A-side:2-2
ティーンだった頃のチャーリー・パーカーにシンバルを投げつけたのは、ドラマーのジョー・ジョーンズ。パパ・ジョー・ジョーンズだったと言う。
では、私に。キーボディスト・廣川克己とそのバンド『穢土』に小さなシンバルを投げ込んだのはどこのどいつだと言うのか? そいつはきっと嫌味で、アドリブ至上主義の自称ジャズマンで、クリント・イーストウッド監督作品『バード』の愛好者だったのだろう……とまで推測をするが、これは悪意による推察であり、実際には複数人で企んだものかもしれないし、イエス・キリストもガンジーも驚くような善人が、私の演奏に悪魔の姿を見出したのかもしれない――分からない。
あの時。小さなシンバルが矢野の足元で金属音を鳴らした時。私はそれがかの有名なジャズマン、チャーリー・パーカーの逸話を下にした行為であると言うことに気がつくのに幾分かの時間がかかった。そうした逡巡から私の指は止まり、演奏は中止となった。
バード。かの伝説的ジャズマン、チャーリー・パーカーがパパ・ジョーのシンバルをどのように捉えていたのか……それは、定かではない。けれども少なくとも私にとって、投げつけられたシンバルのその軽薄な、けれども重々しい意味合いを持つあの音は、私と音楽との間に或る種の線を引く、象徴的な存在として私の記憶の奥底に焼き付いて、今もまだ離れずにいる……。
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