪」
「チヨコ殿のお弁当が楽しみでござるよ♪」
「ツルコ様の分も合わせて、重箱五段重ねを三つですわ♪」
語り合いながら、馬を馬房へと連れて行くヒナタ達。
馬達を房の中に入れたら、馬の餌をメジホなどの神器を操作して召喚する。
「ツルコ様の神器は印籠型ですのね♪」
「然り、メジホと同じ機能もござるよ♪」
「形は違えども、似た機能はあるんだな」
互いの神器を見せあえば、ホログラムのように神器から霊獣の映像が浮かぶ。
「あら、ラーバードさんは相変わらずですね?」
「
「やれやれだぜ、これだから鳥達はよう?」
霊獣達の会話にたじろぐ三名。
「いや、仲はともかくどうされたんですか?」
ヒナタが霊獣達に尋ねる。
「そうそう、拙者達三人は仲良く稽古してたでござるよ?」
「もしや、何処かで事件ですの? 急いでお弁当を戴かないと!」
チヨコが不安そうに尋ねる。
「いや、これは弁当どころじゃなさそうな話だぞ?」
ヒナタは嫌な予感がする。
「その通りでごめんなさい、海上遊園地が危ないのよヒナタちゃん!」
「オウカデラックスパークですのっ!」
「大変でござるっ! お二方、霊獣武装をっ!」
「合点承知だ、いくぜチヨコ♪」
「戦いの後は三人でシーで遊ぶでござる♪ お財布は心配めさるな♪」
「私とヒナタ様、年間パス持ちですわ♪ シーのお花広場でお弁当ですわ♪」
「いや、遊ぶのは後にしようぜっ!」
三人は変身すると、馬房からも変身した戦神馬が出て来る。
赤炎と黄雷は龍馬の姿。
ツルコの白雪は、氷の装甲を纏った軍馬だ。
三人の纏獣者達は、愛馬に跨り空を駆け出した。
彼らが目指すのは、オウカデラックスパーク。
オウカ湾に浮かぶ人工島で、島一つ丸ごと遊園地やホテルの観光地。
雰囲気づくり重視で、船や飛行機や魔法などでしか行けない孤島。
夢と希望の島の中心、デラックス城の尖塔に降り立つメリー。
「オ~ッホッホッホ♪ 平和をむさぼる愚民達、最悪の悪夢を見せてあげるわ♪」
高らかに加害を宣言するメリーに驚きつつも喜び叫ぶ観光客。
演出ではなく、本当に悪の怪人登場に驚きつつ警戒態勢にですスタッフ達。
「貴様、何処の怪人だか知らないデチがパークとお客様は僕達が守るデチ!」
「そうよ、パークの平和は私達が守るわ!」
「僕も悪い奴らは許せな~い」
「ポッポ~ッ! 鳩は平和を守る為に戦うぜ~っ!」
現れたのは四体の着ぐるみマスコット。
パークのリーダー、青い蝙蝠デッチ―バット。
パークのヒロイン、白い蝙蝠プリチーバット。
緑の雪男、グリーンフット。
武闘派の鳩、ポッポー。
四体は、ショーの小道具でしかない玩具の剣を抜いて叫ぶ。
「あ~ら、出たわね資本主義の下僕共? 私はショーの悪役より強いわよ♪」
メリーはマスコット達に対して悪役ぶると、己を闇に包んで変身した。
「我が名はメリーナイトメア♪ 恐れおののき、絶望しなさい♪」
軍服風の衣装から、黒いボディスーツにバイザーグラスを被った姿に変わる。
「皆、剣を合わせて魔力を流すデチっ!」
「わかったわデッチ―♪」
「マスコットスパークだね~♪」
「信じるぜリーダー?」
マスコット達が、剣を抜き切っ先を重ねてメリーへと突き出せば光線が迸る。
「ふん、避けるまでも無いわね? お返しよ♪」
マスコット達の光線にびくともせず、腕を振るい紫色の衝撃波を放つ。
だが、その衝撃は突如生まれた氷の壁に阻まれた。
「それ以上の狼藉は許さんでござるっ!」
「パークの皆様、仁によりお助けに参りましたわ♪」
「こいつは本物の害来者です、避難をお願いしますっ!」
空から現れ愛馬から飛び降りたヒナタ達。、戦神馬達は主の見せ場だと空気を読んで空へと立ち去る。
