第240話
私たちは別室へと案内された。
なんだか大きな場所だ。
体育館みたい。
そこで、土下座をしてきた女性が、この世界の置かれている状況について説明をしていってくれた。
「――そういうわけで、この世界は現在様々な世界の人たちから襲われ、あちこち領土を奪われています……。だから、守るために我々は他世界から戦力を召喚したのです。……他の国のように、我々は自自分たちの世界から戦力を呼び寄せることはできません。……それはまあ、この世界が我々の世界だからです。どうか、お願いします! ワタシたちに力を貸してください!」
女性は……この世界の神様らしい。
神様、といっても私たちの世界のように崇高な存在というわけではなく、話している感じとしては王様みたいな立場みたい。
まあ、王様は王様で別にいるんだけどね。
女神様に合わせ、騎士と王様がすっと頭を下げてくる。
……私たちの代表者は、なんか私が最初に話していたり、質問をしていたりしていたせいで私みたいになってしまっている。
だから、私は仕方なく皆の気持ちを代弁する。
「えーと……私たちって戦える人と戦えない人がいるんです。それに、戦争とか……そういうのは経験したこともなくて……魔物相手ならまだしも、人相手は……とても難しいです」
「気にしないでください! 他世界の人たちは別にこの世界に実体はありません! 相手を殺しても、元の世界に追い返すだけですので、いくらでもクビをはねても心を痛める必要はありませんから!」
「嫌だよ! 理由聞いてもそんなバッサリ割り切れないよ!」
「……た、確かにそうですよね……申し訳ありません。そちらに関しては慣れていっていただければ……」
「あの……すみません。私たちを元の世界に戻す方法はないのですか?」
「この召喚は契約型でして……。すべての世界の人間を追い返すか、この世界を救っていただく必要があります」
「理不尽すぎるよこの契約! もう……っ!」
「申し訳ありません! ですが、その条件をつけることによって皆さんには力が与えられているはずです……! その力があれば、皆さんはかなり戦えるはずなんです! ですから、お願いします!」
「……力?」
「はい! 皆さんには、ジョブが与えられているんです! 自分のジョブをみてみようとしてみてください!」
「……えーと?」
私たちは顔を見合わせ、不審に思いながら言われた通りにしてみる。
すると、あちこちから驚きの声が上がってくる。
どうやら、本当に見えるみたい。
私もふんっとねんじてみたら、眼前に文字が浮かんだ。
【妹】
「これはジョブじゃないよ!」
「ひっ!?」
女神様が怯えた様子で声を上げた。
リーラに案内されるがままに、近くの街へと向かう。
途中襲ってきた魔物たちはすべて仕留め、魔石を回収しては空間魔法にちょっとずつしまっていく。
さっき、シバシバが魔法使っている時に大量に魔力は確保していたので、魔力量は問題ない。
リーラが解体しながら肉を食べていたのだが、基本的に素材や魔石は金になるらしいからな。
今後、どれだけ異世界で生活するか分からない以上、これらは大事になる。
街にもうそろそろ着きそうだというタイミングで、シバシバが声をかけてきた。
「……我が今のまま近づくと攻撃される可能性があるからそろそろ人間に化けるな」
「そういえば、人間の社会に溶け込んでバイトしてたとか言っていたな」
魔物が人間に化けて生活をしていて、やっていることが生活費を稼ぐためというのは随分と拍子抜けする内容ではあるが。
普通、こういう場合、人間たちを破滅させるとかそんな大それた計画などが裏にあるものだろう。
「そうだ。というわけで、変身させてもらうからな」
そうリーラがいうと、ぼんっと煙が出てその姿が銀髪美女へと変わった。
獣人も受け入れられる世界なのか、耳と尻尾はそのままだ。
「どうだ? この姿だとチップをもらうことも多くてな」
「なるほど、合理的だな」
確かに、これだけの美女となればそれなりに注目されるだろう。
「そんじゃ、中の案内頼む」
「任せろ!」
リーラは笑顔とともに俺を街の中へと案内してくれた。
……街に入るには、
意外と近代的な街だ。
ファンタジー風ではあるのだが、建物の造りなどは非常に丁寧だ。
「ここは、【ウルカーヌ】という世界が管理している街らしい。どこの世界もわりと科学が発達しているらしく、私としては入るたびに驚かされるのだが、ジンの世界はどうなんだ?」
「俺の国はもっと近代的だ。たぶん、来たら目が飛び出すと思うぞ」
この【ウルカーヌ】で満足していたら、おそらくもっと驚くことになるだろう。
「ひとまず、ギルドにいって【ウルカーヌ】内で使えるギルドカードを作成したほうがいいだろう。あるとないとでは、行き来の難易度が違うからな」
「了解。その辺はリーラに任せる」
リーラはこの街に詳しいようで、迷うことなく歩き出す。
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新作書きましたので読んで頂けると嬉しいです。
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