第109話


 そんなことを考えながら空間魔法の準備をしながら視聴者の様子を確認する。


〈……え? 今の一瞬で150万の仕事終えたのか?〉

〈……マジで? ちょっとトイレ行くくらいの感覚じゃないか?〉

〈これがトップ冒険者なんだよ。んでもって、海外じゃこの数倍もらってんだよ〉

〈……お兄さん、あんまりお金とか見せびらかす感じじゃなかったからあれだけど、こうあっさり稼がれるともやっとするもんがあるな〉

〈でも、このレベルの冒険者がこんな安価に依頼を受けてくれるだけで感謝なんだよなぁ〉

〈なんなら、日本にいてくれるだけで感謝なんだよなぁ〉


 あまりこう現金が目に見える形だと皆も思うところはあるようだ。

 こういった配信はどうなんだろうな? 冒険者になりたい人を増やすことはできるかもしれないけど……お金に目がくらんで無茶する人が増える可能性もあるか?

 冒険者は自己責任、とはいえなぁ。うーん、難しい。


「玲奈。俺の部屋に移動するからな」

「それじゃあ自宅の特定されないように映さないとねっ」


 まあでも、俺の自宅はすでにほとんど特定されているからな……。

 それでも突撃されないだけ、まだましだ。

 俺はシバシバの空間魔法を使用し、ちょっと狭い穴を無理やりこじ開けてから、玲奈とともに部屋へと移動した。


〈……当たり前にお兄様の部屋に入ってるこの女はなんだ?〉

〈ずるすぎる〉

〈お兄様、そんなの入れないで!〉

〈うわ、なんだこの部屋……〉

〈麻耶グッズ大量だな〉

〈部屋一面に麻耶グッズかよ……〉

〈でも、蒼幻島に別荘があってそっちでも管理してるとか言ってなかったか?〉

〈どうなってんだよ……〉


 玲奈が俺の部屋をざっと映していく。壁に貼られたポスターや麻耶を模した小さなぬいぐるみなどなど。

 部屋にある数々のグッズを視聴者たちは羨ましがっている様子だ。

 これは俺が集めた貴重な品々だ。どれだけ羨望されても誰にもあげるつもりはない。


「あたしがこっそりおいたあたしのグッズは速やかに片づけられるんだよねぇ」


 カメラマンが何やら不満げに頬を膨らませている。


「それは別室の段ボールにしまってあるぞ」

「むー、飾ってくれてもいいじゃんか。とりあえずエロ本でもさがそっと」

「んなもんねぇぞ。麻耶に嫌われるようなもんはおいてないから」

「いや、この部屋見たら普通麻耶ちゃんドン引きだよ……」

「麻耶ー! そんなことないよな!?」

『ないよー』


 隣の部屋からかすかにその声が聞こえた。


〈草〉

〈相変わらずこの兄妹は仲いいな〉

〈俺がお兄ちゃんの妹でこんな部屋見たら引くわw〉


 カメラマンが俺の部屋をあさり始めようとしていたので、玲奈に声をかける。


「とりあえず、これで終わりだな」

「それじゃあ、みんな。これからあたしとダーリンは激しい夜を過ごすので」

〈あ?〉

〈おまえぶっ飛ばすぞ?〉


「えー? あたしSランク冒険者だよ? 受けてたつよー?」


〈反撃してみろ、おまえは殺人者だ〉

〈草〉

〈でもそれくらいしかやれることないんだよなぁ〉


「おまえも家に帰れ。ああ、先に玲奈の家に転移してからのほうがよかったか」


 あとで送らないとだよな……。玲奈がSランク冒険者なので危険はほぼないとはいえ、一応女子高生だしな……。

 とりあえず、配信はそこで終了した。




 俺たちが配信を終えて部屋を出ると、ちょうど麻耶も出てきた。


「お兄ちゃんお疲れさまー。配信見てたよ!」

「ほんとか!? 今日もばっちりマヤチャンネルの宣伝もしておいたからな!」

「もう、別にそんなに気にしなくていいのに。とにかくお兄ちゃん、かっこよかったよ!」

「麻耶!」

「お兄ちゃん!」


 がしっと俺たちが抱きしめあったところで、俺は先程思っていたことを伝える。


「そんじゃちょっと玲奈を駅まで送ってくるな」

「了解!」


 そんな俺の発言に玲奈がからかい気味に笑う。


「えー、泊っていってもいいんだよ?」

「何も服ないだろ?」

「大丈夫大丈夫! 麻耶ちゃんの借りるし、最悪裸で歩き回るよ!」

「やめろ痴女。さっさと家帰るぞ」


 俺はそう言って玲奈とともに家を出て、歩き出す。

 ……さすがに自宅に移動しているので野次馬もいないな。



―――――――――――

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