第142話
次の日。
浜辺にはさっそく事務所所属の配信者の人たちが全員集まった。
事前に資料を見せてもらったが、冒険者ランクとしては皆EからDランク程度はあるそうだ。
それも若い人たちが多いので、将来有望だ。
話によると、俺が配信活動を始めてからなんか事務所への応募が殺到しているらしい。
いずれは男性も増やそうかと話しているそうだが、そこは慎重に、ということらしい。
俺のときももう少し慎重になるべきだったのでは? とは思わないではない。
……そういうわけで、今この場に集まっているのだが、俺は配信が始まったコメント欄を見ていく。
〈おお、始まった!〉
〈めっちゃ楽しみにしてました!〉
〈おお、ていうかこんなに『リトルガーデン』の人っていたんだ……〉
〈俺お兄さんから入ったから他の子たちよく知らなかったな〉
〈……やっぱり、お兄さんが例外なだけでここって女性配信者が基本だよなぁ〉
〈目の保養になりますな〉
同意だ。皆水着ではあるが上から何かしら羽織っている形だ。
そんな中、実況解説役の霧崎さんが、ビーチバレーボール大会についての流れを話していく。
ルール説明なども話していくが、特に俺に関係ない。
今回の俺は参加しないで見ているだけだ。なので、麻耶の応援に全力を出せる。
俺が参加すると、それこそバランスブレイカーすぎる、ということだそうだ。
すでにチーム編成などもされており、配信画面にざっとチームメンバーが発表されていく。
〈ランクで結構バランスよく分けた感じだな〉
〈でもやっぱりレイナちゃんがいるチームが強くないか?〉
〈まあでも、直接戦うわけじゃないしなー〉
……どうだろうな。
事務所内で玲奈はずば抜けた力を有している。
次に強いのが、流花、凛音、麻耶という感じで、一応他にもCランク冒険者はちらほらとはいるが、それでも玲奈と比べると少し劣る感じだ。
まあでも、別にガチの戦いというよりはエキシビションマッチみたいなものだしな。
「それでは、試合を開始になります!」
最初の試合は、流花&凛音ペアと玲奈&佐藤という子のペアだ。
コート上で四人が向かい合っている。
「行きます!」
凛音はそう言って叫ぶとボールを上にあげて、思い切り叩いた。
そのボールの背後から凛音の水魔法が追尾し、ボールを押し飛ばし……相手コートへと迫る。
……この試合は、魔法の使用は問題ない。ただし、相手に危害を加えるようなものは駄目だ。
ボールを加速させるとか、そういうのはオーケーという感じだな。
「きゃ!?」
不規則な加速をするそれに、玲奈の相方である佐藤さんが受けたがボールを弾いた。
それを見た、玲奈はすぐに魔法を放った。
「大丈夫、カバーするよー!」
玲奈は自分のコート全域に火魔法を放つ。ただ、彼女は温度調節が見事だ。ボールの足元から救い上げるように打ち上げると、
そんなこんなで……全員が魔法をぶっぱなしながらのバレー対決が進行していく。
初手の魔法は準備していることもあり、すぐに発動できるが次の魔法はどのように使うかが難しいな。
攻撃に使うか、防御に使うか。
意外と色々と考えることがあるなーとかのんびり考えながら眺めていく。
コメント欄もド派手な戦いにかなり盛り上がっているようだ。
まあ、こんな超次元バトル見せられたらそうなるな。
そんなこんなで点取り合戦が進行していき、
「……負けました」
「……悔しい」
勝利したのは、玲奈たちだった。
嬉しそうにハイタッチしている。
……玲奈の他の子からの評価は面倒見の良い子だったな。
確かに、試合中の掛け声なども多く、良い先輩という感じだった。
「さあ、それでは次の試合で……す、が……っ!?」
マイクを持っていた霧崎さんが眉間を寄せながら言葉を詰まらせる。
異常を察知したのは霧崎さんだけじゃない。この場の全員が感じたようで、肩を跳ね上げ、人によっては怯えたように体を震わせていた。
空気を圧迫するようなほどの重量を持った魔力。
それは一つだけではない。マイクを持っていた霧崎さんも驚いたようにそちらを見て、撮影していたスタッフたちも震えている。
〈どうしたんだ!?〉
〈何かあったのか!?〉
皆の青ざめた表情を見て、現場にいなければ分からないような変化の前にコメント欄がざわめきだす。
俺はパイプ椅子からのけぞるようにして背後を見ると、そこにいたのは、大柄な男性と黒服の四人組。
……四人組はよく知っている。
ジェンスたちだ。
大柄の男性に隠れるようにしていたジェンスが俺を見て、にやりと笑った気がした。
カメラも彼らの姿を映し、そこに映し出された彼らを見てコメントが一気に増えていく。
〈は!? なんでここにヴァレリアンさんがいるんだ!?〉
〈え? ヴァレリアンって【スターブレイド】の!?〉
〈どういうことだよ!?〉
〈もしかしてまたお兄様をスカウトにきたとか?〉
〈いやでもなんでこのタイミングなんだよw〉
ヴァレリアンはしばらく周囲を見ていた。まるで何かを探すような素振りを見せ、そしてジェンスが俺を指さし、気づいたようだった。
こちらへまっすぐに向かって歩いてくる。
「……次麻耶の試合なんだけど、最悪のタイミングだなおい」
俺はぼそりと呟きながら、近づいてくるヴァレリアンを見ていた。
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