第9話 戦神馬でGO!
ヒナタとチヨコは、日々の学業や家業に励みつつ戦神馬の世話もしていた。
「ヒナタ様と過ごす、子馬ちゃんのお世話が癒しですわ~♪」
「何か、肌の色と質が変わって来てるな? 鱗か?」
「そう言えば、顔が少しづつ龍のようになってきているような?」
ヒナタ達が真面目に世話や訓練をしてきた効果か、子供用の自転車サイズから中型バイクほどのサイズに育った戦神馬。
ヒナタの担当は、赤い肌に変わり炎のような毛に帆の鹿の角の龍っぽい頭。
チヨコの担当馬は肌の色は黄色で髪はオレンジ、こちらも龍っぽい頭だ。
「これは、戦神馬と言うのは
「だな、まあただの馬じゃないとは思ってはいたがな」
「まあ、一緒に育て行こうな
「ですわね、
ヒナタ達は、名付けた担当馬の頭を撫でると戦神馬達は喜んだ。
一方、次元の狭間の隠れ家ではメリーが頭を悩ませていた。
「悔しいけれど、シノギはそこそこなのよね次こそは勝ちたいけど」
パソコンで動画編集をしつつ、悪事の企画を練るメリー。
ヒナタ達の世界以外にも、古巣の地球で怪人を暴れさせるなどをしていた。
悪事はビジネス、儲けが見込めない悪事は控える。
それがメリーの生存戦略、ヒーローに負けはしても狩られはしない方法。
時々他の悪党とも組むが、下積みでいた組織を抜けてからは完全フリーランスだ。
悪党もヒーローのように、コミュニティがありSNSがあり繋がりがある。
「仕方ないわね、配信のコメントからネタでも拾って見ますか?」
悪の動サイト、邪悪チューブを見てネタを探すメリー。
誘拐、デスゲーム、爆破、悪事のジャンルを探る中でメリーは閃いた。
「閃いた♪ 今回は交通系の悪事で行くわ♪」
メリーが邪悪な笑みを浮かべて両手を叩く。
「あ~ら、あいつらの世界にも結構暴走族はいるのね♪ 使えるわ♪」
メリーが上着の内ポケから取り出したのは、紫色の髑髏を模したガジェット。
悪の万能携帯端末イービルフォン、シンブレインと言う悪の組織が製造販売している何処の次元や時代でも使えるチートアイテム。
時と場所と現地の司法や金融機関に縛られない。
製造販売元のシンブレインには使用料やらを払えばならないが、必要なコストだ。
割り切りもメリーの特技、イービルフォンの方でヒナタ達の世界の魔導ネットにアクセスしニュースサイトを探り暴走族について調べるメリーであった。
「ヒナタッ! 頼みがある、交通安全のマシンに張る札に祈祷してくれ! チーム全員分だ!」
「わかった、今日だな? チームの皆に風呂と洗濯徹底で」
「ああ、勿論だ! マジックレースの基本だぜ♪」
「エンタロウさん、大丈夫ですの?」
教室でヒナタは、友人のエンタロウに祈祷を頼まれたので引き受けた。
エンタロウは火の精霊と人間とのハーフ、実家は各種
タヌキ山地区の自警団兼、魔導バイクの走り屋チームのリーダーだ。
ヒナタとチヨコにとって、エンタロウは何気に小中から続いている幼馴染である。
「ヒナタ、チヨコ、勉強手伝ってくれ! 魔法高校受からねえと家の皆が免許取らせねえぞって、いじめるんだ!」
などと中学時代に言われて、チヨコは嫌がりながらではあったがヒナタはエンタロウも一緒に家の神社で受験勉強もした親友であった。
エンタロウがチームを作ってからは、時々祈祷を頼まれていた。
放課後、ヒナタとチヨコはエンタロウの実家の工場を訪れていた。
「やあ、ヒナタ君達♪ 弟達なら家の方のガレージだよ♪」
表で応対してくれたのは、白いツナギを着た風に髪が揺れると燃える赤毛の女性。
エンタロウの姉のマキコさん。
彼女に頭を下げて、神官装束姿のヒナタと巫女姿のチヨコが工場の裏に回る。
「あ、ヒナタ君達だチ~ッス♪」
青ブレザーの学生服を着た、黒髪アフロなノームの少年。
「おっす、チヨコの姉さん達はお世話になります!」
同じ制服を着たスキンヘッドのハーフオークの少年も挨拶をする。
