第223話

 空間魔法を使い、協会へと移動すると、いつものように下原さんが出迎えてくれる。

 俺の隣にいたアリアをみて不思議そうにしていた。


「……あの、迅さん? 今日は重要参考人を連れてきたという話でしたが」


 そう言われると、アリアはじっと俺を見てから腕に抱きついてくる。

 腕に抱きついてくる意味は分からないが、かなりの力強さを感じる。

 そこは、さすがに戦闘型アンドロイドだ。


「ええ、連れてきましたよ。こちらの子がそうです」


 俺がそう言ってアリアを紹介すると、下原さんはまたもや不思議そうに首を傾げている。

 まあ、普通ならその反応になるよな。

 俺はちらとアリアを見ると、彼女は下原さんの方を見てからすっと頭を下げた。


「あっ、ども。アリアは戦闘型アンドロイドのアリアと申します」

「……え?」

「あと、お兄様のファン兼愛人です」

「最後のはこいつが勝手に言っている妄言なんで気にしないでください。とにかく、彼女が戦闘型アンドロイドなのは間違いないようなので、情報を共有したいです」

「……わ、分かりました。こちらも、ジェンスから引き出した情報がありますので、会議室にご案内しますね」


 下原さんはまだ動揺していたが、それでもさすがに俺の対応をすることもあるためか、慣れたものだ。


 下原さんとともに会議室へと向かうと、すでにそちらには会長と、ヴァレリアンの姿があった。

 会長はどこか険しい表情で、ヴァレリアンは気楽な様子で俺を出迎えてくれた。


「よう、ジン。今日はよろしくな」

「ヴァレリアンもいたんだな。会長も、よろしくおねがいします」

「……はい。それでえーと、何から話をすればいいのやら……まずはそちらにいる女性が……戦闘型のアンドロイドさん、ですか?」


 警戒した様子で会長がこちらを見てくる。ヴァレリアンは「ほぉ?」と楽しそうな様子でアリアを見ている。


「そうですね。彼女が俺を狙ってきたんで、捕獲した感じです。どこまで真実か分かりませんが、一応色々と情報を持っていますので、参考になればと思いまして」

「……そうですか。こちらも、ジェンスの記憶から情報を引き出すことに成功しましたので、それと照らし合わせて行きましょう」


 それなら、ちょうどよかったな。

 俺が頷いていると、アリアは少し不服げにこちらを見てきた。


「お兄様は、アリアのこと信用してないのですね」

「そりゃあ、敵のスパイの可能性もあると思ってるからな」

「確かに、アリアの立場からすればそうですが、お兄様への愛は本物ですのに。試してみますか? なんでもしますよ? あっ、お兄様、そんな、ダメです……こんなところで……っ」


 アリアは勝手に妄想で楽しみだしたので、俺は無視して席につく。

 会長とヴァレリアンもすぐにアリアについて理解したようで、俺と同じように対応すればいいと思ったようだ。

 下原さんだけは、困惑げに俺たち全員を見ている中、俺たちの話しあいが始まった。




「……やはり、ジェンスが所属していた組織をまとめているのが、ルーファウスで間違いないのですね」


 ジェンスから引き出した情報とアリアが提供してくれる情報は、一致する部分が多く、会長は深いため息を吐いていた。


「なぜ、ルーファウスはそんなことをしているのでしょうか……」

「退屈だからです」


 会長の言葉に、アリアが即座に答える。

 ヴァレリアンが、呆れたようすで椅子に深く腰掛けた。



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