第212話

「それならいいんだけど、まあ忙しいとか予定があったら言ってほしいからね。こっちばっか都合つけてもらって悪いし」

「まあ、気にすんな。頑張っている若者を応援するのも大人としての役目なんだしな」

「まあ、確かに迅は大人だけど。あーしだってもう大人だし」


 むすーっと美也が頬を膨らませながらこちらをジトリと見てくる。

 もうすでにその反応が大人、じゃないんだけどそこを指摘したらさらにすねそうだ。


「でもなんか自分より年下の人はやっぱりそういう視線になるんだよ。美也だって俺の麻耶とかを見たらそんなきもちにならないか?」

「いや、そもそも迅のじゃなくない?」


 美也の言葉は聞こえないふりをしておく。

 でも、恐らく俺の気持ちもわからないではないはずだ。

 なんというか、こう暖かく見守ってあげたいというような感じだ。

 麻耶はもちろんだが、流花たちもそうだ。

 彼女らが順調に成長していくのが、今は俺にとって一つの楽しみになっている。

 もちろん、一番の楽しみは麻耶の成長だけど。


「とにかくだ。若者の成長を見るのは楽しいもんなのさ」

「なるほどねぇ。そうそう。さっきも暇してるって言ってたけど、迅って彼女さんとかいないの?」

「いないけど、なんでだ?」

「いや、あーしたちの面倒見てるとか色々嫉妬とかされちゃいそうじゃん」

「いないな。そもそも、麻耶の配信見るのに忙しいからそんな時間ないしな」


 元々出不精なので、必要なこと以外で外には出ないし。

 学生時代には友人もいたが、今も連絡を取るほど親しい相手はいないわけだし。


 最近、女性と関わる機会が増えただけで、それまでは玲奈くらいしか関わりがなかったな。


「えー、そうなんだ。じゃあ、これから結婚とかも別にない感じ?」

「ない感じだろうなぁ。もう、そういう年でもないしな」

「あつ、玲奈待ちとか?」

「待ってねぇ」


 冗談めかしく言ってくる美也に全力で否定する。


「でも、まだ三十にもなってないでしょ? あーし的には、まだ大丈夫だと思うけど。いや、まあ早ければ早いほど色々とラクなのもあるかもしれないけど」

「一般人と芸能人だと違う場合もあるんじゃないか? まあ、どっちにしろ俺には縁のなかったことだな」

「じゃあ、今周りにいっぱいいるけど、付き合いたい子とかいないの?」

「いや、そもそも全員年齢差あるから、そういう目で見たことないからな。むこうだって教師と生徒、みたいにしか考えてないだろ」


 年齢でいうと10は離れてるからな。

 万が一があったらやばいだろ。


「いや、皆わりと本気で迅のこと――いや、これはわざわざ言わなくてもいっか。ライバル応援することになるし」

「どういう意味だ?」

「いや、まあ別にいいかな? それじゃあ、シバシバとかあーしくらいの年齢ならいいってこと?」


 そういって、彼女は自身の顔を指さしてニコリと微笑む。


「いや、それでも年齢差あるだろ」

「あるっていっても、五、六歳くらいでしょ? それなら普通じゃない?」

「普通なのかね? あんまりそういう話する相手いないしな」


 結婚した人が周りにいれば、平均的なこともわかるのかもしれないが、俺の交友関係の浅さではそれもない。

 疑問に思っていると、美也はこくこくと首を縦に振る。


「普通普通。ていうか、あーしの周りもさ。迅を紹介してほしいって子たくさんいるんだけど。どう? 紹介してほしい? モデルだし、皆いけてるけど?」


 からかうような様子でそう言って顔を近づけていた美也に俺は首を横にふって返した。


「いや、別に興味ないな」

「うん、まあ言われても紹介するつもりないし」

「いじわるか?」

「そういうのじゃないし」


 にこにこと楽しそうに笑っているが、彼女の言葉の真意はよくわからなかった。




―――――――――――

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ゲームの悪役キャラに転生した俺が、裏でこっそり英雄ムーブで楽しんでたら、俺のことが大嫌いな許嫁にバレてしまった

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