第207話



 レコール島に関しては、【バウンティハント】はもちろん、日本からも復興の協力をするそうなので、そのうち落ち着くだろう。


「まあ、だいたい今分かっていることはこのくらいだな」


 俺がそうまとめると、コメント欄はそれぞれ思ったことを書き込んでいく。


〈魔力増幅薬を作っているのって組織的な犯行なんだよな? ジェンスもその組織の人間みたいだし〉

〈やばい犯罪組織があるみたいだよな〉

〈なんかマジで物騒な世の中になってきたよな〉

〈最近魔力増幅薬使用者たちによる犯罪も増えてるよな? 協会や警察が処理のために動いているけど、犯罪者たちのレベルが上がっているの厄介すぎるわ〉


 ……それは確かにそうだな。

 この前の銀行強盗もそうだが、物騒だ。

 そして、こちらは能力向上のために魔力増幅薬を使うわけにもいかないため、単純に脅威度が高まっている。

 俺も麻耶の警備に力を入れる必要があるというわけだ……。


「俺としては、皆が狙われないか心配なんだよな」


 そう言いながら、流花、凛音、玲奈たちを見る。

 ……今回、ジェンスは俺がいない間に俺の友人たちを狙って仕掛けてきたのだ。

 むかつくが賢いやり方ではある。俺に勝てないのなら、まずは俺の周りの人を人質にしてやる、ということだろう。


「お兄さん……」


 流花がぽつりと呟くと、コメントも増えていく。


〈確かに、実際今回も狙われたわけだもんな〉

〈敵の組織のやり方がマジで汚いよな〉


「特に麻耶が心配だ……。ジェンスも完全に麻耶を狙いにきて、そのついでに一緒にいた子たちも巻き込んできたわけだしな」


 確実に麻耶が標的にされている。

 

〈確かに〉

〈マヤちゃん可愛いから絶対狙ってくるよな〉

〈マヤちゃんに何かあったら俺たちだって黙っちゃいねぇぞ?〉

〈ほんとそれな〉


「ていうか、こんだけ俺が注目されたのは、全部ここの黒竜が悪いんだよな。なんかムカついてきたぞ。もう一回ボコしにいってくるか」


 そもそも、俺はひっそりと冒険者生活を送っていたわけだ。

 そりゃあ、協会とかの取引を調べていけば、結構腕の立つ冒険者だとは思われていたかもしれないが、あくまでBからAランクくらいの素材を売りさばいていただけだし。


〈黒竜に対しての理不尽な怒りw〉

〈そもそも、お兄ちゃんがマヤちゃんに見とれて罠に気づかなかったのが悪いのでは?〉


 知らん。

 罠も含めて、すべて黒竜が悪いだろう。


〈俺たちからすれば、おかげでお兄ちゃんを知れたんだけどなw〉

〈そうそう〉

〈お兄ちゃんにとっては目の敵かもしれんが、俺たちからしたら感謝のほうが大きいなw〉


 ……まあ、実際黒竜のおかげでマヤチャンネルが伸びたわけでもあるので、なんとも言えないところではある。

 だが、それでもこれからさらに危険が迫るというのなら、考えものだ。


「とにかくだ。ひとまず、俺たちの置かれている現状はそんな感じだ。もしも、犯罪組織がこの配信を見ているのなら、狙うのは俺だけにしろ! いいな!」


〈お兄様……〉

〈さすがですお兄様〉

〈潔いな〉

〈おい、マジで周りに迷惑かけるなよ〉

〈マヤちゃんに何かあったら俺たちだって黙ってないぞ?〉

〈リンネちゃんファンとしては、俺もだ〉

〈ルカファンの俺だってな!〉


 コメント欄でもファンたちが肉壁になってくれると言ってくれているな。

 素晴らしいファンたちだ。

 

「あれ? あたしのファンは?」

〈レイナちゃんは……まあ、レイナちゃんのほうが圧倒的に強いし……〉

〈レイナちゃんがどうしようもないときはオレたちもどうしようもないから……〉

「えー、じゃああたしは守ってくれる人いないからダーリンの家に泊まりこもっかな? ね、ダーリン!」

「安心しろ、遠くで見張ってるから」


 玲奈はちょっとばかりむくれた表情を浮かべていた。



―――――――――――

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