第193話




「ジンの暗殺に失敗したようだな」

「申し訳ございません」

「別にいい」


 ルーファウスの前には、女性の姿をしたものがいた。

 彼女はジェンスと迅が戦っている際に、迅を狙って攻撃した女性でありルーファウスたちが開発した戦闘型アンドロイドだ。


 魔力反応で感知されないよう細工のされた戦闘型アンドロイドたちは、奇襲に長けているのが特徴だ。


「おまえたち、バージョン2では対応が難しいのだろう。なら、最新型を使うまでだ」


 ルーファウスは彼女とともに新型の戦闘型アンドロイドが眠る部屋へと移動する。


 ルーファウスたちが造っている戦闘型アンドロイド「SkillmaidSM3」。


 現在これが最新版であり、この戦闘型アンドロイドには人間の遺伝子情報に組み込まれた魔力情報などを共有したことによって、他者の魔法を再現できるようにしている。

 まるでゲームのスキルのように様々な魔法を使いこなせる戦闘型アンドロイドは、革命的な発明の一つだった。


 その最新型をルーファウスは起動した。

 僅かな起動音のあと、目に光が宿りじっとこちらを見てきた。


「アリア。ジンの情報収集はどの程度進んでいる?」


 ルーファウスの問いに、アリアの目が開くと感情の薄い無機質な視線が返ってくる。


「ルーファウス様。現在、ジンの配信や戦闘記録をすべて確認。ヴァレリアン、レコール島までの戦闘を反復して確認中でございます」

「そうか。引き続き続けろ。恐らく、次の配信かテレビ放送で全力の戦闘が見られるはずだ。それを確認してから、命じられた通りに暗殺計画を実行しろ」

「承知しました」


 ルーファウスの命を受けた後、アリアは再びネットの海へと戻っていった。




 それから数時間が経過し、ルーファウスは再びアリアの元へと戻ってきていた。

 アリアを起動させたルーファウスは、それから彼女へ問いかけを行う。


「ジンの情報はどの程度集まっている?」

「鈴田迅について――すべて、インプット完了しました」

「では、彼の暗殺計画について話してくれ」

「鈴田迅。彼は、世界ランキング2位に浮上した冒険者です、その能力は正面から戦うにはあまりに危険です。彼は、身体能力はもちろん、再現魔法によってこちらの使用した魔法を即座に使用してくるため、魔法の使用は危険です」

「ああ」

「ですが、再現魔法に関してはこちらの魔法を見てからでなければ使用できません。彼の再現魔法は強力ですので、魔法を使用しての戦闘は危険ですので使わないほうがいいでしょう」

「それで?」

「我々はアンドロイドです。活動エネルギーはすべて魔力でありますが、埋め込まれた迷宮の核を用いた魔石から供給される魔力量は無限にあります。人間と違い、疲労やダメージによる制限もないので、基本的にはこの体力勝負に持ち込むのが良いと考えられます」

「暗殺、ではなく真正面から戦うということか?」

「はい。体力勝負に持ち込み、隙を見せたところに我々に登録されている『スキル』を使用し、彼に致命傷を与えます。ここで問題なのは、彼は多少の傷であれば自己治癒能力を高めて再生してしまうので、必ず意識を奪うような一撃を叩きこむ必要があります」

「……そうか」

「また、妹は巻き込まないほうが賢明です。彼女を巻き込んだ場合の鈴田迅の力は底が見えませんので」


 ルーファウスはそこまで問題なく思考できているアンドロイドに満足していた。

 この「SkillmaidSM3」はこれまでの2までとは違い、自分で思考する能力を有している。

 ある程度、命令の方向性さえ間違わなければ、このようにどこまでも知識を集め、解決するための方法を考えるのが特徴だった。


「私たちは魔力を抑え込むためのボディメイクがされているため、迅の得意な探知にもかかることはありません」

「そうだな」

「可能であれば、最初の不意打ちで決めたいと考えています」

「期待している。準備ができれば、勝手に仕留めてこい。ただ、死体は持ち帰れ、彼の死体は有効活用してやるからな。日本に入るための身分証はこちらで用意してある。準備ができたら迎え」

「かしこまりました」


 それだけを伝え、ルーファウスは部屋を立ち去った。

 ルーファウスとしては、結果がどうなっても構わないと思っていた。

 ただ、どちらかといえばアリアに失敗してほしいという気持ちがあった。


「この程度で、やられてくれるなよジン」


 より強い相手と戦いたい。そんな気持ちがルーファウスの心の奥底にはあったため、この程度のアンドロイドに敗北してほしくはなかったのだ。





 アリアは組織から用意された偽装の身分証を持ち、日本へと向かっていた。

 その間も、彼女は休むことなく、迅の情報を集めていき――。


 殺しの対象の情報をインプットしすぎたアリアの思考回路は段々とエラーを吐き始めた。


 暗殺対象を深く知りすぎた彼女は、


「――お兄様」


 いち早く迅に会いたいという気持ちを胸に、アリアは飛行機へと乗り込んだ。


 最新型の「SkillmaidSM3」は、自己学習機能を最大まで高め、人間のような感情までも再現できるようにしてあった。

 だからだろうか。

 アリアはちょっとポンコツだ。




――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

まだ次章が書き終わっていないため、一度更新を止めます。

できあがり次第更新していきたいと思いますのでしばらく待っていただければと思います。

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