第105話


 だいたいの人は俺を強い、凄いというが、それでもこうして玲奈のように俺を目標にして強くなろうとする人は少ない。

 玲奈のこういう姿勢は嫌いじゃないので、俺も教える気持ちが出てくるものだ。


〈おいガチ恋勢もこのくらいの根性見せてみろよ〉

〈お兄ちゃんうらやましすぎんだろ……〉

〈レイナちゃん頑張ってくれ!〉

〈レイナちゃんの恋を純粋に応援したいわ……〉

「おお、ダーリン。あたしとダーリンの新婚生活を応援する声があるよ!」


 ……おい視聴者どもめ。

 そこで背中を押すんじゃない。


「いいから。おまえは戦うのに集中しろって」

「わかったわかった! 早くダーリンより強くならないとね!」

「ああ、期待してる」

「ほんと!? ダーリンそういう趣味が!?」

「ん? どういうことだ?」

「だって、あたしが強くなればダーリンを押し倒せるからね! 頑張るよあたし!」

〈やっぱこいつダメだ!〉

〈レイナふざけんな!〉


 玲奈はしかし笑顔でいた。

 まあ俺も別に大したものだとは思っていなかった。

 今日はだらだら迷宮での雑談を交えた配信だしな。

 玲奈の戦闘を見張っていると、だんだんと視聴者も増えてきた。


〈今来たけど、蒼幻島の件ってもうお兄様話しちゃったの?〉

〈まだ〉

〈お兄ちゃんも一度で話し終わらせたいからある程度集まってからだって〉


 前回の蒼幻島のときの話やそのあとについてとか色々聞きたいみたいで一応それが今回の配信理由だ。

 そろそろ大丈夫か。


「まあ、別にもったいつけるようなことは何もないけどな」

〈そういえばアメリカの有名ギルドがスカウトしたいって話していたけど〉

〈日本を出ていってしまうんですか???〉

〈お兄さんには日本に残ってほしいです……〉


 この質問がもっとも多かった。蒼幻島での俺の戦闘は全世界に公開されている公式の映像だったため、それはもうあちこちで反響があったらしい。

 質問が来ていたので、そろそろ話をしていこうか。


「俺は日本から出てく予定は今のところないな。日本の生活のほうが楽だし」


〈マジか!〉

〈個人的にはうれしいけど、でもだからこそもっと日本での冒険者の地位向上してほしいよな〉

〈報酬とかももっと欲しいもんだけどな〉


「だって麻耶の生活環境変えるようなことしたくないし」


〈草〉

〈相変わらずマヤちゃん基準なんだなw〉


「まあそうは言っても麻耶が海外行きたいっていっても俺は行かないかもなー。やっぱ生まれた国が一番過ごしやすいし」


〈おお! マジか!〉

〈ちょっと勿体無い気もするけどな〉

〈でもお兄さんいれば日本は安全だな〉

〈お兄さんに頼り切りも良くないけどな〉 

「ほんとな。俺だって分身まではできないからな。そういうわけで玲奈のように向上心を皆も持つようにな」


 俺に多少頼るのはいいがあれもこれもと任せられても困るからな。

 そんな話をしているときだった。

 俺のスマホに一つの着信が入った。

 これは冒険者協会、会長の番号だ。


「ん? ちょっと待ってくれ玲奈。冒険者協会から連絡だ」

「え? 了解。ドリルモグラ近づいてきているけど、どする?」

「電話しながら倒すわ」

「りょーかい! 撮影任せて!」


 俺は電話に出つつ、ドリルモグラたちを仕留めていく。

 相手は会長だ。

 以前、能力測定したときに連絡先自体は交換している。そもそも、協会は登録されている冒険者情報から、必要な場合には個人情報を利用することができる。

 なので。こちらの番号については知っていてもおかしくはない。


 それでも、会長が直接連絡をしてくるということは何か緊急事態が発生したのだろう。


『突然の連絡で申し訳ありません。黒竜の迷宮にいられますか?』

「ええ、そうですね」

『そうですか。その、黒竜の迷宮近くに新しい迷宮が出現したのはご存じでしょうか?』

「いや……知りませんね」


 いわれたので魔力を迷宮の外へと意識を向けてみる。

 迷宮内にいるとあまり深くは探れないんだよな。

 あっ、麻耶は自宅にいるようだ……そっちじゃない。

 確かに黒竜の迷宮近くにもう一つ迷宮が増えているな。その近くには、それなりに大きな魔力反応もあった。


「今感知してみたら確かにありますね。結構強い魔力もありますが、何か問題でも?」


 ランクの高い迷宮とかだろうか?

 迷宮内からだとあまりはっきりとは感じられないな。


『さすが、よくわかりましたね。……そちらの迷宮から感じられる魔力が数分置きに増加しています。危険だと思いましたので、できる限り早めに排除できる方をと思いまして、大手ギルドだと間に合いそうになく、今回の件を迅さんに依頼できればと思いまして』

「それで俺に連絡をしたということですか」

『そういうことになります。……ただ、今回の迷宮のランク事態はEランクです。変異し続けている珍しい迷宮ということを考慮しても、報酬としては150万円ほどが限界でして……それでも受けていただけますか?』


 別にお金に困っていないが、適正価格なら引き受けても構いはしない。

 あまりにも安い価格で俺が受けすぎてしまうと、冒険者全体の報酬が下げられかねないのでその場合は断るが。


―――――――――――

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