第164話

〈……マジかよ〉

〈感知能力化け物すぎんだろ〉

「さっきのニンジャ。魔力反応まで消えるから気を付けたほうがいいな。皆も環境の変化を見逃さないように」


 足跡や空気の揺れなどから敵の大まかな位置は分かる。

 ニンジャは隠密性能は非常に高いが、個の戦闘能力はCランクの魔物程度だろうか?

 単純に相手するなら、サムライの方が厄介だな。


「だいたい魔物の特徴は分かったんで、ここからはショートカットしてくわ」

〈まさかw〉

〈マジでやるのか?〉

〈え? 何が始まるんだ?〉

〈ショートカット? どういうこと?〉

〈お、新規もかなりいるなw〉


 伝えるより見せたほうが早いだろう。

 俺は足を振り上げ、思い切り地面を蹴りつけて破壊し、二階層へと移動した。


〈ファッ!?〉

〈なんだこれは!?〉




〈お、新入りたちか?〉

〈ヴァレリアンとの戦いから新入りが増えたみたいだからな〉

〈新入りたち。言っとくけど、このやり方での迷宮攻略は危険だからな。誰もいないのを確認している場合以外は使わないようにな〉

〈いや、誰も真似できないだろこれ……〉

〈でもまあ、ヴァレリアン級ならできる可能性はあるだろ?w〉


 コメントの方できちんと注意喚起してくれているようなので、俺が伝える必要はなさそうだ。

 コメントもなかなか便利じゃないか。


 二階層に落下しながら、次に破壊するための魔力を準備していると、こちらへ魔力が集まってきていた。

 ……どうやら音を聞いて魔物たちが集まっているようだ。


 面倒だ。

 玲奈でもいれば雑魚処理は任せられるのだが、集まってきたサムライやニンジャたちに対して、俺は魔力の塊をぶつけた。


 俺の放った魔力によって全員が地面へと叩きつけられる。重力魔法、というものがあるがこれは似たような感じになっているな。

 魔力って便利。

 もちろん、効率面は非常に悪い。

 重力魔法で潰すのに1の魔力を使うとしたら、魔力だけならその数十倍はかかるはずだ。


 そんなことを考えながら、俺はさらに地面を砕いて次の階層へと降りていく。


〈やばすぎだろ……〉

〈”これが日本の冒険者の迷宮攻略なのか……”〉

〈”日本……怖い……”〉

〈”お兄様素敵です……”〉

〈おい、外国人が勘違いしてんじゃねぇかw〉

〈英語読める奴は二倍楽しめていいな〉

〈映像だけでもやってることが派手だからかなり受けてんなw〉


 次の階層、次の階層へと破壊して進みながらコメント欄をちらと見てみると、何やら勝手に盛り上がっているようだ。

 ていうか、本当に外国人が増えたな。それだけ、ヴァレリアンとの戦いが印象的だったようで、これはむしろこちらからヴァレリアンにお礼したほうがいいかもしれない。


 特に話すことなく勝手に視聴者も増えていってくれているようなので、ラッキーだ。

 

〈そういえば、ジパング迷宮って何階層がボス部屋なんだ?〉

「十五階層らしいぞー。ま、迷宮の急成長で変化していなければな」

〈十五かぁ〉

〈ってことは、地面壊していけばわりとすぐ着くな〉

〈またあっさりと迷宮攻略されちまいそうだなw〉

〈何も悪影響がなければいいんだけど、お兄様お気をつけください〉


 コメントには心配する声も多く寄せられている。

 もちろん、周囲を警戒しながら俺は階層を進んでいく。

 破壊、落下、破壊……と繰り返していくと、次がその目的の十五階層になった。

 先ほどと同じように十四階層の地面を破壊した俺は、そのまま次の階層へと降りるのだが……そこで異変に気付いた。


 俺の入室に気づいた迷宮が、ボスモンスターを生み出してくれているのだが……その数が三つだ。

 霧のようなものが集まっていき、姿を見せたのは……道中のサムライよりも強そうな甲冑を身に着けたサムライリーダーと呼ばれる魔物だ。


 ここまでは情報通りなのだが……なぜ三体だ?

 そのときだった。

 俺の私用のスマホに連絡が入った。相手は下原さんだ。





―――――――――――

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