第91話


「ヴォイドがやっていた魔法は、他者の魔力を体内に取り込んで、それを自分の魔力と合わせて使用するっていうものだ。効果時間や効果自体は短くなるから……まあそんなに使い勝手のいいものじゃないが、今まで考えられていた常識がひっくり返るよな」

〈常識がひっくり返るような内容なのにこんなサクッと発表していいのかよw〉

〈え? やばくねぇか!? 今って属性魔法に適性あるかどうかもかなり重要だよな!? それが関係ない可能性があるってことか!?〉

〈でも、さっきのお兄ちゃんの魔法見た感じ、そこまで万能ではないのは確かだろうけど……でも、色々変わってくるよな……〉


 ……とはいえ、実際そう簡単に使えるかどうかはそれなりに訓練を積む必要があるだろう。

 空気中の魔力を体内に取り込む呼吸術はもちろん、その取り込んだ魔力がどんな魔法の素だったのか含めて判断する必要があるからだ。


「そんでそんで。今回の本題はシバシバの魔法だ」

「特殊魔法を再現できたら面白そうだよね、って話だよね」


 俺と玲奈がちらとシバシバを見る。

 その本人はというと、自主的にどこからか取り出してきたさるぐつわをくわえている。


〈……は?〉

〈マジか……っ、そうだよな!? 特殊魔法も再現できる可能性があるんだよな!?〉

〈ヴォイドがすでに試してたし、不可能じゃないよな!?〉

〈これできたらマジでやばいよなw〉

〈これが本題で、んでもって再現できたら……マジで歴史に刻まれる偉業じゃねぇか!〉

〈こんな雑に配信していいようなものじゃねぇw〉


「というわけで、シバシバ。特殊魔法を使ってもらっていいか?」

「仰せのままに」


 すっとシバシバが膝をつく。……ギルドのリーダーがこんなのでいいのだろうか?

 ……いやでも、あの助けたときも全員が俺に羨望のまなざしを向けていたし……いいのかね?


 発動したシバシバの魔法から生み出される魔力を体に取り込む。

 あとは、これと俺の魔力を組み合わせるだけだ。

 ……特殊魔法は、属性魔法よりは難しいかもしれないな。


 ただ、体内の魔力操作に慣れている人なら、問題ない。

 魔力消費も、多いな。よほど効果的な魔法でなければ、特殊魔法を再現で使用するのはやめたほうがいいな。


 すぐに特殊魔法の再現を行った俺は、それから魔法を発動する。

 空間魔法。点と点を結ぶその魔法。

 まず入口はもちろんここだ。

 そして、もう一つの点。

 ……これに関しては少し難しいな。


「シバシバ、出口の魔法を作るときって……どうしてるんだ?」

「そうね……基本的には自分のお気に入りの場所とかがいいわ。私、一つ家を持っているのだけど……そこに跳べるようにしているわね。咄嗟に使う場合はそれが一番いいわよ」

「……なるほどな」

「あとは、視界に入る範囲なら比較的作りやすいわね。私は主に攻撃とかに使っているわね」


 確かに、俺もこの空間で作れそうだ。

 ……ただ、それだとあまり配信的に迫力がないだろう。

 ならば、やることは簡単だ。俺の自宅、そこにある魔力を感知する。


 ――麻耶のものだ。


 そこに狙いをつけた俺は、即座に空間魔法を使用する。

 入口をこの会議室に作り、出口を麻耶の部屋へと作る。

 もしかしたらこうなるかもしれないという話はしていたので、麻耶も準備はできているだろう。

 開いた穴は、あまり大きくはない。……何とか無理やり通ろうとすれば通れるという感じか。

 シバシバが作ったものの半分くらいのサイズになってしまっているのは、やはり所詮はコピーだからな。


「おーい、麻耶、聞こえるか!」


 俺がカメラを空間へと向けると、向こう側からひょこりと麻耶が姿を見せた。


「あっ、お兄ちゃんできたんだね。おめでとう!」

「おう! 麻耶、そんじゃまたあとでな!」

「うん、ばいばーい」


 ……いやぁ、これはいい。

 麻耶の笑顔に癒された俺がスマホのコメントを見ていると、


〈…………マジで?〉

〈……マジで再現しやがった!〉

〈なんだこいつ!? なんだこいつ!?〉

〈お兄ちゃん最強! すげぇよおまえ!〉

〈さすがに化け物すぎるだろwww〉

〈え? これ誰でもできるのか!?〉

〈だとしたらマジで革命じゃねぇか! おい、これ今すぐ学会とかで発表するレベルのもんだぞw〉


 そんなものに興味はない。

 ただ、訂正しなければならないものもある。


「誰でもってわけじゃないみたいだな。……玲奈でさえもかなり苦戦してる。な、玲奈」

「……そうなんだよね。まず、空気中から魔力を取り出す方法なんだけど……ここで不純物が多いとダメなんだよね。……これ、かなり魔力感知が得意な人じゃないとダメだよ。少なくとも、あたしはかなり集中してやっと突破って感じ」

「らしいんだよな。なんで、他の人の魔法をコピーしたい人はとにかく魔力感知の訓練から始めるように」

「あと、ダーリンは平気で自分の魔力と混ぜ合わせて魔法を使用してるけど、これもかなり難しいからね? ……なんていうか、水と油を混ぜるような作業をしているような無謀な感覚だね」


 そこまでだろうか?

 ……もしかしたら俺が他の属性に適性がないというのも影響しているのだろうか?

 ただ、ここからはもう予想するしかない。どうやっても立場を変わることはできないからな。


―――――――――――

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