第217話
俺は身体強化を極限まで高め、一気に足を下した。
俺の一撃によって爆音が響き、足元が崩れ落ちていく。
この階層の迷宮になると、さすがに俺も軽い力で穴をあけることはない。
びきびき、という音をあげると完全に割れ、次の階層が見えた。
すかさず俺は170階層へと移動すると、それからすぐに迷宮の天井が修復されていく。
「よし、なんとかなったな。というわけで、170階層到着だ」
俺は170と書かれた階層の入り口をカメラで写していく。
同時に、魔物を警戒して分身を生み出して周囲の調査をお願いしつつ、入口のほうへと向かう。
170、と壁に刻まれた文字の前にたった俺は、記念撮影としてピースをしておいた。
「というわけで、これで170階層に到着だ」
これで俺もギネスブックに並ぶことができるだろう。
そんなことをのんびりと考えていると、コメント欄にもいくつもの祝いの言葉が溢れていく。
〈おお、おめでとう!〉
〈ていうか、こんなに深い迷宮もあるんだなぁ〉
〈黒竜の迷宮はまだ転移できるからいいけど、転移できないような迷宮だったらマジでやばいよな〉
〈一体どこまでこの迷宮は続くのか……ていうか、100階層超えたあたりからは人間じゃ攻略できないような難易度だよな……〉
「おいこら。まるで俺が人間じゃないみたいな」
失礼なコメント欄である。
ていうか、玲奈だって最近じゃ戦えるんだからそれはつまり玲奈を化け物として扱っていることと同義だ。
〈これでアイドルの追っかけみたいなことをしているんだから世の中分からんなw〉
〈お兄様、170階層到着、おめでとうございます。大丈夫だとは思いますが、怪我だけはないようお願いします〉
「ああ、大丈夫だ。麻耶の配信が見られないようなことはしないからな」
さすがにここまでくると世界的に見ても未知の領域。
これまでも心配する声は多かったが、今ではさらに心配する声が増えている。
とはいえ、170階層から明らかに雰囲気が変わったな。
「中国にある170階層ある迷宮について聞きたいんだけど、どうして今はそこで攻略が止まっているんだ?」
〈あれなんでだっけ?〉
〈中国が最下層更新したからそこでとまったんだっけ?〉
〈いや、普通に難易度が高いからだったはず。黒竜の迷宮ほどじゃないけど、あそこは150階層くらいからSランク級の魔物が出てくるからな。それ以上はもう無理、ってことになった〉
……なるほどな。
もしかしたら、170階層で一段階魔物たちが強化されたのかもしれない。
だとしたら、この迷宮も似たような感じだな。
迷宮の創造主が何を考えているのか分からないが、何かしらの法則はあるのかもしれない。
まあ、分かったところで危険の判断にしかならないため、俺はもう深くは考えない。
そういったことは、迷宮専門の研究者たちが調査してくれるだろうしな。
そのとき。近くで雄たけびが聞こえたと思ったら、戦闘が始まった。
……分身たちから危険信号が送られてくる。
自分たちでは勝てない魔物が現れたらそういうように報告をさせていたが、まさかこの階層でいきなり遭遇するとはな。
「分身がやられそうなんで、ちょっとそっちの様子を見に行ってくるな」
〈え!? マジで!?〉
〈分身っていっても、お兄ちゃん大丈夫か!?〉
〈まあ、本体のほうが強いから大丈夫だろうけど、気をつけてな〉
さすがに、この情報だけだと心配されるよな。
俺はすぐさま分身たちを助けに向かうため、走り出した。
この170階層は普通の草原のような造りだ。
途中、背の高い木や岩があり、一帯が見渡せるわけではないが、それでも視界は良好だ。
その中で、分身たちはゴブリンらしい群れに囲まれていた。
こちらの分身は六体で、ゴブリンは十体。さらに戦闘音を聞きつけてか遠くからも集まってきている。
〈あれってゴブリンか?〉
〈ゴブリンに見えるけど、かなり動きが速いな……〉
コメント欄の言う通り、そのゴブリンたちの動きは洗練されている。まるで一流の部隊だな。
俺の分身たちと互角の速度だ。
分身たちも負けてはいないのだが、確かにこれではジリ貧だ。
分身たちは魔力をエネルギーにしているため、攻撃するたび魔力を消耗していく。
俺が造りだすときに与えた魔力を失えば消滅するため、無理な戦闘を繰り返すのはもったいない。
「んじゃ、分身たちを助けるか」
俺は地面を蹴って、一気に距離を詰める。
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