第206話



「……」

「お兄ちゃんかっこよかったよ!」

「ありがとな!」


 麻耶は純粋に喜んでいたが、麻耶以外は結構驚いているようだ。

 視聴者たちも半分驚きながらという感じである。


 戦闘も終わり、この階層に平和が訪れたところで俺は背中を伸ばした。

 デュラハンたちは再出現まで結構時間がかかるようであり、ここからしばらく戦闘はない。

 俺はカメラへと視線を向ける。


「まあ、だいたいこんな感じだ。たっぷり魔力も回収したし、今後はこいつらでカメラ撮影もできるってわけだ」


 俺は数体生み出した分身にカメラを持ってもらいつつ、凛音たちの護衛も任せる。


 麻耶の周りだけは五体配置し、完全な防御態勢を作る。

 万が一があってはいけないからな。

 俺の警戒態勢を見ていた凛音がじろーっとこちらを見てくる。


「……いや、あのなんか麻耶ちゃんの周りだけ数多くないですか?」

「麻耶はこの中でまだ一番弱いんだ。そして、一番の天使なんだから魔物にも狙われるだろ?」


 魔物たちの美醜感覚は分からないが、俺が魔物だったら麻耶を狙う。

 だから、一番警戒しないといけない。


「……一番」

「…………天使」

「……む」


 俺の言葉に玲奈たちが反応した。

 じとーっと三人が見てきたが、俺はすぐにコメント欄へと視線を向ける。


〈この分身魔法滅茶苦茶便利だな……〉

〈この分身がいれば他の子たちも今以上に安全になるわけだし、いいことづくしだな〉

〈デュラハンいいな〉

〈いまさっき来てお兄様の戦闘に度肝抜かれてたんだけど、今ってもうレコール島とかジェンスの件とかって話しちゃった感じか?〉

〈まだだな。レコール島の戦いのときの感想とかその後の一件とか気になるな〉


 ……先程からちらほらと俺への質問が行われているんだよな。

 レコール島に関してはテレビ等でも報道されているが、それでも俺に直接聞きたい人たちもいるようだ。

 とはいえ、一番多かった質問はジェンスに関してだ。

 ……まあ、あんな戦闘を全世界に配信したわけだしな。


 日本語だけではなく様々な言語による質問が飛び交っている。

 日本語にわざわざ変換してくれている人もいるな。


「ダーリン、質問来てるけどレコール島とかジェンスの件ってどのくらい話せるの?」

「まあ、俺もあんまり情報はないんだけどな……」


 実を言うと、そこまで多くのことを話せるわけではない。あの配信であったこと以上の情報も俺のところにない。


「あっ、でも今協会の人たちがジェンスから情報を引き出そうとしてるんじゃなかったっけ?」

「ああ、そうだぞ。さすが麻耶は天才だなぁ」

「えへへ、ありがとう」


 何でも記憶を見ることのできる記憶魔法というものが使える人が海外にはいるそうだ。

 冒険者協会からその人へ依頼をし、情報を引き出してもらう……という予定らしい。

 ただ、情報を引き出そうとしていることは公開されているのだが、どうやって情報を引き出すかまでは秘匿事項である。


〈そういえば冒険者協会からそんな発表があったよな?〉

〈ジェンスが口を割ってくれればいいんだけど〉

〈お兄様、ジェンスってやっぱり魔力増幅薬使ってたの?〉


「ああ、使ってたみたいだな。今はその後遺症も出てるみたいだな」


 ……そのせいでまったく目覚めてないんだよな。

 目を覚ましたら自白してくれるかもしれないが、後遺症が原因なのかまったく目覚める様子がない。

 そもそも、魔力増幅薬を使用した人の中にはまともに言語が話せないようになってしまった人たちもいるわけで、仮に目を覚ましたとしてもどうなるか分からない。


〈やば……〉

〈Sランクでも上位の冒険者が使うと災害級のお兄様と戦えるくらいにはなるんだよな……〉

〈マジでやばいよな……〉

〈いや、それだとどっちがやばいんだ……?〉

〈チート相手にチートなしで勝てるんだから逆にお兄様のやばさも際立つよな……ヴァレリアンをぼこぼこにしてたし、もしかして世界一位よりも強いのか?〉

〈あと、最後に襲ってきたカワイイ人たちいたよな? あれってやっぱりジェンスの仲間とか?〉


 ……あの魔力反応がまったくない人たちか。

 魔力を抑えている、という感じでもないしなんなんだろうな。


「その正体含めて今調べ中だ。まあ、俺の配信で話すよりも先に協会から何かしらの発表があるかもな?」


 俺の配信は不定期だしな。

 実際、今俺が話している情報はすべてすでに協会から出ているものだ。


〈まあ、何かあっても話せないよなぁ〉

〈ていうか、そんな重要人物がこうしてのんびり配信している時点でおかしいんだよなw〉

〈今のお兄様はマジで日本の代表レベルだもんな……レコール島の人たちもめっちゃ感謝しまくってたよな〉

〈テレビでみたわ。同じ日本人として誇らしいわ〉

〈レコール島ももう落ち着いたんだよな?〉


「崩壊した建物とかはさすがにまだだけど、そこらへんも魔法技術を合わせればまあわりと早くは復旧するんじゃないかって話だな」


〈とりあえず、世界崩壊レベルの危機にならなくてよかったわ……〉

〈まあ、さすがにそのレベルになったらルーファウスも表に出てきてくれるんじゃないか?〉

〈ていうか、ルーファウスって世界ランキング一位の癖に未だに表にまったく出てこないって、クソだよな〉

〈今までもそうだったしな。もう数年表に出てきてないし、今お兄様がやってることのだいたいはヴァレリアンが代わりにやってたし〉


 みたいだな。

 超高難易度の迷宮が出現したときなどは、ヴァレリアンがだいたい対応していたらしい。

 そういうわけで、今【スターブレイド】が大混乱状態というのは、ある意味世界的危機ではある。

 ヴァレリアン自体は退院もできたらしく、そのうち日本に来るとは話していた。

 改めて直接お詫びをしたいと話していた。

 まあ、色々な意味で真面目なんだろうな。




―――――――――――

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