第205話



〈デュラハンって以前どっかのSランク迷宮のボスモンスターで出現してなかったっけ?〉

〈海外のどこかだった気がする……かなり強い魔物だよな?〉

〈災害級の人とSランク冒険者たちで組んだパーティーで攻略していたな……〉

〈……なんで日本にこんな超高難易度迷宮が存在するんだよ〉


 本当に、そうだな。

 この迷宮はどこまで潜っても未だ底が見えないほどだ。

 最初は100階層が一つの目標、次は150階層……だったというのに今では200階層でもゴールに届かないのではないかと思っている。


「デュラハン……事前にお兄さんから聞いていた話だと、魔力で部下を生成して攻撃してくるって……」


 俺は流花に解説をお願いしていた。

 撮影するにあたり、俺はこの階層を一人で様子見だけはしておいたからな。


 その流花の説明を示すかのように、デュラハンの周囲から黒い戦士たちが生み出されていく。

 魔力で作り出されたそれら分身たちからもデュラハンに並ぶほどの魔力を有している。


〈デュラハンやばくねぇか……?〉

〈分身魔法って自分の能力以下ってことが多いけど、なんかすごい強そうなんだけど……どうなんだ?〉

「……こ、これ、一体一体がデュラハン級の力を持ってるみたいですけど。お兄さん、大丈夫なんですか!?」

「まあ、大丈夫だ」


 俺はデュラハンが生み出した分身を殴り飛ばしながら、その魔力を回収させてもらう。

 同時に、俺は自分の魔力と練り合わせ、俺の分身魔法を再現する。

 俺の周囲に現れたのは、黒い影のような見た目をした俺の分身たち。

 まさに、影分身という見た目をしている彼らは、皆、麻耶のほうに向かって両手を振っている。


「おい、分身たち! 戦闘に集中しろ!」


 俺が叫ぶと、すぐに影分身たちは動き出す。

 向こうの分身たちをぶつかりあい、殴り合いが始まる。

 影分身たちの性能は、本体の三から五割ほどが限界のようだ。


 大した脅威ではないのだ。


 それはデュラハン側も同じであり、向こうはさらに魔力を作って生み出していくが、俺もそれに呼応するように影分身を生成していく。

 デュラハンの魔力は無尽蔵だ。100体近い影分身が生み出されたが、こちらも同じように数を増やしていく。


 だが、数は次第にこちらのほうが増していく。

 俺の魔力の方が多いことと、俺の分身たちのほうが強いからだ。

 こちらが一体やられるまでに、向こうは三体ほどやられているからな。


「……こ、これもう戦争みたいなんだけど」


 流花の引きつった声が聞こえてくる。

 確かに、そうだな。

 その指揮をとっていたデュラハだが、いつの間にか二体に増えている。

 

「デュラハン二体いますよ!」

「この階層にデュラハンってあんまり出現しないんだけど、なんか運悪いな」

「い、いやそれでもほら! 分身出してますよ! やばいですって!」


 凛音が慌てたように叫びながらもスマホをこちらに向け続けている。彼女はカメラマンとしての自覚が凄いな。

 新たに現れたデュラハンも、同じように分身を作って応戦してくる。

 そうなると向こうのほうが数的有利が取れていき、こちらの分身が少しずつやられていく。

 とはいえ、今でもまだこちらのほうが優勢だ。

 ていうか、分身たちの戦い方がかなりワイルドだ……。

 鎧をかみ砕いて破壊するんじゃない、まったく。

 なので、俺は冷静に状況を見守っていく。


「この分身たちって結構便利でな。最近では、凛音たちの護衛として使おうかと検討してたんだけど……さすがに災害級の冒険者となると苦戦しそうだよなぁ」


 あと、単純に長時間の維持ができないんだよな。

 分身は召喚してから30分程度しかいない。まあ、普通に戦闘するなら問題ないのだが、四六時中警備をつけるという部分では問題が出てくる。


〈これが護衛ってやばすぎるんですけど……〉

〈ていうか、このお兄さんの分身たちですでにAランク冒険者くらい強いんじゃないか? ……やばくね?〉

〈普通に国一つ落とせるレベルなんですけど……〉


 コメント欄もビビり散らかしているようだ。


「まあ、それはできるかもしれないが……他にも例えば、分身を大量に作れば、マヤチャンネルの視聴者も増やせるってわけだ」

〈一気に使い方が地味になったなw〉


 何を言う。一番大事なことだろう。

 さらにデュラハンがもう二体集まってきて、完全に互角。なんなら、少し不利なくらいだ。

 そして、最後の五体目がこちらへやってきて、デュラハンたちが俺を見た。

 分身を生み出しながらも、彼らは俺を真っ先に仕留めようとした。


 そして、五体が同時に地面を蹴って俺の眼前に迫り――そこで俺はこの階層全体を覆いつくした魔力で叩き伏せた。


「……ッ!?」


 驚いたような雰囲気がデュラハンたちから聞こえた。

 顔があれば、さぞ驚いた顔になっているのではないだろうか?

 地面に体を押さえつけながら必死に動こうとするデュラハンたちをさらに俺は押さえつける。


 それでも彼らは体を起こしてくる。

 俺はその様子を見て、まずは一体デュラハンを踏みつぶして仕留めた。

 その頃には残りの四体が魔力を弾き飛ばしていたが、俺は瞬時に距離を詰めて二体目、三体目を殴り飛ばす。


 自慢の鎧は粉々に砕け散っていて、デュラハンたちは消滅していった。


 残っていた最後の二体は、激昂した様子で背負っていた大剣を振り下ろしてきたのだが、その背後から拳が振りぬかれた。

 鎧を貫通する拳はいくつも生まれ、デュラハンたちは膝から崩れ落ちた。


「まあ、こんな感じで俺も元気だ」

〈元気すぎる〉

〈デュラハン五体連続討伐って……おい、さっそくトレンドに入ってんぞw〉

〈お兄ちゃんは相変わらずお兄ちゃんでした〉


―――――――――――

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