第235話
「心がけます。迷宮というのはそういうものですが、ルーファウスの元にいた研究者たちはそういうもの、で片付けることは嫌でした。まあ、実際世の中の研究者たちは皆そうですよね。そういうものだから、で片付けてしまっていたら研究者なんて必要ありませんからね」
「まあ、そうだよな。その原因がわかれば、地震とかみたいに予知できるかもしれないもんな」
「ええ。迷宮が発生する瞬間について調べるのと同時に、世界で本来存在していなかった魔力という物が持ち込まれたのはなぜなのか。それについて、研究者たちは調べていました」
迷宮の発生自体は魔力が集まった時にできるとかそういったくらいの認識はある。
ただ、もっと究極的にいえば、世界で一番最初の迷宮……つまりは魔力なんて言葉が架空の話でしかなかったときに発生した迷宮が、どうして発生したのか。
つまりは、世界で初めて魔力が観測されたとき、か。
「研究者たちはいくつかのネット小説を参考文献にして、調査を開始しました」
「おっと? 雲行きが怪しくなってきてませんか?」
「いえ、半分冗談半分本気でこの方針で調査を進めてみたところ、研究者たちはあることが分かりました」
「……ほんとか?」
「魔力は、別の世界から持ち込まれた……あるいは、紛れ込んでしまった、と」
「……別の世界、か」
突拍子もない話ではあるが、その可能性は否定できなかった。
今では当たり前に存在する迷宮だが、俺たちが生まれるより前はそれは本来あり得ないものだったんだからな。
「そして、先ほど発生した麻耶様を連れて行ってしまった魔力とヴォイドやブラックマンティスが生まれた瞬間の魔力が……非常に酷似していたのです。現在、アリアのデータベースで魔力を比較しての意見です」
「……つまり、さっきの空間魔法で取り込まれた人たちが魔物や新しい迷宮に関係しているってことか?」
「いえ……お兄様。ここでは、魔物が生まれた瞬間の話です。つまりは……あのヴォイドとブラックマンティスはどこからかこちらの世界に召喚された魔物ではないか、ということです」
アリアの言いたいことが見えてきた。
異世界からこちらの世界に何の目的でやってきたのかは分からないが、ヴォイドとブラックマンティスがこちらの世界に来た瞬間の魔力と同じ魔力だったんだよな。
そして、今現在麻耶たちのところにそういった魔物が発生しているということもない。
ただ、そこにいた人たちが消えたということは、
「ヴォイドたちが召喚されたように、麻耶たちが向こうに連れて行かれた、ってことか?」
「可能性としては大きいのではないか、と研究者たちは考え、調査をしていました。ただ、すでに彼らはある人によって壊滅させられてしまっていますので、調査はもう進んでいませんが」
「まったく、誰が壊滅させたんだか」
なるほどな。
仮に、アリアの話している内容で確定したとして……麻耶と、その他大勢の日本人たちを助けるためにはこちらから麻耶たちがいるはずの世界へと移動する必要があるんだよな。
空間魔法ならば、空間に干渉するので……もしかしたらできるかもしれない。
俺は試しに空間魔法を展開する。
……しかし、麻耶の魔力は感じられない。
俺の空間魔法はあくまでシバシバのを再現しているだけなので、効果時間も短い。
発動していた空間が閉じかけ、無理やり力でしばらくこじ開けていたが……調査はそれ以上続けられなかった。
「お兄様。アリアの索敵でも麻耶様の状態は確認できませんでした。申し訳ありません、アリアの推理が間違っていたかもしれません」
「いや、もうちょっとこっちの路線を調べてみても胃と思う」
実際、アリアの理論には結構納得していた部分もあるからな。
俺があの時感じた勘と合わせると、正解に限りなく近いのも確かだ。
「……シバシバを、頼ってみるしかないな」
本家の空間魔法であれば、さらに調べられる範囲も変わってくるはずだ。
今は大学だったか。シバシバに連絡をとり、会えるかどうか聞いてみるか。
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