第106話
会長が提示した金額はたぶんEランク迷宮で考えれば適正価格だったはずだ。
第一、わりと家の近くでもあるので変な迷宮があったほうが心配だ。
麻耶が通学しているときに何かあったら……最悪だ。
「大丈夫です。それじゃあ、攻略しに行ってきます」
『お願いします。迷宮は現在立ち入り禁止になっております。協会の人間が見張りについていますので、声をかけてください。連絡しておきますから』
「わかりました」
〈おお、いきなり依頼が〉
〈すげー……冒険者ってこんな短時間で150万の依頼が受注できるのか……〉
〈羨ましいけど運が悪ければ死ぬからな……〉
〈そう考えると150万で命を賭けるのは……お兄ちゃんくらいなら安全かもだけどなぁ〉
おそらく迷宮近くに感じる魔力は協会の人たちのものだろう。
一つ、心当たりのある魔力がある。俺が知っている人となると下原さんとかだろうか?
「Sランク冒険者になるとこんな感じで呼び出しを受けるんだよなぁ。迷宮の難易度に合わせて、報酬が支払われたと思ったけど……玲奈、いくらだっけ?」
「日本だと、Gランク迷宮で10万、Fで50万、Eで100万、Dで150万、Cで200万円、Bからはちょっと値段あがって、500万円、Aで1000万円くらい、だったかな? Sランクは依頼自体ないけど、ダーリンこの前の蒼幻島の報酬支払われてるんじゃない? まあ、もちろん迷宮ごとに多少金額は上下するけどね」
「あれ1500万円だったな」
〈マジで?〉
〈やばwお兄様結婚してください!〉
〈いやいやw1500万円って海外基準だと安すぎるからな?〉
〈日本ケチすぎるw〉
〈海外だとSランク迷宮ともいけば億はいくよな?〉
〈アメリカは普通に億いくし、参加するだけでも報酬でるはず〉
〈協会はずっと政府に言ってるけど、そんなに予算出せないって突っぱねられてるんだよなぁ〉
〈だから海外に高ランク冒険者たちが流出するんだよw〉
「あと、迷宮の奥地にある魔石の回収もオッケーだね」
「といっても、たかが数十万だったよな?」
「Sランクでも500万円くらい?」
「マジか。んじゃあ、『七呪の迷宮』を攻略で、500万円か。……確かに労力には見合ってないかもな」
迷宮爆発はしたが、迷宮自体はまだ残ったままだ。
攻略するべきかどうかは政府が判断することだが、危険とはいえ、「七呪の迷宮」のおかげで日本の冒険者たちはかなり鍛えられているからなぁ。
たぶん、そのままにしておくんじゃないだろうか。
「まあね。でも500万円もあったら、結婚式の代金としては問題ないね」
「麻耶グッズ買いまくっても問題ないな」
〈お兄ちゃんの金銭感覚バグってやがるw〉
〈500万円の使い道他にあるだろw〉
とりあえず、黒竜の迷宮の攻略はここで中断だな。
「というわけで、ちょっと迷宮攻略に向かう必要が出てきたんでいったん配信切るわ」
〈マジかよ、新しい迷宮の攻略もみたいんだけど〉
〈配信できないのかね?〉
「協会からの依頼だしな。具体的に打ち合わせしてないから勝手に映すのもな」
「協会に確認しないとちょっとね? 何かあったときまずいかも」
玲奈もこういった知識は豊富なようで、納得できることを言ってくれる。
そのとき、再びスマホが震えた
『お兄ちゃん、オッケーですよ』
「……会長、もしかして配信まだ見てます?」
ていうか、年上すぎる会長にお兄ちゃんと呼ばれるのはなんとも背筋がぞわぞわとする。
しかし、そんな俺の様子など知らぬとばかりに会長は冗談めかした調子で笑っている。
『ええ。連絡する前に真っ先に確認しました。迷宮攻略に関して、配信で流しても構いません。ただ、あまり時間がありませんので……攻略はなるべく早くお願いします』
「分かりました。今も成長しているんですか?」
『はい。恐らく一時間もあれば、EからDランク迷宮程度まで成長してしまいます。その際、もしかしたら異常が発生するかもしれません』
……ランクが切り替わるほどに成長してしまえば、確かに問題が発生するかもしれない。
迷宮爆発などが発生した迷宮も、あとで調べてみるとランクが一つ上がっていることなどもザラにあるからな。
「了解です。一時間もあれば十分です」
『車は必要でしょうか? 手配させてあり、黒竜の迷宮まで向かわせていますが』
「必要ありません。ああ、でも、その問題の迷宮近くの警備は手厚くお願いします。俺にも万が一がありますので」
『分かりました』
……こんな急成長する迷宮はこれまでなかったからな。
どんなイレギュラーに遭遇するかは分からなかったので、協会にも準備しておいてほしかった。
会長との通話を切った俺は、こちらを映し続けている玲奈に視線を向ける。
「だそうだ。Eランク迷宮の攻略していくぞ」
「いえい、ダーリンいこっか」
腕を組んで来ようとしたのでさっとかわして転移石へと向かう。
「シバシバの空間魔法で移動しないの?」
「ここからすぐだし走って行ってもそんなに時間かからなそうだしな。それに、……転移魔法の回数があと三回くらいだ。念のため、ダッシュで移動だな。ちゃんとついてこいよ」
「任せて!」
ばしんと玲奈が胸をたたき、元気のよい返事をする。
俺たちは、すぐに黒竜の迷宮を脱出し、目的の迷宮へと向かった。
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