第154話
「もちろん、同行させてもらう以上、【ブルーバリア】の方で報酬は総取りしてくれて構わない。あくまで、こっちは戦闘経験を積ませられればそれでいいからな。……どうだ?」
一応、条件としては悪くないはずだ。
【ブルーバリア】としては少ない人数で報酬を獲得できるわけだしな。
Dランク迷宮ともなれば、150万円程度なので、仮に【ブルーバリア】が10人で攻略する場合、うちの四人メンバーを加えれば、6人で150万円が稼げるわけだ。
……もちろん、うちのメンバーが【ブルーバリア】の期待に応えられない可能性もあるわけだが。
シバシバはギルドリーダーの顔つきになり、冷静に状況を考えている。
「……確かにそうね。メンバーっていうのは、麻耶ちゃんとあとは誰なのかしら?」
「麻耶、流花、凛音、それと有原だな」
「有原っていうと…………この前お兄様と一緒に撮影をしていた人かしら?」
そういったシバシバの雰囲気が少し鋭いものになった。
「そうそう……ってなんでそんな目を鋭くしてんだよ」
「だって、なんだか非常に仲良さそうにしていたでしょう? ファンとしては、不安になるものなのよ」
じとーっとこちらを見てくるシバシバ。
……ファンというのはそういうのを気にするんだったな。
初めの頃は俺のほうが色々言われるのではないかと言われていたが、今ではむしろ逆である。
まったく、なぜこうなったのだろうか。
「別に何もないから。麻耶、流花、凛音はCランク冒険者くらいは戦えるが、有原はまだDランクくらいだな。一応、これからも訓練はつけていくからもう少し成長すると思うが戦力としてはこんな感じだ。大丈夫そうか?」
「ええ、ちょうどDランク迷宮だけど、Cランクに限りなく近い迷宮がいくつかあったと思うわ。その攻略に同行してもらう、ってことでいいかしら?」
「了解だ。あとで迷宮の詳細の情報をもらってもいいか?」
「分かったわ。LUINEのほうにPDFで送っておくから見ておいてちょうだい」
「ああ、ありがとな」
よし、これで皆のやりたがっていた迷宮攻略ができるな。
あとは危険がないかだけ俺が事前に調べ、当日も気配を完全に消して皆の後をつけていけばいいだろう。
俺が本気で気配を消せば、誰にも気づかれることはない。
迷宮攻略当日。
俺は最善の注意を払い、麻耶たちを尾行していた。
いつも以上に本気で気配を消しているため、誰も気付くはずはないのだが――。
「あれ?」
「どうしたんですか麻耶ちゃん?」
「なんだか今お兄ちゃんの匂いがしたような……」
「いませんけど、たまたま同じ洗剤を使っている人とすれ違ったとかじゃないですか?」
「うーん、そういうのじゃないんだけどなぁ」
……どうやら、麻耶の対お兄ちゃん感知レベルはかなりのもののようだ。
それでも、気づかれていないのだからまあ大丈夫だろう。
そうして彼女たちは待ち合わせ場所へとつき、そこで【ブルーバリア】のメンバーと合流した。
「本日はよろしくお願いします」
「「「よろしくお願いします」」」
有原が代表として挨拶をし、それから麻耶、流花、凛音の三人も頭を下げる。
四人の対応をしたのは、今回のDランク迷宮攻略を任された【ブルーバリア】の佐藤さんだ。
年齢は二十半ばほどだ。その佐藤さんは四人を見て、微笑を浮かべていた。
「よろしくね、みんな。えーとこっちが【ブルーバリア】のメンバーなんだけど……」
佐藤さんは苦笑とともに、控えていた三人を紹介する。
ただ、その三人の様子はどこかおかしい。
「マヤちゃん……本物……私の妹……っ」
「ルカちゃん……可愛い……」
「……リンネちゃん、いい」
「こらっ!」
佐藤さんが声を張り上げると、三人は正気に戻ったようだった。
……どうやら全員ファンのようである。
―――――――――――
ここまで読んでくださり、ありがとうございます!
『楽しかった!』 『続きが気になる!』という方は【☆☆☆】や【ブクマ】をしていただけると嬉しいです!
ランキングに影響があり、作者のモチベーションの一つになりますのでよろしくお願いします!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます