第226話
「アリア、俺は戦闘に集中するから……解説頼んでもいいか?」
「彼女らはタイプIIですね。アリアのような自我は持たず、命令がなければ動けない旧式でございます」
「自我ないほうが良かったんじゃないか?」
少なくとも、敵組織側からしたら。
アリアがこんなことをやっているから、すべての敵のアジトが判明しているんだしな。
突っ込んできた戦闘型アンドロイドは、そこらの魔物とは比較にならないほどの速度だ。
玲奈より、少し劣るくらいの力かね?
だとしても、Sランク冒険者級はあるのだから、これが量産できるのなんて凄まじい。
俺はそいつらを、一撃で仕留めた。
「お兄様……素敵です!」
コメントを読んだわけではなく、アリアの感想のようだ。
「いいから、道案内を頼む」
「そちら右手曲がっていただければ、休憩室があります」
「まだ休む必要はねぇ。ルーファウスがいる場所を案内しろ」
「アリアとお兄様の情事を配信するわけにはいきませんもんね」
「嘘つくんじゃない」
俺が言われた通りに進み、道を塞ぐ扉を蹴飛ばしてあけると、一人の研究者然とした者がいた。
怪しい笑みを浮かべる彼は、俺が来ることを分かっていたようで待ち構えるように両手を広げた。
「ようこそ、ジン・スズタ」
……まあ、これだけ派手に突入していれば、向こうはわざわざ逃げ出さないだろう。
「なんだおまえは? ルーファウスか?」
にしては魔力反応が小さい。まあ、たぶん魔力を消しているだろうから、ルーファウスだとしても感じられないと思うけど。
ただ、彼の立ち居振る舞いから……ルーファウスとは思えなかった。あまりにも隙だらけなので、話に付き合わなければ一瞬で片付けられそうだ。
男はかけていたメガネをくいっと上げてから、笑みを強めた。
「私はルーファウス様ではない……が、ジンのことはよく知っているよ」
「へぇ、俺のことを?」
「ああ、チャンネル登録もしているし、キミの配信は全て見ている」
「ファンか?」
「違う。キミを倒すためだ!」
男は、大きな声で宣言する。
彼の言葉に合わせ、壁近くにいた一体のロボットが起動したのか、機械音をあげながら男の隣に並んだ。
……まだ、見た目などの調整はしていないようだ。
無機質なそのロボットは、見た目だけでいえばかなりの威圧感がある。
メガネを押さえながら、男はニヤニヤと笑みを強める。
「アリアがとられたことは想定外だった。だが、それは些細な問題だ。ジン、こいつはお前を倒すために開発されたロボットだ」
「わざわざどうも。でも、結局はアリアと同じくらいだろ?」
それなら別に、恐れるようなものではない。
しかし、俺の返答に男の表情はバカにするように歪んだ。
「ジン。アリアは汎用的に開発されたアンドロイドだ。戦闘型アンドロイドたちは、迷宮に合わせて調整できる優秀さがある。それはもちろん、人間相手でもそうだ」
「つまり、俺を倒すために、俺の弱点をつくために調整した、と?」
「そうだ。想定よりも早い対面になってしまい、見た目は不恰好だがね。本当はもっと可愛らしいメイドに仕上げたかったのだが……まあ、見た目はこんな無機質なものだが、それでも――貴様を倒すための力は十分にある」
俺がアジトへいきなりきたから、見た目を作り込む時間まではなかった、ってか。
「それは楽しみだな」
「その余裕がいつまで続くか……やれ!」
男が声をあげると、アンドロイドが動き出す。
俺の隣にいたアリアが、不安そうな声をあげる。
「……恐らくですが、彼のいっていることははったりではありませんよ。お兄様に関してはその攻撃力、速度、魔力などを配信などから確認して、それを押さえるための対策が施されています」
「配信の、ねぇ」
アリアの冷静な分析に、俺は迫るアンドロイドを見る。
「気をつけてください……お兄様。もしもお兄様が動けなくなったら……あっ、動けなくなったらアリアが大事に大事に看病してあげますので、思う存分戦ってください」
おい途中から目を輝かせるんじゃない。
体が動かなくなったらアリアに何をされるかわからないな。
そんなことを話していると、アンドロイドが一気に加速する。
瞬間移動……ではない。俺の呼吸のタイミングなどを見計らっての移動だ。
そういう体から力がぬけるタイミングを、完璧に読んでいるようだ。
さすが俺専用に開発されたアンドロイドだな。振り抜かれた拳を、受け止めようとしたときだった。
「お兄ちゃん! 攻撃かわさないで!」
麻耶の声が響いた。声が発せられたのは、目の前のアンドロイドからだ。
……麻耶の声を使ってAIか何かで再現したのだろう。
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