「おう、来てくれたなヒナタ♪ 早速頼むぜ♪ お前ら、正座だ」
「わかってるっすよ、エンタロウ君!」
「チヨコの姉さん達に、舐めた真似できないっす!」
「掃除はされてますわね、ではヒナタ様どうぞ♪」
チヨコが赤青黄色の三台の魔導バイクが並ぶガレージの中、エンタロウ達を正座させると虚空から祭壇を取り出す。
「それでは、皆様の交通安全とご武運をお祈りさせていただきます」
柏手など諸々を済ませ、チヨコが用意した祭壇にヒナタが祈りを奉げる。
ヒナタの祈りの応えて、祭壇からテルコの映像が顕現しエンタロウ達やマシンへと加護の光の粒子を降らせて浴びせてから消える。
祈祷が終われば、エンタロウ達のマシンへ交通安全や厄除けの札を貼り付けて魔法のエンチャントを施す。
「「ありがとうございました!」」
エンタロウ達に見送られて帰るヒナタ達、二人がそれぞれの家の自室で休んでいると机の上のメジホが輝きで部屋を満たした。
「厩舎、赤炎達に何かあったのか?」
「心配ですね?」
天居場所が見慣れた神世の厩舎だったので、戦神馬に問題でも起きたかと思った。
「違うわ、湾岸道路で事件よ!」
「二人の友達が巻き込まれてるぞ!」
ラーバードとキンチョウが現れて告げる、その言葉に二人は頷く。
いつの間にか、赤炎と黄雷が二人の傍にいた。
「「霊獣武装っ!!」」
ヒナタ達が変身すると同時に、龍馬達も肥大化し全身に鋭利で金属質な装甲を纏って変身していた。
「よし、行くぜ赤炎っ!」
「黄雷ちゃん、頼みますわ!」
馬に跨り手綱を握ったヒナタ達。
主人の言葉に従い馬達が駆け出せば、次元の道が開けた。
「くそったれっ! ヒナタの祈祷で守れてるがヤベえ!」
「イービルフールの奴ら、化け物になりやがった!」
「ヒ~~ッ! 燃料が持たないっす!」
湾岸道路で必死にバイクを走らせて逃げるエンタロウ達。
ライバルチームとのレース対決のはずが、相手が巨大な車の怪物になるとは想像もできなかった。
彼らへの救いの手は、対向車線から飛んで来た火の玉と黄色いプラズマだった。
「な、何だありゃ!」
「もしかして、ユナイターか!」
「……た、助かったっす! 祈祷のお陰っす!」
「よし、このままサービスエリアまで突っ走るぞ!」
エンタロウが走り出したので、チームメイトは付いて行く。
「どうやら逃げてくれたな」
「エンタロウさん、勘は良いですからね」
「じゃあ、あいつらの代わりにぶっ飛ばそうか!」
「はいですの♪」
ヒナタとチヨコは、戦神馬を走らせ巨大な違法改造社の災厄獣に立ち向かう。
モーター災厄獣は唸りを上げ、ライトからビームを発射して攻撃する。
ビーム攻撃は、ヒナタ達を包むバリヤーに幅案れて霧散化する。
「避けるまでもない!」
「馬に蹴られて、吹き飛びなさい!」
敵の攻撃をものともせず突進し、モーター災厄獣を馬に蹴らせて道路から海岸へと吹き飛ばす。
ヒナタ達も敵を追いかけ、馬に空を飛ぶと馬から立ち上がりジャンプする!
「赤炎、頼むぜ♪」
「黄雷ちゃん、お願いしますの♪」
ヒナタとチヨコの命に応じた戦神馬達、それぞれが口を開けて炎と電撃のブレスを吹いて主人達を包み込む。
「行くぜチヨコ♪」
「はい、ダブルブーストキックですの!」
ヒナタとチヨコは、炎と雷のエネルギーを纏いモーター試薬獣に断罪のキックを叩き込むと海の上で身動きの取れない災厄獣は大爆発を起こして消滅したのであった。
反動で跳躍すれば、二人の戦神馬が主人を再び背に乗せて空へと浮かび上がる。
「月が綺麗ですわね♪」
「チヨコの方が綺麗だ、これにて一件落着だな♪」
三日月をスポットライトに浴びて、ヒナタとチヨコは夜空をタンデムして神世へと帰還したのであった。
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