第221話
抱き抱えるように部屋に入れたため、またしばらくショートしていたのだが今は落ち着いている。
冷静な様子でソファに座ったアリアと、家に帰ってきた麻耶がお茶を持ってきてくれた。
アリアはそれはもう丁寧に背筋をピンと伸ばした状態でソファに座っていた。
「えーと、アリアさんどうぞ。あっ、お茶とか飲むのかな?」
「はい。なんでも飲むことは可能です。そういう用途でも使えるようにとお兄様の体液もいつでも受け入れますからね。あっ、そんな強引に……っ」
「麻耶の前でその薄汚い口を開くんじゃない」
「大丈夫だよお兄ちゃん。あたしだってもうこどもじゃないからね!」
いやだよこんな場面でそのセリフは聞きたくなかった。
アリアが一人興奮した様子で麻耶もいつもの調子で話す物だから俺がおかしくなりそうだ……。
一度息を吐いてから、俺はアリアに問いかける。
「それでアリア。さっきの話に戻るが……ルーファウスがおまえたちを造って俺を狙っているのは本当のことなのか?」
「はい。その通りです。アリアも、お兄様を狙うアンドロイドの一体です」
「……そうなんだな。じゃあ、ここにきた理由も俺を狙ってなのか?」
「いえ、お兄様に面会したかっただけです。握手握手」
アリアが手を差しだしてきたので、俺も同じように出すとぎゅっと握ってくる。
さすさすと撫でてきて、それからどんどん顔が人に見せられないものに変わっていく。
……今も攻撃するチャンスではあるが、まるで仕掛けてくる様子はない。
「今まさに攻撃チャンスだと思うけど、何もしないのか?」
「アリアはお兄様を仕留めるため、丹念に丹念に研究を重ねました」
「ほぉ?」
「その結果、お兄様の大ファンになりました。あっ、頬ずりしてもよろしいでしょうか?」
鼻息荒く顔を近づけてくるアリアの頬を押し返す。
「……いや、やめろ。ていうか、おまえって……本当に戦闘型アンドロイドなのか?」
「はい。現在、ルーファウスの組織で開発された最新鋭の最強つよつよプリティーアンドロイドでございます」
にこりと微笑んだアリアだが、俺からしたら疑問が残る。
確かに、彼女の一挙手一投足に隙はない。
ただ、あまりにも発言が、行動がポンコツすぎる……っ!
こんなのが最新鋭といってもいいのだろうか? いやまあ、感情表現などを見ても凄まじいのはわかるんだけど……。
「最新鋭のポンコツなのか?」
「むっ、ポンコツではありません。自分でその場の状況から判断できるほどの決断力さえももつ優秀なアンドロイドなのです」
……まあ、すごいことなんだろうな。俺にはよく分からんが。
「先ほどからアリアはお兄様にあれもこれもと教えています。ですので、報酬を要求したいです」
「なんだ? オイルでも与えればいいのか?」
「私の燃料は魔力ですのでオイルは不要です。それとも、そういうプレイでしょうか? 口からオイル(意味深)を流し込むということでしょうか? アリアはそれでも構いませんが」
「しねぇよっ! だから麻耶の前で変なことを言うんじゃねぇ!」
「大丈夫だよお兄ちゃん! 何かあるときは言ってね! 私、友達の家に泊まってくるから!」
そこで物分かりよくしないでくれ!
アリアが期待するような目でこちらを見てくるので、頭を叩く。
「これはこれで良いものですね」
「……それで? 何が欲しいんだ?」
「ちゅーしてください。ちゅーです」
「しねぇよ馬鹿! もういい。ルーファウスが俺を狙ってるってことだけわかれば十分だ」
「はい。ぶっちゃけると、アリアが派遣された以外、現在の動きはありません。アリアの報告をまっている状況になります」
……なるほどな。
ということは、アリアの協力次第では、こちらから仕掛けることも可能ということか。
いつまた、皆が襲われるか分からない以上――こっちもいつまでも黙っているつもりはない。
とはいえ、いきなり仕掛けるには理由も必要だ。
……色々と相談したいし、あとで協会に話をしにいくとしようか。
「アリア。今の状況について、ルーファウスにはどのように報告しているんだ?」
「現在。お兄様を監視中でございます、とだけ」
「それなら引き続き、それでお願いできるか?」
「ちゅー」
「しないぞ。その代わり、しばらくはこの家で過ごしてくれてもいいからな? いく場所もないだろ?」
「お兄様の部屋に住み着いてもいいと?」
「部屋余ってるからそっち使え。とにかく、あとで冒険者協会に行って話したいこともあるから、しばらくはゆっくりしていてくれ」
「分かりました。お兄様、不束者ですが、よろしくお願いいたします」
丁寧に三つ指たてて頭を下げてきたアリアに、とりあえず頷いておいた。
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