第222話
ひとまず、アリアのことを冒険者協会へと報告すると、すぐに予定が組まれた。
ただ、流石に今からでは無理ということで明日の午前中ということになった。
まあ、俺もまだアリアのことで分かっていないこともあるしな。
急ぐことでもないので、ひとまず残りの時間でアリアの様子を探っていこう。
そんなわけで、ひとまずシャワーを浴びにいくと、さっと洗面所にアリアがやってきた。
俺がシャワーを止めて俺の服を漁っているアリアを睨むと、彼女は一瞥したあと堂々と漁りを再開する。
この状況で再開するのは度胸がすごいのか、諦めているからなのか。
「何やってんだ?」
「アリアはこの家に居候させてもらっている状況です。皆様のお力になるため、お兄様の下着を洗おうかとおもいまして」
「洗濯機で洗うから気にするな」
「いけません。洗濯機というのは案外汚れが残るものなのです。ですので、アリアが手洗いしようと思っています。決して他意はございませんから!」
この場面でそんなこと言われてもまったくもって信用ならない。
俺はタオルで部位を隠しながら、アリアの頭を引っ叩き、追い出す。
叩かれるたびに喜んだ顔をするのはやめてほしいものだ。
アリアの開発者は相当に歪んだ性格の持ち主なんだろうな。
その後も、アリアの行動は何度かおかしい場面はあった。
食事を食べさせて欲しがったり、あるいは食べさせようとしてきたり。
一緒のベッドへと侵入してこようとするなど、たびたび問題行動はあったが、ひとまず大きな害はなく翌朝を迎えられた。
「それじゃあお兄ちゃん、アリアさん。私学校行ってくるね」
「……ああ、気をつけてな」
ああ、麻耶と半日ほどお別れだ……。
彼女の立ち去る背中を残念な気持ちと共に見送っていると、隣に並ぶアリアも涙を流していた。
もしかしたら、アリアも俺と同じような気持ちになっているのかもしれない。マヤチャンネルのリスナーでもあるらしいからな。
案外、話が通じる部分もあるんだなぁとか思っていると、
「麻耶ちゃんを見送るというのは、なんというか娘を送り出すような気持ちですね。ね、あなた」
「勝手に結婚してくるんじゃない。ほら、俺たちも今日は外に出るんだから、まずはそのメイド服を着替えてこい」
「え? これは私の戦闘服ですが……」
「その格好じゃ目立つんだよ。美也にもらった服があるから、ほら着てこいって」
「わ、分かりました」
詳細については話していないが、知り合いが泊まるから服を貸して欲しいと頼んだら、快く引き受けてくれた。
アリアの体の詳細データを送ったところ、だいたい合いそうな服を用意してくれたので俺が空間魔法を使って回収してきたというわけだ。
アリアはまだ少し照れた様子であったが、そのまま二階へと上がる。
そもそも、アリアはメイド服なんて格好でよくもまあ監視なんてしていたな。
あんな格好のまま仕事をしているなんて、ふざけているとしか思えないが開発者は何を考えているんだろうな。
しばらく待っていると、アリアがとてとてと階段を降りてきた。
メイド服から私服へと着替えてもらったアリアはというと……なんだか恥ずかしそうにしている。
「どうしたんだ?」
「……い、いえその……こういった服を着るという想定はしていなかったもので……なんというか……慣れないといいますか……」
……なんだと?
つまりまあ、オシャレをして照れているってことなんだろうが、これまで散々恥じるべき行為、言動をしていたもののいう言葉なんだろうか?
頬を赤くしながら、壁に体を隠すようにしていた彼女に、俺は小さくため息を吐いた。
「大丈夫だ。めちゃくちゃ似合ってるから堂々としてればいいさ」
「……に、似合っていますか?」
「ああ、似合ってるぞ。街を歩けば確実に見惚れられるんじゃないか?」
「つまりそれは視姦されるということでしょうか? なるほど、つまりお兄様もアリアに着せて、この様を楽しみたいということでしたか?」
「その言動のほうがよっぽど恥ずかしいからな?」
まだ恥ずかしそうにはしていたが、それでも俺の隣に並ぶくらいには余裕も出てきたようだな。
とりあえず、準備が整ったので俺は協会に移動するための空間魔法を展開した。
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