第236話



『シバシバ、これから会えるか? ちょっと今行方不明の問題あるだろ? うちの麻耶も巻き込まれてな』

『うえ!? マイシスターが!?』

『ああ。だからちょっと調べたいことがあって協力してくれないか?』

『協力したい気持ちは山々なんだけど、私今日あんまり化粧とかしっかりしてなくて……会うのが恥ずかしというか……』

『大丈夫だ、気にしないから』

『そこはちょっとは気にしてくれない!? まあでも、マイシスターのピンチとなればいいわ。ちょっとこの後も用事があるから、お兄様の方からくることってできるかしら?』

『ああ、大丈夫だ』

『大学の方に来てくれない? 入り口で待っているわ』


 LUINEでそんなやりとりのあと、俺のところにシバシバの大学の住所が届いた。

 地図に丸印がついているので、そこに向かえばいいだろう。


「アリアは……服装どうする?」

「これが私の正装です」

「目立つんだけど」

「脱ぎましょうか?」

「着替えましょうかではなく?」

「ええ」


 そっちの方が目立つわ!

 流石にメイド服だと目立つが、この際仕方ない。

 俺はアリアとともに空間魔法を展開し、シバシバの大学へと移動した。



 入り口に到着した俺たちは、気配を消して隅の方で待っていた。

 しばらくして、大学内からシバシバがこちらへと駆け足気味にやってきた。


「お兄様、待たせてしまって申し訳ないわ」

「いや、こっちもいきなりきて悪かったな。それで、早速頼みたいことがあるんだけど……空間魔法を展開してみてくれないか?」

「え? どういうことかしら?」


 シバシバの質問は当たり前だよな。

 彼女に、アリアと話していた内容について伝えてみると、シバシバは納得した様子で頷いた。


「確かに……私の空間魔法は判明していない部分が多くあるから調べてみると分かるかもしれないわね」

「ちょっと、空間魔法を展開して欲しいんだが……」

「そうなると……場所を移したほうがいいわね……大学側に連絡してくるわ」

「……もしかして、結構忙しかったか?」

「大丈夫よ。冒険者活動の一環だと免除されることもあるのよ」


 シバシバが笑顔とともにそう言ってくれた。

 まだ分からないことが多くある状況だというのにここまで協力してくれるシバシバに感謝しかなかった。


「……ねぇあれって?」

「やっぱりそうよね……?」

「……もしかしてお兄ちゃんか?」


 ……シバシバと話していたら、さすがに目立ってきてしまった。

 一応気配を隠しているとはいえ、そもそも目立つ格好のやつがいるからな。

 俺がアリアをみると、何やら勝手に興奮していたので、無視しておいた。

 シバシバの連絡も終わり、俺たちは彼女の空間魔法で彼女のギルドへと向かった。





「それじゃあ、早速空間魔法を展開するわね」

「ああ、頼む」


 シバシバにお願いし、発動された空間魔法をじっとみる。

 ……いつも通りの空間魔法だ。ただ、俺が再現するときと違って継続して発動することができるのはやはり本家なだけはある。

 シバシバの空間魔法の出口は、今つながっていない。


「……シバシバ、しばらく展開したままで続けてくれるか? 俺が中に入って色々とみてみる」

「……ええ、分かったわ。ただ、こんな使い方をしたことはないから気をつけてちょうだい」

「ああ、分かってる。アリアはここで待機して様子をみていてくれ」

「分かりました」


 俺はシバシバが展開した空間魔法の中へと入り、歩いていく。

 ……中は、暗い。上下左右、自分がどちらを向いているのかもよく分からない状況だ。

 ただ、振り返れば出口のほうは見える。シバシバとアリアがいるので、それを確認しながら先を進んでいく。


 ……中に入りながら、魔力を探知する。

 ……何もない。

 ここまで魔力を感知できないことは初めてだ。

 まだ魔力感知に慣れていなかった昔を思い出す。


 最近は、それに頼りすぎていた部分があったな。目で見えるものがすべてではないが、目で見えないものもすべてではない。

 昔はもっと目で見えるものに頼っていたものだ。それはそれでまあ、反応が遅れてしまうこともあったんだけどな。


―――――――――――


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帰還した元勇者はVRMMOで無双する。〜目指すはVTuber義妹を推して推しまくる生活~

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