第155話



「なんかどっかのお兄さんみたいに変な感じですね」


 苦笑を浮かべながら有原がそんなことを言っている。

 有原の知り合いにそういう人がいるのだろうか?

 有原が苦笑を浮かべていると、佐藤さんは小さくため息を吐く。


「ほんとね……なんかうちのリーダーが集める人って変な人が多いのよねぇ」

「あはは、類は友を呼ぶ、ってやつじゃないですか?」

「ちなみに私は美也ちゃんのファンだからね」

「ありがとうございます」


 佐藤さんは鼻息荒く有原の手を握っている。

 有原はきっとこう思っただろう。

 「いや、あんたもじゃん!」と。

 そのあたり口に出さないのはさすがだ。

 ちなみに、麻耶たちのメンバーのリーダーは有原だ。年齢的なものもあるが、有原は結構冷静なほうだからな。


 麻耶と流花はのんびりしていて、凛音は慌てるとパニックになる可能性が高いからな……。

 もちろん、麻耶ののんびりは可愛いんだけど、リーダーはあまり向いていないと思う。いや、麻耶もきっとできるとは思う。できるとは思うからな……っ。お兄ちゃん別に麻耶を否定しているわけじゃないからな……っ。

 一人麻耶へと弁護していると、麻耶たちと【ブルーバリア】の人たちが動き出した。


「それじゃあ、そろそろ迷宮に入っていこっか」

「はい、お願いします」


 【ブルーバリア】も四人の冒険者がいて、麻耶たちと合わせて合計八人だ。

 これが、今回のDランク迷宮攻略のメンバーとなる。

 皆、今回のDランク迷宮攻略の上では問題ないくらいの魔力はあるな。


 シバシバが選んだメンバーだし、戦闘面も恐らくは大丈夫だろう。


 彼女らの様子を観察していた俺は、迷宮へと入っていく彼女らの様子を確認したところでその後を追っていく。

 距離はあけたまま、俺は足跡さえも残さないよう僅かに作った魔力の塊を足場にその後を追いかけていく。


 迷宮の足跡なんてすぐに迷宮の修復機能で元通りになるが、それでも姿を隠すことに最善を尽くしていく。


 体内の魔力も感知されないように抑えているので、やはり八人は誰も気づいている様子はない。


 今回攻略予定の迷宮は、転移石がないタイプの迷宮であり……攻略後は速やかに帰還する必要がある。

 先行は【ブルーバリア】のメンバーだ。彼女らが主に戦闘を行い、麻耶たちのグループは周囲の警戒だ。


 早速ゴブリンの上位種に囲まれていたが、【ブルーバリア】の面々は鮮やかな連携で仕留めていく。

 連携はかなりのものだな。

 あっさりと迎撃したところで、佐藤さんが有原へと近づいた。


「それじゃあ、次の戦闘は有原さんたちにお願いしてもいいかな?」

「任せてください」


 ……さて、問題はこっちだな。

 四人でどの程度戦えるか。事前に俺も調査をし、問題がないことは確認しているが……それでも不安はある。


 一応、推薦した立場でもあるため、露骨に足を引っ張るようなことだけはないようにと祈るばかりだ。

 有原パーティーが同じように魔物たちと向かい合う。

 

「それじゃあ、いつものようにやろっか」


 有原がそういうと、すぐに全員が動き出した。

 ……連携、というほどのものはない。

 麻耶、流花、凛音、有原。四人は現れたゴブリン六体とそれぞれが向かい合って戦闘を開始する。


 流花と凛音が二体をひきつけ、麻耶と有原がさっさとゴブリンを仕留め、他の人の援護に回るという感じだ。


 麻耶……今日もいいぞ! これが生配信されていれば、俺はそれはもうコメントを連続でしていたことだろう。

 麻耶はもちろんだが、他の人たちも動きに問題ない。


 ……ただまあ、やはりちょっと有原が苦戦している感じか。

 それでも、それぞれが目の前の敵を仕留めていく。

 比較的、集団を相手できる凛音が集まった魔物を水魔法で一掃し、戦闘は終了となる。


「……やっぱり、皆能力高いね」


 佐藤さんが頬を引きつらせていた。

 まあ、四人の年齢を考えればここまで戦えるだけでも十分だろう。

 そこは皆がしっかり努力しているからだろう。

 有原も、少ない時間ではあるがきちんと訓練は積んでいるしな。


 確実に、皆強くはなっているな。

 指導している立場として、喜びの気持ちもあった。

 一行が進んでいき、俺は景色に溶け込むようにしながら後をついていった。


―――――――――――

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