第110話


 とはいえ家の外を歩くときはフードを被り、気配を消して移動する。


「とりあえず、何もなくてよかったな」

「そうだね。最近物騒だもんね」

「ほんとな。麻耶に何かあってからだとマジで大変だからな……」

「麻耶ちゃんもだいぶ強くなったし大丈夫じゃない?」

「かもしれない。ただ、油断したときに事件ってのは起きるからな?」


 迷宮という存在が出現した以上、この世界で何が起こるかなんてわかったものじゃない。

 迷宮の存在だって、何が原因で発生するようになったのかは分からない。

 今後、迷宮以上のものが発生する可能性だってゼロではないのだ。

 いついかなるときにも麻耶を守れる準備をしておく必要がある。


「まあ、そうだよね。……ていうか、最近ちょっとずつ迷宮の様子が変だよね。この前のシバシバが戦ったしゃべる魔物とか、Sランク迷宮の迷宮爆発だってここ数年はなかったよね?」

「……そうだな」


 玲奈の言う通り、確かに最近少しずつ危険度が増している。 

 とはいえ、一市民の俺ができることといえば自衛のための力をつけるくらいだしなぁ。


「まあでも玲奈も力をつけてきたし、麻耶親衛隊もだいぶ成長してきたな」

「……ちょっと待って? 何それ?」

「何それって……俺が結成した麻耶を守る部隊だ。麻耶の近くにいる子たちを鍛えることによって、俺がすぐに対応できないときにも麻耶を安全に保護できるようにするための部隊だな」

「え? あたしとか凛音ちゃんとか流花ちゃんとかを鍛えてるのってそんな理由なの!? あたしのことが本当は好きだからとかじゃなくて!?」

「そんなわけないだろうが。おまえは麻耶親衛隊の副隊長だからな? 頼むぞ?」

「脱退させてもらってもいい?」

「ちなみに隊長は俺だ。脱退以外で何かあればいつでも話は聞くからな?」

「聞いてないよ?」


 玲奈はかなり渋っている様子だ。

 ……こうなると、何かしら親衛隊に入ったときのメリットを用意したほうがいいか?

 何か麻耶グッズを作るとか……でも勝手に作ったらそれはそれで問題だし、悩ましい。


 俺が一人そんなことで悩んでいると、玲奈はぽつりとつぶやいた。


「ダーリンって、本当凄い強いよね……改めて思わされたよ」

「でも、玲奈もかなり強くなってるしおまえが俺と同じ年齢のときは間違いなくおまえのほうが強いぞ?」

「ってことは十年後なら押し倒すことも可能ってことだねっ。待っててね!」

「待つわけないだろうが。最近前より鍛えてるけど、何かあったのか?」


 玲奈はもともと鍛えはしていたけど、ここまでではなかった。

 それが最近は年がら年中家に来ている。


「ダーリンのこと凄い凄いっていう人は多いけどさ。ダーリンだって無敵の人じゃないでしょ?」

「まあな。麻耶に弱いな……」

「だね。いざって時にちょっとくらい力になれる人がいたほうがいいでしょ? そう思ってあたしは強くなろうと思ったんだよね」


 ……おお、そういうことか。


「玲奈……おまえ、結構しっかりしてるよな」

「ふふん、将来の伴侶として頼りにしてね」

「親衛隊の副隊長として、頼りにするからな」


 ちょうど玲奈を駅前で案内し、俺たちはそこで別れた。




 迷宮配信者事務所「リトルガーデン」について語るスレ271


 234:名無しの冒険者

 お兄さん今度雑誌の撮影があるってマジかよ


 235:名無しの冒険者

 お兄さんのTwotterにあったな


 236:名無しの冒険者

 普通にモデルとかやるみたいだよな


 237:名無しの冒険者

 お兄様のファンたちがめっちゃ喜んでたよなw


 238:名無しの冒険者

 別にイケメンってわけじゃないけど、清潔感あるし、身長あって強くて基本優しいし……まあ女性ファンが多い理由は分かるよな


 239:名無しの冒険者

 男性ファンもわりといるしな

 やばいくらいのマヤちゃんファンという要素が男性ファンもいる理由だよなw


 240:名無しの冒険者

 でも、なんか女性と一緒に表紙を飾るんだろ?

 モデルの


 241:名無しの冒険者

 そうそう。有原美也さんだろ? 今年20歳の


 242:名無しの冒険者

 凄いよな


 243:名無しの冒険者

 でも、美也さんってかなりプロ意識が高いというかちょっと面倒な感じだろ?

 こういう一般人に近い人とのコラボとかって嫌うイメージなんだけど


 244:名無しの冒険者

 まあそれでも仕事を引き受けた以上はプロとしてやるんじゃないか?




―――――――――――

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