第225話

「る、ルーファウス様!」


 世間的には休日の朝という日に、部下の一人が大慌てで声をあげる。

 ルーファウスは眉根を寄せながら、その者をじっと睨んだ。


「なんだ、騒々しい……」


 ルーファウスの不機嫌さを込めた視線に、部下は一瞬怯むような様子を見せながらも、すぐに今起きていることを思い出し,声を上げた。


「今すぐ、避難してください!」

「……なんだ? どこかの国の協会連中にでも嗅ぎつけられたか?」


 ルーファウスはすでに自分が国際手配されていることを知っていたため、冷静は淡々と部下の焦りの原因について口にしていた。

 しかし、部下から飛び出した言葉は、全く別のものだった。


「じ、ジンです! ジンが直接乗り込んできたんです」

「ほぉ」


 部下の焦りようとは別に。ルーファウスは笑みを浮かべていた。

 ルーファウスは、挑戦者を受け入れるつもりだったからだ。



 大人しく、向こうが仕掛けてくるのを待つつもりはなかった。

 俺はアリアとともに、敵のアジトへときていた。


 アリアを通じて、敵の情報は手に入れられていたしな。

 全世界にいくつかアジトはあるようだが、まあ一つずつ潰していけばいいだろう。

 これまで、散々やられてきたのだから、こちらから仕掛けたっていいだろう。


 それに、アンドロイドたちは発見が遅れる可能性がある。

 こちらでできる限り、先に潰しておくという作戦だ。


 俺たちが動いている間に、日本にいる麻耶たちが危険に晒される可能性もあるが、そちらは冒険者協会とヴァレリアンに協力してもらっている。

 なので、こちらは後ろを気にせず動けるというわけだ。


 同時に俺は配信も行っていた。

 ルーファウスはプライドの高い男らしいからな。すべての拠点を潰して、なお見つからない場合は俺から逃げた、という証拠になるからだ。これはヴァレリアンの提案でもあった。

 何より、ヴァレリアンたちもこちらの様子を知っておきたかったみたいだしな。


「というわけで、今はルーファウスを探しにきたところだ」


〈……いや、いきなりなんだよw〉

〈相変わらずお兄様の配信はぶっ飛んでますね……〉

〈ていうか、お兄ちゃん。その隣にいる女性は誰だ?〉


 当然のようにその問いは来るわな。

 話す内容は決めていたので、さっさと俺が紹介しようとすると、カメラマンのアリアが先に口を開いた。


「アリアはお兄様の肉便器です」

「ふざけたこと抜かすんじゃない。こいつは戦闘型アンドロイドのアリアだ。ジェンスが所属していた組織のな」


〈え、なんでそれが今は一緒に行動してんだ?〉

                                                                                                     

「今はお兄様の大ファンだからですが?」


 アリアが笑顔とともにそう答えるのだが、これで納得してもらえるものなのだろうか?


〈理解〉

〈なるほどなぁ〉


 ……結構受け入れられてしまっている。

 いや、もちろん、〈意味わからん〉とかそういったコメントもあるのだが、大半は受け入れているのだが、うちの視聴者は結構おかしいのかもしれない。



 この空間にまともなのが自分しかいないことに絶望していると、早速、俺たちを出迎えるように数体の戦闘型アンドロイドが姿を見せる。


 アリアと違い、感情がないようだ。

 表情は一切変わらず、まさに機械と言った様子でこちらを見てくる。

 一応、皆の姿は少しずつ違うのだが、基本的な造りは同じ様に見える。


〈またなんかきた!?〉

〈こいつらはお兄様のファンじゃなさそうだな……?〉


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