第130話






「あっ、そういえば色々あって話してなかったけど、お兄さんアメリカのギルド……スタープラチナ……とかだっけ? に誘われたんだよね?」


 どのタイミングで視聴者にこのことを伝えるか迷っていたが、有原がいいタイミングで聞いてきてくれた。

 こういう気遣いは、有原の得意分野だよな。

 迷宮の二階層へと進みながら、俺のほうにカメラを映してくる有原に苦笑を返す。


「【スターブレイド】だったな。でも断ったぞ」

「え? そうなん? 【スターブレイド】なんて言ったらもう有名も有名なんでしょ? 冒険者ならだれでも受けたいんじゃないの?」


〈確かにそうだよな……〉

〈お兄さんが残ってくれるのは嬉しいけど、お兄さんが一流ギルドで活躍する姿ってのも見てみたい気持ちはあるんだよなぁ〉

〈【スターブレイド】なんてそれこそ世界的に有名だもんな〉

〈リーダーのヴァレリアンが世界ランキング二位の化け物だもんな〉

〈そういえばお兄さんって世界ランキング何位なんだ? 普通に上位100くらいには入るよな??〉

〈あれは世界冒険者機構で調べないと更新されないからな。それか、直接戦って倒せば認められるかもしれないけど、今の時代そんな道場破りみたいなこと法律で禁止されるしw〉


 あのジェンスってやつは、確か7位だったか? ってことは、俺も7位でいいのだろうか?

 頭の片隅でそんなことを考えていた。


 コメントでは、もったいない、という言葉散見されている。

 だが、よほど【スターブレイド】に憧れがない限り、急にアメリカに来ないかって誘われたら戸惑う人のほうが多いと思うが。


「でも、断る理由ってやっぱり麻耶ちゃんとか?」

「まあ、そんな感じだな。別に麻耶だけじゃないけど、そもそもギルドの力が必要なら自分で作ればいいと思ってな」

〈え? マジ!?〉

〈お兄様ギルド創るの!?〉


 今度はまた別の誤解を生みそうである。

 また訂正しないと。


「例えばの話だからな? おまえら勝手に変なこと言うんじゃねぇぞ? まあ、ギルドの力が必要な場合の話だ。それに今は【雷豪】や【ブルーバリア】に知り合いもいるし、とりあえず何かあればそっちに相談すると思うけどな」


〈なんだ……〉

〈お兄様のギルドなら入りたかったのに〉

〈俺もお兄ちゃんのギルドめっちゃ入りたかったわ〉

〈そうだよな! お兄さんがギルド作るなら絶対に入りたいわ。そこでお兄さんに指導してもらって俺も強くなりたいし〉

〈おい、それはずるいだろwww〉


 ……結構俺がギルドを創ることには肯定的な意見が多いな。


「あーしも、お兄さんのギルドとかめっちゃ興味ある」


 有原まで乗り気になっている様子だが……。

 もし本気でギルドを立ち上げるとしたら、まずメンバーを集める必要があるしな……考えたら面倒になってきたぞ。


「まあ、今はまったく考えてないからな。第一管理とか面倒だし」


 そもそもそういった細々としたことが嫌いだから、『リトルガーデン』で色々管理してもらっているわけだし。

 ギルドリーダーなんて、俺には向いてないだろう。


「まあ、そういうわけで。とりあえず第二階層に来たわけだが……魔物がいるな」


 俺たちの前方に一体の魔物が現れた。


「あっ、こいつデモゴーグっていう魔物じゃん」

「デモゴーグ?」

「そうそう。どういう意図で名付けた知らないけど、デモゴーグっていうんだって。Dランク迷宮くらいからよく出てくる魔物だって」


 デモゴーグか。人間の子どもほどのサイズだ。

 身体は黒い鱗に覆われ、長い尾と鋭い爪を持っている。その最大の特徴は、透明な羽根を持つ巨大な翼で、それが全身を覆うように広がっていた。

 悪魔、のようにも見える魔物だな。


 そいつは翼を使わず、すたすたと地面を歩いてこちらへ近づいてくる。

 好戦的な様子で笑みを浮かべるデモゴーグに対して、有原もやる気を見せている。


「有原、やってみるか?」

「当たり前じゃん」


 有原は剣を取り出し、同時に身体強化を高める。

 ……以前の撮影のときよりもかなり質が上がっている。今ならDランクの魔物と打ち合っても問題はないはずだ。

 周囲を警戒しながら、有原とデモゴーグの戦闘を俺はカメラに収めていく。


〈頑張れ!〉

〈おお、普通に打ちあえてるじゃん〉

〈剣の扱い方うまいな!〉


 デモゴーグの武器は爪とその鱗だ。有原の剣と打ち合えるほどに頑丈で鋭い爪と強固な鱗。

 これを突破するのは難しいだろう。

 有原のほうが速度は速く、デモゴーグに攻撃を当てているのだが……堅牢な鱗に阻まれている。

 透明な翼はどうやら飛行のためにあるのではなく、第三、第四の腕という感じのようだ。

 翼が動き、有原を薙ぎ払うように振るわれている。


 そうして有原が打ち合っていく中で、彼女の身体強化が一段強化された。

 ……あまり制御できるわけではないのかもしれないが、それでも一時的にデモゴーグの鱗をはがすように剣が振るわれる。

 そして、同時だった。


 風の矢がデモゴーグの左肩を貫いた。

 有原が放った風魔法だ。鋭さだけを重視した一撃が、デモゴーグの皮膚に穴をあけ、霧が生まれる。

 ダメージを受けたデモゴーグがよろめきながら反撃しようとしたが、身体強化とともに突っ込んだ有原がその開けた穴へと剣を突き刺し、ねじる。


 穴を広げるように剣を動かし、デモゴーグの体が斬られ、霧とともに腕が切断される。

 ……勝負ありだな。

 そう思った次の瞬間、デモゴーグの魔力が膨れ上がった。


―――――――――――

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