第3話 女装系配信者とのコラボ!開始!

 それからアキと私は私の家でたくさんおしゃれを楽しんだ。あき…アキラは学校や今までのひねくれたイメージと全く違った。むしろネット上でずっと仲良しだった


 アキとして私と接してくれた。

 どちらも長年付きあっていたはずなのに、私は表面上の彼をずっと見ていたのだと


 非常に反省したのだった。

 

 コンビニで一緒に新作の話題になっているスイーツを食べてみたり、学校の勉強をやったり、ダイエットだ!って足が細くなる筋トレをしてみたり、メイクの新作の色を試してみたり。とっても楽しかった。


 同性の友達とも同じように遊んだりしていたはずなのに、自分の「こだわり」を隠さずに話せることはとても気が楽であった。


 私の好きなアーティストのココシャネルの話を延々してみたり。メイクアップアーティストの動画を一緒に見て、討論したりなんかは皆とできなかったことだ。


 アキもオタクなことを周りに隠してコスプレをしていたので、気にせず好きな漫画の話をいくらでもしてもいい相手がいることが嬉しいようだった。

 

 私はあまり詳しくなかったのだけれど、アキが笑顔でしゃべってくれるのが嬉しかったのでずっとうん、うん。と聞いていた。


 どうやら最近は好きな漫画で好きな女の子のキャラがイケメンとくっつきそうらしい。その展開がたまらなくピュアで大好きなんだと力説してくれた。


 そういえば、アキはどっちが好きなんだろう?今まで深く考えたことなかったけれど一応女の私と部屋でずっと二人きりだけど、イマイチ恋愛や危機感みたいなものを覚えていない。


 「ねえ、今更だけどアキって男の人が好きなの?女の子が好きなの?別に私は気にしないから言ってよ」


 「え?は?え?なんだそりゃ」


 私は大変怒られた。コスプレイヤーの中では「好きな物」の表現として男でも女のキャラをやる。というのは割とよくあることらしい。


 女装と同性愛者とコスプレイヤーとかわいいもの好きは違うけれど、どれかくくれるものでもなくいろんなものがまじりあっている。そう言われたが、なるほど確かにという気持ちだ。


 だって私も女だけれども、少年漫画は大好きだし格闘技も見る。可愛い女の子の写真を見るのが好きだ。それのどこがおかしいのだろうか。


 女の子の恰好は「表現」として好きなので異性が好きという気持ちはある。というのもなるほどという気持ちだ。アキもそこは勘違いされやすく、なかなか伝わらない人もいると困っていた。


 ネットで自分が男だとこっそりと同じオタクの人に話したけれど、何度も勘違いされるので、もう女ということにしていたらしい。


 「それは……たしかに大変だね」


 「だろ?だから誰にも言いたくないってのわかるだろ?」


 そうなのだ。私たちはもう友達で、互いのことは十分にわかっていたつもりなのにそれでもまだ分かり合ってなかった。


 それではもう驚きで。


「やっぱり、『自分で言わないと』ダメ、なんだね……」


 はあ……とため息が出た。


 でも、たくさん肺から息が出たら、たくさん息を吸いたくなってきた。たくさん吸ったら元気が湧く。


「よし!もっと色々やってこうよ!」

「は?何?」


 もっとたくさん『言う』をやろう。私は携帯のムービーを自分たちに向けた。



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