第71話
粉砕された迷宮だったが、ゆっくりと再生していってしまう。
迷宮は生き物のように考えられていて、傷つけられれば修復していってしまうのだ。
さらに言えば破壊された瓦礫などに巻き込まれる人もいるため、前回の迷宮ではこのショートカットは使わなかった。
「壁はすぐに元通りになるから、すぐに通過しましょう。巻き込まれると壁に潰されるんで、本当に気をつけてな」
107階層に続く階段はすぐに見つけてしまったので、スマホを取り出して階段を飛び降りる。
〈マwジwでw〉
〈やりやがったww〉
〈迷宮の壁に穴開けるとか……どうなってんだよ!?〉
〈迷宮って頑丈すぎて破壊不可能だよな……?〉
〈多少傷ついてもすぐに自動で修復するしな……〉
〈Sランク冒険者が全力で攻撃して穴が空くかどうかだぞ……?〉
〈このお兄ちゃん、本当にランクどんくらいあるんだよ……〉
「ああ、そうそう。次の階層の見つけたかは、魔力の流れを追っていけばいいというわけで、先に進んでいこう」
迷宮内では魔力が流れているので、それを追っていくとすぐに見つけることができる。
もちろん、マッピングも重要だが、こちらの技術を習得してしまったほうが楽に攻略できる。
〈……マジかよこいつ……〉
〈あっさり107階層に行ったな……〉
〈次の107階層も遺跡系って……同じ攻略法かぁ〉
〈常識外れすぎて嫉妬もおきんわw〉
〈ていうか、当たり前のように死角から飛んできた矢とか素手で掴んでるぞこいつ……〉
〈あんなの普通の人なら即死なんだよな……〉
そんなこんなで107階層も壁を破壊して進んでいった先、宝箱を発見した。
迷宮というのは時々宝箱がある。ただ、新規の迷宮でなければまず獲得できないし、新規の迷宮の攻略というのはだいたい大手ギルドが行う。
未攻略の階層に入るようなことがなければまず出会えないもので、一般人はなかなか宝箱と対面することはないだろう。
黒竜の迷宮なら、今俺がいる階層ならだれも攻略していないので誰にも手をつけられていない宝箱もあるというわけだ。
「宝箱は迷宮も配信のこと考えてるな……んじゃあけるぞ……ってミミックかよ!」
〈草〉
〈草って腕の関節まで食われてるじゃねぇか!〉
〈やばいだろ!? 腕大丈夫なのかよ!〉
〈ミミックの歯が砕けて草〉
〈噛みついたミミックが自分から噛みつきを外すとか……お兄ちゃんの体何でできてんだよ……〉
〈ていうか、さっきのお兄ちゃんの蹴りマジ蹴りか? ミミックが壁にめりこんでんじゃねぇか……〉
「ミミックは危険だけど、腕を強化しておけばまあ大丈夫だから。宝箱を開けるときはちょっとだけ注意してくれ。確かにちょっと嫌な魔力を感じたけど、てっきり呪いの装備とかだと思ったんだけどなぁ。呪いの装備とミミックの魔力は似たものだから、皆は気をつけてな」
これまで宝箱と遭遇したことはほとんどなかったので、知らなかった。
これも、今回の特訓のおかげで習得した技術だ。次からは間違えることはないだろう。
〈……だからなんでみんなができる前提でアドバイスするんだこいつは〉
〈でもこの前お兄様が指導した人たちもかなり成長してるみたいだしな……。いつかはお兄様級の冒険者がわらわら溢れるのかもしれん〉
〈視聴者100万人突破してんじゃねぇか……〉
〈お兄ちゃん……昼からひたすら垂れ流し迷宮攻略でこれって何がどうなってんだよ……〉
〈全世界の冒険者とかが見てるんだから……このくらい余裕だろ……〉
〈Sランク迷宮のソロ攻略配信とかお兄様くらいしかしてないしな……〉
〈他にこのレベルの攻略できる奴いるのか?〉
〈なんか一部の冒険者学校じゃ授業代わりに流しているらしいぞ? さっき記事になってたわ〉
〈草〉
〈これみた子たち心が折れるだけじゃないか?〉
スマホをちらと見てから、俺は次の階層へと向かう。
……それにしても、地味だ。
シャドウナイトしか出てこないので、110階層まで一気に降りた俺は、そこでボスモンスターの気配を感じた。
中ボスか最終ボスかは分からないが……110階層に出現した魔物は、シャドウナイトをさらに無骨にしたような魔物だ。
右手には長剣が握られていて、威圧感はかなりのものだ。
これまでの魔物とは一線を画する力なのは確かで、ようやく動きがいがありそうだ。
〈こいつ……! お兄さん、やばい魔物だ!〉
〈え?〉
〈海外のSランク迷宮が爆発したときに現れたやつだ! 名前はディスペアナイト!〉
〈当時、Sランク冒険者複数が連携してなんとか倒したレベルの魔物だぞっ。お兄さん、コメント見てるよな!? すぐ逃げたほうがいい!〉
「おう、見てるぞ。なんかやっと楽しそうな相手がでてきたな」
俺が笑顔とともに返事をすると、コメント欄は騒然としていた。
〈楽しそう!? いや、マジでやばいんだって!〉
〈インドの『ナイト迷宮』で発生した迷宮爆発を押さえ込むのに参加したSランク冒険者は全部で二十名! そのうちの十名がこいつに殺されたんだって!〉
〈え? マジで? 調べたら記事出てきたんだけど……〉
〈お兄さん! さすがにこいつはやばいって!〉
〈お兄様、挑むのはやめたほうがいいよっ〉
〈マジで強いからお兄様やばいぞ!?〉
似たような驚きのコメントであふれていく。
どうやら、相当に強い魔物であることは確かなようだ。
インドの『ナイト迷宮』かあ。確か、十年くらい前の事件だったかな?
俺も詳しいことまでは覚えていなかったのでそれ以上の情報は何もない。
〈お兄さん! そいつはマジでやばい! オレは昔戦ったことのあるSランク冒険者のノイロスだ!〉
そのとき、コメント欄の様子が変わった。
一人、明らかに熱心にコメントしてくれている人がいる。
〈ノイロスってマジか!?〉
〈ノイロスってあれ。迷宮爆発に参加した冒険者の名前になかったか!?〉
ノイロス〈そいつはマジでやばいんだ! お兄さんがここで死ぬところは見たくないんだ! 頼むお兄さん! 逃げてくれ!〉
ノイロスは、どうやらこいつと戦ったことがあるようだ。
―――――――――――
ここまで読んでくださり、ありがとうございます!
『楽しかった!』 『続きが気になる!』という方は【☆☆☆】や【ブクマ】をしていただけると嬉しいです!
ランキングに影響があり、作者のモチベーションの一つになりますのでよろしくお願いします!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます