第5話 本当の自分


 あのリアルタイム告白から、ネットの盛り上がりはヒートアップし。動画も全部消して、おさらば……とはいかなくなってしまった。ネガティブな発言が多いのだろうなあと思っていたのだが、腹を割って話したことと私たちのこのどうしようもないほどに青臭い関係になぜか好感度が上がってしまった。


 しかし、制服が映ってしまったことでリアルバレしてしまい自宅がファンに突き止められてしまった。


「キャーアキ君超かっこいいじゃん!」

「リコちゃんと同じ学校?リコちゃんも制服姿超かわいい!」


 ファンが何度も学校や自宅にやってくるので、周りで有名人になってしまった。 有名人だとバレると周りも手のひらを返したように、イイネと言ってくれる。結局人の『イイネ』なんてその場その場の気分やノリでつけてたものなんだなと思った。


 そう思ったとたんに、人からの『イイネ』も誹謗中傷もどうでも良くなってきた。

 だって、どうせこのボタンを押したり書き込んだ翌日にはそのことすら忘れてる人が大半なんだろうから。


 私は私に、アキはアキ。自分が『イイネ』だったらいいのだ。そして、吹っ切れたのもあり、お互いの両親にもことの内容をすべて話した。


 ずっとネットで友達だったこと、クラスで時折しんどい思いをしていたこと。その中で同じ趣味の人がいてうれしかったこと。自分の好きを表現する楽しさ。人からのバッシング、そのせいで自分の『好き』を辞めようと思ったけれど、山田君がやめないでくれと言ってくれたこと。そして、中には自分の『好き』に素直でいることで、その行為を好意的に見てくれる人もいたこと。


 それらをまくしたてて全部全部話した。まだ学生の、子供の小さな経験だったけれども。それでも一生懸命に考えたことも。


「はあ……そんなことがあったのねえ……」


 当然、顔出しでネット配信をしていることにたいそう怒られたものの、自分たちの夢や苦しんでいたことも伝えられ、数時間にわたる説教以外にお咎めはなかった。


 アキは女装がバレたことで何か言われるかと思っていたが、実はもうバレでいたようで、


 「まあ……あんたの人生好きにするのが一番よ」


 で済んでしまった。


 「う、うるせーよ、バーカ。勝手に口だすなよババア」

 「何?私もコスプレするよッ?いいの!?」


 アキのお母さんも実はなかなかの肝っ玉らしい。この息子にしてこの母ありというのか、その逆というのか。私の母はおっとりしたもので、


 「一緒の趣味があるなんていいわねえ~」


 なんていうほのぼのとしたものだった。


 「そうそう、別にいいじゃない別に法律に反してるわけでもないんだから。『自分の好きに素直になる』それってとってもいいことよね」


と言ってくれた。自分の好きに素直になる、その言葉で私とアキは顔を真っ赤にして二人見つめ合ったのだった。




 「『自分の好き』に素直になる……ね」





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幼馴染が女装系YouTuberだった 有田よよ @arita5963

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