第214話
前書き
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「さて、やるとするか」
いつものように配信の準備を終えた俺は、それからカメラを起動した。
すでに待機していた人たちがいるようで、コメントは一気に増えていく。
コメントは目で追えないほどの挨拶や質問で溢れていく。
〈今日の攻略で170階層目指すってマジですか?〉
〈さすがに大丈夫ですか……?〉
〈無茶だけはしないでくださいね……〉
心配するコメントがいくつも流れていく。
……結構心配されているんだな。
まあ、敵の能力と俺の能力についてはもはや視聴者たちにはどっちが上なのか分からないだろう。
「まあ、俺が大丈夫だと判断している場所までしかいかないからな。安心してくれ」
そうはいうが、それでどこまで皆の不安を拭いとることができたかは分からない。
現在俺がいるのは168階層だ。
デュラハンたちから奪い取った分身魔法を使えば、迷宮の攻略はさらに楽になったので一気に階層を進めたというわけだ。
168階層を示すため、入り口近くに刻まれている階層を映していると、コメントがさらに増えていった。
〈海外で一番深い迷宮って170階層じゃなかったっけ?〉
〈そうだっけ?〉
〈調べてきたら、そうらしいぞ? ギネスにも載ってたぞ〉
「らしいな。なんかちらっとマネージャーに話をしたら、迷宮を更新する際は配信したほうがマヤチャンネルが伸びるから配信した方がいいって言われたから今日はやろうと思ってな」
マヤチャンネルの宣伝になるのなら、やらない理由がないからな。
〈マネージャー完全にお兄様の操縦に慣れてるなw〉
〈マヤチャンネルも注目されるかもしれないけど、完全にお兄ちゃんのほうだろ〉
確かに、今日はいつも以上に人が多い気がする。
最近、あまりちゃんと配信人数までは把握していなかったが、平均で100万人程度だったのが、今はまだまだ増えている。
〈初見です。友人に紹介されました!〉
〈最近冒険者になりました! こちらの人が戦い方を教えてくれるっていう話を友人から聞きましたので〉
〈友人wまったく参考にならんぞw〉
〈おっ、初見も多いな〉
〈お兄ちゃん、テレビでも連日報道されてたからな……もう一般人にも知れ渡ってるからな〉
……確かにな。
もう外を出歩くとあちこちで声をかけられるようになってしまったので、シバシバの魔法がなければ大変なことになっていた。
一家に一台シバシバがあれば世の中はもっと便利だろう。
「戦闘指導に関しては、まあそれぞれのスタイルもあるからな。自分の動きやすいように調整していったほうがいいとは思うぞ」
俺が直接見て指導するならともかく、ここで全員に一律での指導は難しい。
あくまで技術的な解説をするだけならできるが、その技術だって人によって得手不得手はある。
シバシバや美也は自分の体を強化するのが得意だし、玲奈や凛音は、どちらかというと後衛から援護をするのが得意だ。
流花は魔力の隠蔽などが得意なようで、奇襲などが得意だ。
麻耶は天才だからか、なんでもできるタイプだ。ただ、ちゃんと訓練しないと器用貧乏になってしまうこともあるので注意が必要だけど。まあ、麻耶は可愛いからなんとかなるけど。
そうやって人によって個性は違うからな。それぞれの得意な部分を見つけ、伸ばしていくことが大切だ。
「とりあえずコメント欄全部拾うの無理だからな。目について答えたいと思ったやつは答えてやるくらいだからな」
目で追うこと自体はできるが、質問は山のように送られてくる。
この数を捌ききるのは無理だ。
〈とりあえずマヤの文字を入れとけばお兄ちゃんなら絶対反応するからな〉
〈それはいい作戦だなw〉
「それでしょうもない質問したやつは覚えておけよ?」
麻耶に関する文字はすべて拾っているのは事実だが、それを餌にされては困る。
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