第218話


 戦闘中だったゴブリンへ近づくと、ゴブリンは即座にこちらに反応して持っていた短剣を振りぬいてきた。

 速いな。これまでの魔物ならば、この速度だと反応できていなかった。


 170階層……面白いな。

 ゴブリンの短剣をかわしながら、手刀で首を撥ねると魔物たちの注目が俺に集まる。

 一気に魔力を放出し、周囲の魔物たちの注目を集め、戦闘を開始する。


 数は十五体。

 分身たちには一度下がってもらい、魔力を回復してもらうことに専念するよう指示を飛ばしながらカメラも手渡す。

 撮影係を任せ、俺は地面を蹴った。

 接近してきていたゴブリンが四体。……この魔物たちはまるで脳内でも連結しているかのように無駄のない連携だ。


 それを潰すように、俺は魔力を四体にぶつける。だが、抵抗された。無理やり押さえつけるのは難しいか。

 この時点で災害級の魔物ではあるんだろう。とはいえ、抵抗に要した一瞬の隙へ、俺は近づいて拳を放った。


 心臓を貫いた一撃。ゴブリンはしかし、まだ意識があるようで俺の腕を掴んできた。

 俺が抜こうとすると、ぐっと掴んで押さえてくる。そして、他のゴブリンたちが迫ってきた。


「……執念も凄いな」


 とはいえ、俺だってまだ全力ではない。

 さらに力を籠めゴブリンの腕を引きちぎり、即座に回し蹴りを放った。

 近づいていたゴブリンたちを薙ぎ払って仕留めたが、休み暇はない。


 すぐに後ろからゴブリンたちが迫ってくる。……仲間がやられても動揺もしない辺り、本当に色々な意味でレベルの高い魔物たちだ。


 とはいえ、このゴブリンたちの能力なら殲滅するのに時間はかからない。

 敵の攻撃をかわし、こちらの攻撃を当てる。それの繰り返しでゴブリンたちを殲滅した。


 ……戦闘を終えてすぐ、また少し離れたところでゴブリンたちが再出現しているな。

 再出現までのインターバルがかなり短い階層のようだ。


 戦闘を終えたところで、分身たちがすっと土下座をしてきた。


「いや、そこまでは求めてないからな……とりあえず、次から一緒に行動する分身を増やしたほうがいいな」


 一パーティー六人での編成はそのままにしたとしても、すぐに援護ができるような距離で調査をさせたほうがいいだろう。


 分身たちは俺を神でも崇めるかのように手をあげている。

 とりあえず、しばらく放置してしまったコメント欄を確認する。


〈お兄様の戦闘素敵です……っ〉

〈今日もお美しいですぅ……っ〉

〈最高ですっ!〉

〈いや、お兄ちゃん強すぎるって……〉

〈もう次元が違うよな本当に〉


「とりあえず、今日の目標だった170階層はこんな感じだな。分身たちじゃ勝てないってことは、つまり本体がもっと強くなって強い分身を生み出す必要があるってことだ。しばらく俺はここらへんの階層で修行するから配信できないかもしれない」


 こう言っておけばマヤチャンネルを見続けて配信できなかったときの言い訳ができる。


〈修行って何するんだ?〉


「ひたすら魔物と戦い続けるだけだな」


 なるべく魔力を多く消費してだ。

 そうして自分の肉体を高めていくわけだ。

 もう少し強い魔物が出る階層のほうがいいのかもしれないが、ここは再出現までの時間も短いみたいだからそういった点を含めると効率はいい。


〈それも垂れ流しでいいから見てみたいな〉

〈確かに。別にコメントとか見なくてもいいからどんな感じなのか見たいな〉


「なるほどな。マヤチャンネルの登録者数の増え方次第だな」


〈なんで別のチャンネルの登録者数伸びて〉

〈別のチャンネルが祝うってこともあるけど、なんかそれとはジャンルが違うよなw〉

〈とりあえず周りに布教しないとな……〉


 そんなこんなで俺の170階層突破配信は終了した。




――――――――――――

こちらの作品書籍化します!

スニーカー文庫様から、3月1日発売になります!

公式ホームページはこちらです。

https://sneakerbunko.jp/product/322311000070.html


気にいった方、応援したいという方はぜひ予約、購入していただけると嬉しいです!

――――――――――――

新作投稿しました!

ゲームの悪役キャラに転生した俺が、裏でこっそり英雄ムーブで楽しんでたら、俺のことが大嫌いな許嫁にバレてしまった

 https://kakuyomu.jp/works/16818023213692307212

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る