「君達はユナイターデチね? ありがとうデチ♪」
「避難は任せて、後はお願い♪」
「僕達の代わりにやっつけて~」
「悔しいが頼むっポっ!」
マスコット達は、バトンタッチだと戦いはヒナタ達に任せて避難誘導に専念しながら退避する。
「さあ、我等ユナイター
「パークの平和は守り抜きますわ♪」
「メリー、貴様の悪行もこれまでだ!」
武器を構えるヒナタ達。
「出たわねヒーロー共、こっちこそこれまでの怨み晴らしてやるわっ!」
メリーが背中から蝙蝠の翼を生やし、手から鉤爪を生やして突っ込む。
「その進撃、止めて見せましょうぞ!」
ツルコが刀を十字に組み、メリーの前に出て吹雪を放出する。
吹雪がメリーを凍てつかせるも、メリーの体から噴き出した闇の炎が氷を溶かしツルコに対して前腕を肥大化させて鉤爪を振るう。
「ぐわっ!」
「キャッチですの!」
吹き飛ばされたツルコは、チヨコが受け止めヒナタが前に出る。
「その邪悪の炎は、我が炎で撃ち破るっ!
刀だけでなく全身に、正義の心を燃やしたヒナタ。
刀の刀身は巨大な火柱となり、炎の鈍器がメリーへと振るわれる。
メリーの全身が炎に包まれながら吹き飛ばされ、パークの城の入り口を破壊する。
「負けてたまるもんですか~~~っ!」
燃やされて壁に叩きつけられても手に入れたスーツの再生力で立ち上がるメリー。
四つ足になり、四メートルほどの黒い金属の羊の獣形態へ変化する。
「そう言う形態変化は負けフラグなんだよ、日光浄化剣っ!」
「うるさ~~~~~いっ!」
ヒナタが刀に白き輝きを纏わせると同時に突っ込んで来たメリー。
「その暴魂、善なる命へ生まれ変われっ!
ヒナタも突っこみながら刀を横薙ぎに振るい、メリーを両断する。
「い、いや~~~っ! 痛くないけど、魂に光が染み込む~~っ!」
ヒナタに両断されたメリーは、金色の光の柱と共に天へと昇った。
「おお、美しい♪ 悪党でさえも救うとは、お見事でござる♪」
「流石はヒナタ様ですわ♪」
「別に優しさとかじゃないよ、あの技は神様の力で強制的に善性の命へと生まれ変わらせる悪党への嫌がらせだ」
納刀してからヒナタは、両腕を突き出して金色の光を放ちパークの破損した所を修復して行きメリーの襲撃が起こる前の状態へと戻して行く。
「さて、それではパークで遊んで帰りましょうぞ♪」
「楽しみのお弁当ですわ♪」
「……いや、ごめんチヨコ変身が解けそうっ!」
「皆様、急いで帰りますわね!」
「掌返しが早いでござる~っ!」
「私、ヒナタ様ファーストですの!」
チヨコが巨大な茶釜に化け、ツルコとヒナタを吸い込み空へと飛び立つ。
ヒナタ達が倒したメリーの魂がどう生まれ変わるかは後のお話。
一方、棺桶のあるカラオケボックスの部屋事イービルイージーの地下室。
棺桶の蓋が開き、コピーされた方のメリーの魂は新たな体と共に目覚めた。
「ちょっと、私美少女に変わってる!」
メリーは甦った自分の体がゴスロリパンクの美少女の姿だと言う事に驚く。
「やあメリーちゃん、新しい体はどうかな~♪」
「マスター、何してくれてんのよこの変態っ!」
「いや~♪ 君の飲み代計算したら足りなくてね、家で働いてもらうから♪」
部屋に入って来たマスターにより首輪を付けられたメリー。
「嘘っ、お金なら払うから勘弁してよっ!」
「駄目だね、配信な家の酒場の張エルで頼むよ♪」
こうして、マスターのいたずらによりメリーはヒナタ達の世界から退場となった。
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