第163話




 階段を下りながら、準備してあった配信を開始する。

 スマホで配信画面を見てみると……なんかすでに多くの人が待機していたようだ。


〈おっ、始まるか!?〉

〈お兄様! 今日はどこでどんな凄いことをなされるのでしょうか!?〉

〈ああ、お兄様! 早くその顔を拝見したいですぅ!〉

〈……最近、一部の信者たちがやばくなってねぇか?〉

〈まあ、信者たちを狂わせる魅力があるからなぁ、お兄様には〉


 配信を始めるとすぐに様々なコメントが来ている。

 やばいコメントたちは流し見ながら情報を集めていると、どうやら先ほどの報道陣の中にはまさに今、外の様子をライブ放送している場所もあるのだとか。


 なるほどな。だから、いつもより注目されていたってことか。

 簡単に言えば、テレビで宣伝してくれているんだからそりゃあ注目されるってわけだよな。


 コメントは色々とあったが、ひとまずは状況説明をする必要がある。

 俺は小さく咳ばらいをしてから、スマホをじっと見る。


「というわけで、今日は協会の依頼で暫定Aランク迷宮の攻略に来てます。んじゃあ早速攻略していきますかね」


〈開幕と同時に情報量が多すぎるんだが……〉

〈お兄様! テレビに映ってましたけど、マジですか!?〉

〈お兄様、今日も素敵です……っ〉

〈報道陣にクールな顔を向けていたお兄様の顔でご飯お腹いっぱい食べられます……〉

〈ていうかここって、ジパング迷宮じゃねぇか!〉

〈ジパング迷宮って何か、ニンジャとかサムライみたいな魔物が多く出てくるんだっけか?〉

〈たまにあるご当地迷宮みたいなやつだな。日本の迷宮にだけニンジャ、サムライとか花魁みたいな魔物が出てくるけどまさにここはそれだな〉

〈”ジパング迷宮! 他の人の動画で少しだけ見たことある!”〉

〈”ここの動画は人気だな”〉

〈”ただ、あのときは確か十人くらいのパーティーだったな? お兄ちゃんは一人なのか?”〉

〈”相変わらずのクレイジーニンジャだなw”〉


 ……どうやらこの迷宮は海外人気が強いみたいだな。

 いつも以上に外国人のコメントも増えている。


「”まあ、そういうわけだ。海外勢の人たちも、ちゃんとマヤチャンネル登録していってくれ”」

〈草〉

〈ノルマ達成〉


 それだけ返しながら、俺は階段を下りて進んでいく。


〈……当たり前だけど一人で攻略するんだな〉

〈……Aランク迷宮といえば、Aランク程度の冒険者が五人くらい必要じゃなかったか?〉

〈もっと言えば、Bランク冒険者もさらに数人な。Aランク五人、Bランク十人くらいは欲しい……がまあ、お兄ちゃんだしな〉

〈Sランク冒険者が三人くらいいれば、たぶん余裕で攻略できるが……まあお兄ちゃんだしな〉

「人を化け物みたいに言うんじゃないっての」


 コメントたちは好き勝手に話していたが、俺は一階層に到着して周囲を確認する。

 ……なんだか、嫌な感じの魔力だな。

 この魔力はこの前の銀行強盗たちから感じたものに似ている。

 迷宮からなぜ生み出されてるんだ?

 そんなことを考えながら一階層へと進むと、甲冑を身に着けた侍と黒衣の忍者っぽい魔物が現れた。


〈早速でたな、サムライとニンジャだ〉

〈お兄様、気を付けてください。サムライの刀マジでやばいんで! ニンジャは姿消して攻撃してくるし、短剣に毒塗ってあります!〉

「なるほどな」


 コメント欄に優秀な攻略情報を入れてくれる人がいるな。

 まあ、魔物の毒くらいなら問題ないっちゃないとはいえ、視聴者を不安にさせても仕方ない。

 その文字通り、ニンジャは一瞬で姿を消し、サムライが迫ってきた。

 サムライの攻撃は正面からかわし、鋭い蹴りを放つ。

 甲冑ごと破壊し、その腹部に穴をあけてやるとサムライは膝をついて倒れた。


「防具で身を固めた魔物とかは一点特化で攻撃するといいぞ。そんじゃ次は――」

〈でた、お兄様のまったくあてにならない解説〉

〈それお兄ちゃんにしかできない奴だからw〉

〈まあでも、ここまでじゃなくても参考にはなるから……〉

〈それができたら苦労しないんだけど……って話だけどなw〉


 俺はこちらに迫ってきていた姿を消したニンジャに向け、魔法を放つ。


「姿見えないと映像映えが悪いんだよ!」


 隠れていたニンジャへ、凛音からもらっていた水魔法をぶち当てる。

 それで体が濡れたニンジャは、シルエットだけではあるが見えるようになった。


「……っ」


 ニンジャから驚いたようなような空気が感じられたので、俺はニンジャの欠点を伝える。


「なんで気づかれたか分かるか? おまえ動いたとき空気が動いてんの。いくら姿見えなくてもこの世から消えるわけじゃないんだから注意しろよ?」


 最近、麻耶たちと戦闘訓練をする際、隙だったり癖だったりを伝えることが多いので、魔物相手にも言ってしまった。

 まあ、注意したところで次はないが。

 一気に距離を詰めて蹴り飛ばした。



―――――――――――

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