第215話
〈怖いw〉
〈お兄様の怒り顔美しいです〉
まったく、こいつらは。
ため息を吐きながら俺はカメラを迷宮へと向ける。
「そんじゃまあ、まずは168階層からだな」
俺は事前に集めておいた魔力を使って、分身を召喚し迷宮を移動させていく。
それらを使って迷宮の探索と戦闘を行ってもらっていく。
カメラマンとして、俺の分身もいる。継続時間には難ありだが、これはこれで便利だ。
〈え、なにこれ……〉
〈初見なんですけど、力のある冒険者ってみんなこんな感じなんですか?〉
〈ていうか、これなんですか……? この階層ってSランク級の魔物が出るんじゃないですかね?〉
〈これはお兄様の持つ再現魔法の一つ、お兄様分身です。ちょっとお兄様には劣るけど、かなりの能力を持った分身だからね〉
解説してくれるコメントもいるので、あとはそちらに任せておけばいいだろう。
必要があれば俺も訂正するが、今のところは問題なかった。
〈ていうか、この階層の魔物はもうSランク以上の化け物だぞ……〉
〈外に一体でも出てきたら、マジでやばいからな〉
「確かに、この階層の魔物はかなり強いな」
出てくる魔物は、デュラハンに似た魔物なのだが、馬のような魔物に乗っている。
こいつらは分身を召喚するようなことはないのだが、戦闘能力が非常に高く、たまに分身たちがやられることもある。
なので、パーティーを組んで行動させていく。これなら、問題なく対応可能だ。
俺はコメント欄を確認しながらとぼとぼ迷宮を歩いていくと、ちょうど目の前で戦闘中のパーティーを見つけた。
「おっ、やってるな」
馬を操り、持っていた槍を振り回すのだが、俺の分身たちはすべてそれをかわしていく。
そして、魔力をぶつけるようにして攻撃をし、ひるんだところで別の分身が殴り掛かる。
しかし、攻撃はかわされる。反撃に槍が振るわれたが、こちらも当たらない。
その攻防を繰り返していくと、やがて分身の一体の攻撃が当たる。
そこで崩れたら最後。一気に全員が囲んでタコ殴りだ。
見事な連携だ。
魔物たちを倒し終えた分身たちがこちらに気づくと、決めポーズをとった。
うん、配信もしっかり理解しているいい分身たちだ。
〈お兄ちゃんの分身たち強すぎるだろ……〉
〈もう世の中の冒険者のかわりにお兄ちゃんだけでいいよな……〉
「おまえら、俺の負担をどんだけ増やしたいんだよ。こいつら維持している間も魔力消耗するんだからな」
まあ、別に枯渇するようなことはないが。
魔力は自分の体内で生み出されるもので、時間がたてば自然に回復する。
その回復量はやはり魔力が多い人のほうが多いのだが、空気中にある魔力を体内に取り込むことでも回復量をあげることはできる。
魔力をしっかり体内に取り込めるように呼吸をしている俺は、このぐらいの分身たちなら魔力が減ることはない。
……まあ、さらに数を増やすとさすがに減るとは思うが、それでもなくなることはないだろう。
俺は散歩気分で迷宮を歩いていると、分身たちから報告が届いた。
無事169階層につながる階段を見つけたらしい。
「おまえら朗報だ。169階層にいけるぞ」
〈マジかよw〉
〈今までもお兄ちゃんの迷宮攻略はやばかったけど、安定感まで化け物になったな……〉
〈あの……冒険者ってこんな感じで迷宮の攻略していくものなんですか……?〉
〈ほら、お兄さんのせいで冒険者の人たちがドン引きしてるぞ〉
「まあ、俺のやつは。コメント欄、誤解をとくように頼むぞ」
分身たちは169階層につながる階段の前で、左右に分かれて俺を待ち頭を下げている。
「いや、別にそこまでしろとは言ってないんだけど……」
そういうと、分身たちは顔を見合わせたあと、さらに深く頭を下げる。
こいつら、主をからかっているな?
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