第75話
「どうやら難しそうですね。まだまだ私は働かされそうですね」
〈草〉
〈偉大な会長に何言っているんだお兄様w〉
〈相変わらずだなお兄ちゃんはw〉
「さて、それでは本題に入りましょうか。今日は迅さんの測定を行う、という目的ではありますが……まずは麻耶ちゃんの測定も行おうと思います。一般人代表として、ですね。そこで、簡単に測定の仕方や測定結果についての解説をしたいと思います」
「はい、頑張ります!」
〈マジで一般人代表?〉
〈……でもまあ、会長とお兄さんだと一般人……寄り、ではあるよな〉
会長と麻耶が測定室の機械の前に立つ。霧崎さんもカメラを持って近づき、会長の隣に並ぶ。
そして、カメラで映し出されたのは測定機のある部分だ。手のひらを置くように示されたそこを、会長が指さした。
「こちらに手を置くと、このモニター部分に数値が表示され、その数値が高いほど魔力が多い、ということになりますね」
測定のやり方は単純明快だ。
会長が微笑を浮かべ、少し胸を張る。
「数値は100まで計測が可能で、ちなみに、日本の最高記録は96です。そして、それは誰でしょうか?」
「会長さんですよね? 凄いですっ」
麻耶に褒められどこか誇らしそうである。……羨ましい。
「そうです。とはいえ、さすがにもう96の数字は時間限定でしか出せませんが」
〈草〉
〈会長案外お茶目だなw〉
〈会長の時代に配信が当たり前にあったらお兄ちゃんみたいになってかもな〉
〈ていうか、96を超えたらお兄ちゃんが日本の新記録になるのか〉
ふふん、と会長は少し冗談めかしく微笑む。
……羨ましい。
麻耶に褒めてもらえている会長が……。
俺は後ろで小さく嫉妬の炎を燃やしながらその様子を眺めていた。
「はいはい会長さん! 一つ質問なんですけど、100を超える数値は出ないんですよね?」
麻耶が手をあげて質問している。……ああ、可愛い。
推しの配信を間近で見ているだけのこの時間が俺にとっては最高だ。
「そうですね」
「それだと、世界の災害級の人たちは皆100ってことなんですか? うちのお兄ちゃんもなんかちょっとそれに片足突っ込んでるんじゃ? とよく言われているので気になっていたんです!」
まさかお兄ちゃんのことを気遣っての質問だったなんて……。
嬉しくて泣きだしそうである。
「そうですね。Sランクを超える……災害級の力を持った人々は、皆100を記録していますね」
「なるほど……っ。つまり、お兄ちゃんがそこに行けば、凄いってことですね?」
「はい。……とりあえず、次は各数値でのランクについての説明をしたいと思いますので、麻耶さん。こちらに手をのせていただいてもよろしいですか?」
「分かりました!」
〈おお、いよいよか!〉
〈マヤちゃんの能力も地味に気になってたから楽しみだっ〉
〈メインディッシュの前の前菜ってところか〉
何を言っているんだあのコメントは。
麻耶がメインディッシュに決まってんだろうが。
「麻耶ー頑張れ! お兄ちゃん応援してるぞ!」
「うん、頑張るよー!」
「うおおおおお! 頑張れえええ! ほら、おまえらも家でいいから応援しろ!」
ひらひらと手をふる天使にさらに声を張り上げて応援し、コメントにもそう返事をする。
〈お兄ちゃんうるさw〉
〈おい落ち着けよw〉
〈この兄貴相変わらずだなw〉
〈今日もマヤちゃんかわいいから叫びたくなる気持ちは分かるけどな〉
〈お兄ちゃんの気持ちもよくわかるな〉
〈私もお姉ちゃんになってよかった……っ!〉
そして、麻耶が魔力を手に込めながら測定機に手をのせた。
「……56、ですか? これってどのくらいなんですか?」
「そうですね。測定機の数字ですが……1~19がG。20~39がF。40~49がE。50~59がD。60~69がC。70~79がB。80~89がA。90~100がSランク、となっていますね」
「そうなんですねっ。ということは私はDランク、ということですか?」
〈やばw〉
〈高校生ですでにDランク冒険者って……これ将来のお兄ちゃんじゃんw〉
〈将来はお姉ちゃんと呼ばれるようになるのか?〉
〈日本の将来は安泰だなw〉
さすが麻耶だ。
俺が高校中退して最初に測定してもらったときは、10しかなかった。
あまりにも絶望的だったので、よく覚えている。
麻耶はそれより何倍も高いので、麻耶はやはり天才だ。
「そうなりますが……測定は三回行います。そのときによってブレがありますので、三回測った平均の数値でランクの判定をします」
「分かりました!」
それからさらに測定を三度行った結果。
「56、61、58……ですか。非常に高いですね。Cランクに限りなく近いDランク、といったところですね」
「やったお兄ちゃん!」
〈おお! おめでとう!〉
〈おおお! マヤちゃんの年齢でDランクってめっちゃ優秀だよな……〉
〈お兄ちゃんの指導のおかげもあるのか?〉
「俺は関係ねぇ! 麻耶がすごいだけだ! さすが麻耶だ! 天才だ! 天使だ!」
「あはは、ありがとうお兄ちゃん!」
俺が麻耶を絶賛していった。
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